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204 第一回 晃二十歳の誕生日会
おやつ、と出てきたのは、明里と学が持ってきたケーキだった。
「晃の誕生日ケーキ。作る暇なかったから、買ってきた」
「ブッシュ・ド・ノエルじゃん。クリスマスのケーキじゃん」
「ううん。晃の誕生日ケーキ」
「クリスマスのケーキだろ」
「どんな形でも、あんたの誕生日ケーキって私が言ったら誕生日ケーキなの」
「ついでに聞くけど、夜ご飯何?」
「骨付きチキンよ」
「クリスマスパーティをする気しかない」
「細かいこと言わないの。パーティ料理でしょうが」
「クリスマスのパーティ料理」
晃が、ケーキの形に文句を垂れている。ブッシュ・ド・ノエルはクリスマスに食べるケーキだ。バイト先のスーパーでも、クリスマスケーキやチキンの予約を受け付けていて、どちらもたくさん予約が入っていた。クリスマス間際の日曜日、スーパーは大忙しだろうな、と一太は少し申し訳なく思う。
とはいえ、体調を崩していて、しかも遠く離れた場所にいるとなれば、どうすることもできない。
明里と晃が言い合いをしている間に、陽子が手際よくろうそくを出していた。数字の形のろうそくを20と二本立てる。これで、立派な誕生日ケーキだ。
「はーい。晃、ケーキの前に座ってー」
むっとしながらも晃はケーキの前に座った。一太は、くすくす笑いながら、陽子の隣でスマホを構える。晃くんの写真がまた増えて嬉しい、と思った。しかも、二十歳の記念だ。特別な日の写真は、特別な気分がしていい。本当の誕生日は明日だから、明日の晃も撮りたい。写真というのは、撮られる人の記念というより、撮る人にとっての楽しみなのかもしれないと思った。一太は、自分の写真より晃の写真が欲しいのだから。きっと、陽子もそうなのだろう。
ゲーム中に、ずっと握っていた晃の服の裾から手が離れたことに気付いてもおらず、一太はふわふわと笑っていた。
「子どもたち、皆で晃の周りに立って」
晃とケーキの写真を撮り終えた陽子の指示で、明里が学を引っ張って晃の横に立つ。その様子を陽子の横で見ていた一太は、全員に手招きされてびっくりと目を見開いた。
「いっちゃん、早く」
「へ?」
陽子に背中を押されて、おずおずと動く。
だって、子どもたちって……。
明里が学と並んで立った晃の反対の隣が空いていたので、一太は恐る恐るそこに立った。晃が一太の手を握り、くいっと引っ張る。さっき作り笑いだった晃の顔が、そうでない笑い顔になる。カシャとシャッターの音がした。
「お母さん、今の何押し?」
明里の突っ込みに、陽子は、あははと笑った。
「笑顔センサー」
「手動で? 笑う」
またカシャと音がする。
「もー。お母さんの写す写真って、いい加減なの多いよねぇ」
「私が置いておきたいみんなの顔を写してるだけよ」
「はいはい」
「じゃ、前向いてー」
写真を撮られることにまだ慣れていない一太には、自然な笑顔は難しいけれど。晃と繋いだ手が嬉しくて、むにむにと握り返しているうちに、カシャ、カシャと何枚か陽子のシャッターが押された。
陽子は、とても満足そうに笑った。誠は、キッチンで飲み物を準備しながら笑っていた。
それから、ろうそくに火をつけて、ハッピーバースデーの歌を歌った。
晃と一太の連弾が聞きたい、という明里の要望に答えて、二人でハッピーバースデーの演奏をした。ピアノの横に差し出されたケーキのろうそくの火を晃が上手く消せなくて、20のろうそくはドロドロに溶けてしまった。
また、皆で大笑いした。
「晃の誕生日ケーキ。作る暇なかったから、買ってきた」
「ブッシュ・ド・ノエルじゃん。クリスマスのケーキじゃん」
「ううん。晃の誕生日ケーキ」
「クリスマスのケーキだろ」
「どんな形でも、あんたの誕生日ケーキって私が言ったら誕生日ケーキなの」
「ついでに聞くけど、夜ご飯何?」
「骨付きチキンよ」
「クリスマスパーティをする気しかない」
「細かいこと言わないの。パーティ料理でしょうが」
「クリスマスのパーティ料理」
晃が、ケーキの形に文句を垂れている。ブッシュ・ド・ノエルはクリスマスに食べるケーキだ。バイト先のスーパーでも、クリスマスケーキやチキンの予約を受け付けていて、どちらもたくさん予約が入っていた。クリスマス間際の日曜日、スーパーは大忙しだろうな、と一太は少し申し訳なく思う。
とはいえ、体調を崩していて、しかも遠く離れた場所にいるとなれば、どうすることもできない。
明里と晃が言い合いをしている間に、陽子が手際よくろうそくを出していた。数字の形のろうそくを20と二本立てる。これで、立派な誕生日ケーキだ。
「はーい。晃、ケーキの前に座ってー」
むっとしながらも晃はケーキの前に座った。一太は、くすくす笑いながら、陽子の隣でスマホを構える。晃くんの写真がまた増えて嬉しい、と思った。しかも、二十歳の記念だ。特別な日の写真は、特別な気分がしていい。本当の誕生日は明日だから、明日の晃も撮りたい。写真というのは、撮られる人の記念というより、撮る人にとっての楽しみなのかもしれないと思った。一太は、自分の写真より晃の写真が欲しいのだから。きっと、陽子もそうなのだろう。
ゲーム中に、ずっと握っていた晃の服の裾から手が離れたことに気付いてもおらず、一太はふわふわと笑っていた。
「子どもたち、皆で晃の周りに立って」
晃とケーキの写真を撮り終えた陽子の指示で、明里が学を引っ張って晃の横に立つ。その様子を陽子の横で見ていた一太は、全員に手招きされてびっくりと目を見開いた。
「いっちゃん、早く」
「へ?」
陽子に背中を押されて、おずおずと動く。
だって、子どもたちって……。
明里が学と並んで立った晃の反対の隣が空いていたので、一太は恐る恐るそこに立った。晃が一太の手を握り、くいっと引っ張る。さっき作り笑いだった晃の顔が、そうでない笑い顔になる。カシャとシャッターの音がした。
「お母さん、今の何押し?」
明里の突っ込みに、陽子は、あははと笑った。
「笑顔センサー」
「手動で? 笑う」
またカシャと音がする。
「もー。お母さんの写す写真って、いい加減なの多いよねぇ」
「私が置いておきたいみんなの顔を写してるだけよ」
「はいはい」
「じゃ、前向いてー」
写真を撮られることにまだ慣れていない一太には、自然な笑顔は難しいけれど。晃と繋いだ手が嬉しくて、むにむにと握り返しているうちに、カシャ、カシャと何枚か陽子のシャッターが押された。
陽子は、とても満足そうに笑った。誠は、キッチンで飲み物を準備しながら笑っていた。
それから、ろうそくに火をつけて、ハッピーバースデーの歌を歌った。
晃と一太の連弾が聞きたい、という明里の要望に答えて、二人でハッピーバースデーの演奏をした。ピアノの横に差し出されたケーキのろうそくの火を晃が上手く消せなくて、20のろうそくはドロドロに溶けてしまった。
また、皆で大笑いした。
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