【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢

かずえ

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13 急転直下

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「は?」

 いったい何を言っているのか、というのが、その場の全員の気持ちだった。

「殿下には、早急に学園にお戻り頂く。」

 こちらに向かいながら、考えて来たのだろう。アルベリクは、眉間に皺を寄せながら話し始める。
 不満を表すように、がたっと椅子を鳴らして立ち上がったのはセリーヌだが、手を上げてそれを止める。

「毒など入れられたことは無い、と証言して頂いて、バジル殿を早急に牢から出さなければ、彼を平民扱いでそのまま処刑まで終わらせる可能性があります。」

 敵の狡猾さに唸るしかない。ここで、証言することでバジルは救えるが、七日間の毒は無かったことになる、という算段だ。ほんの一日前、助けてもらったばかりの恩人を、あっという間に危険にさらしてしまった。そして、学園に戻らなければ、毒で体調不良であるとの噂が出回る、といった所だろうか。バジルは牢から出ても、また料理長に戻れる可能性は低い。
 シリルはぐるぐると考えて歯噛みした。黙ってやり過ごしていれば、被害は最小限だっただろうか。動いたばかりに、バジルを巻き込んでしまったのだろうか。やり過ごす、とはどうやって?

「まずは、ここにある食べ物の残りを全部籠に詰めてちょうだい。」

 立ち上がって拳を握りしめていたセリーヌが、動き始めた。

「殿下、マクシム、この食べ物が安全なことは確認したわね。とりあえずの食料よ。あの方がいなければ、ますます食堂の食事が危ないから、持てるだけ持って帰りましょう。サンドイッチを作れるだけ作って、そちらもリュシルちゃんに視てもらって詰めなさい。まずは、バジル・シモン様をお救いします。」

 さすが、母上、とアルベリクは心の中で称賛した。自分と同じ場所に考えはたどり着いたようだ。

「トマ。ドミニク。早速で悪いが学園へ付いて行ってくれ。学園内の職員寮に住めるように手配をすぐに進める。騎士団宿舎の方も、そのまま荷物を置いていてくれても構わない。急な話で申し訳ない。」

「荷物なんて大してないし、寝るのはどこでも構わないっすよ。馬をもらって行ったら、食事くらい下町の屋台ですぐに買ってこられるし、このお屋敷に取りに来てもいいし。」

「そうだな。殿下の護衛騎士の馬、ということで一頭、学園の第三騎士団の厩舎で預かってもらおう。トマ、いい案だ。」

 にこりと笑顔をトマに向ける。トマが得意気に笑うのを見て、少し緊張が解けた。何とかなる、と気力が湧いてくる。

「護衛騎士の制服は今、手配中だ。マクシムの替えでは少しきついだろうから、今日のところはそのまま乗り込もう。それと……。」

 母の方を見ながら、アルベリクは言葉を切った。一度うつむき、次にリュシルを見る。

「ブラン子爵令嬢にお話がある。」 

 リュシルはその大きな目を更に見開いて、こくこくと頷いた。隣でセリーヌが、きりと唇を噛むのが見えた。髪を切ったのか、丁度いい。だが、少し華奢すぎて可愛らし過ぎる。どうしたものか。

「アルベリク、場所を移しますか。それとも、ここで座りますか。」

 セリーヌの声にはっとして、客間へ移ることにした。セリーヌは、仕立て屋を呼ぶように指示すると、リュシルの手を引いて移動していく。

「マクシム。殿下と昨日の馬で学園に戻ってくれ。殿下にはマントを被って頂いて、門のところで別れろ。トマとドミニクも、第四騎士団から馬を一頭持って学園へ。一人は殿下と学園の第三騎士団の元へ行き、毒など盛られたことはない、と伝え、バジル・シモン伯爵令息の拘束を解くよう訴えてほしい。私は、こちらの話がつき次第、牢へ向かうつもりだ。」

「はっ。」

 マクシム、トマ、ドミニクが騎士の礼を取って声を出す。

「殿下。お願い致します。」

 シリルが厳しい顔で頷くのを見て一礼し、客間へと向かった。
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