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六十一
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伊良と行成の元服がしかと行われたことは、男の許婚をあてがわれた先のない若様と考えられていた時行と余四郎に、有力な後ろ盾があることを藩内に知らしめた。特に、直井家の元服の儀の立派さを人々は噂し合った。直井家の跡取り、信次郎の元への見合いの申し込みは引きも切らず、信次郎は少々渋い顔をする羽目となった。
「大変そうですね?」
よく分からないままに、伊良は慰めの言葉をかける。信次郎の深い溜め息を聞いてしまったのだ。見合い、というものが、伊良が余四郎とした、記憶にあるあれなら、まあ、なかなかに大変かもしれない。正装するだけで、ひと仕事だったから。男物の正装なら、伊良がさせられた女物の正装よりマシなのかもしれないが、それでも大変だ。
伊良たちは一度で済んだあれを、何度もさせられるのは骨が折れそうだ。幾人もの申し込みがあるということは、幾人もと顔を合わせるものなのだろうか。
「兄上たちと遊ぶ時間が削られるのが敵わない」
だが、ぼそりと返ってきた言葉は、見合いについての愚痴ではなかった。
「綺麗どころと幾人も顔を合わせたのであろ? 好みの女子はいたか?」
「兄上より綺麗な人なんていませんよ」
「……違いない」
信次郎の真顔に、からかったはずの時行も真顔で頷く。
「何を二人で訳の分からないことを言っているんです? そんな訳ないでしょう! 信次郎。お前は、他人事のように見合いをしていてちゃんと相手を見ていないんだろう。生涯を共に過ごす伴侶なのだから、ただぼんやりと座っていてはいけない。良いか。折角の機会なのだから、しかと相手を見極めてだな、」
妙に意気投合してしまった時行と進次郎に、行成がつけつけと説教を始めた。
伊良は、くすくすと笑ってそんな友人たちを見る。
「いの。何を笑っている?」
「四郎さま。いえ。信次郎さまに、良い伴侶が見つかるとよいな、と思いまして」
「私たちみたいにか?」
当たり前のように、こうして言ってくれるから、伊良は余四郎が大好きなのだ。
「はい、そうです。私たちみたいに」
伊良の答えに、まだ子どもらしく丸い頬を緩めて笑う余四郎の顔も好きだ。
「まあまあ、行成、その辺で」
長くなりそうな行成の説教を、肩を組んで引き寄せた時行が止める。
「信次郎も、いずれ良い伴侶に出会えるさ。私たちみたいにな」
「と、と、時行さま……」
真っ赤になった行成が口をつぐんで、信次郎は、羨ましい、と呟いた。
「どうせ父上が話をまとめるとはいえ、もう少し真面目に向き合ってみることとします」
信次郎さまも、良き相手にめぐり合えると良いな、と伊良は心の底から思った。
「大変そうですね?」
よく分からないままに、伊良は慰めの言葉をかける。信次郎の深い溜め息を聞いてしまったのだ。見合い、というものが、伊良が余四郎とした、記憶にあるあれなら、まあ、なかなかに大変かもしれない。正装するだけで、ひと仕事だったから。男物の正装なら、伊良がさせられた女物の正装よりマシなのかもしれないが、それでも大変だ。
伊良たちは一度で済んだあれを、何度もさせられるのは骨が折れそうだ。幾人もの申し込みがあるということは、幾人もと顔を合わせるものなのだろうか。
「兄上たちと遊ぶ時間が削られるのが敵わない」
だが、ぼそりと返ってきた言葉は、見合いについての愚痴ではなかった。
「綺麗どころと幾人も顔を合わせたのであろ? 好みの女子はいたか?」
「兄上より綺麗な人なんていませんよ」
「……違いない」
信次郎の真顔に、からかったはずの時行も真顔で頷く。
「何を二人で訳の分からないことを言っているんです? そんな訳ないでしょう! 信次郎。お前は、他人事のように見合いをしていてちゃんと相手を見ていないんだろう。生涯を共に過ごす伴侶なのだから、ただぼんやりと座っていてはいけない。良いか。折角の機会なのだから、しかと相手を見極めてだな、」
妙に意気投合してしまった時行と進次郎に、行成がつけつけと説教を始めた。
伊良は、くすくすと笑ってそんな友人たちを見る。
「いの。何を笑っている?」
「四郎さま。いえ。信次郎さまに、良い伴侶が見つかるとよいな、と思いまして」
「私たちみたいにか?」
当たり前のように、こうして言ってくれるから、伊良は余四郎が大好きなのだ。
「はい、そうです。私たちみたいに」
伊良の答えに、まだ子どもらしく丸い頬を緩めて笑う余四郎の顔も好きだ。
「まあまあ、行成、その辺で」
長くなりそうな行成の説教を、肩を組んで引き寄せた時行が止める。
「信次郎も、いずれ良い伴侶に出会えるさ。私たちみたいにな」
「と、と、時行さま……」
真っ赤になった行成が口をつぐんで、信次郎は、羨ましい、と呟いた。
「どうせ父上が話をまとめるとはいえ、もう少し真面目に向き合ってみることとします」
信次郎さまも、良き相手にめぐり合えると良いな、と伊良は心の底から思った。
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