【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第一章 初めての幸せ

11 十三 4

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「洗うか」

 緋色ひいろが俺の髪の毛を触りながら言った。
 トイレに一人で行けるようになった。点滴が外れた。粥は雑炊になった。雑炊、粥の10倍美味しい。飴にはとてもとても、敵わないんだけど。
 仕方ないよね。飴は、この世のあらゆる美味しいもの集めて固めたんだから。
 トイレと食事以外は、ベッドでゴロゴロしている。
 体は毎日、誰かが濡れた手拭いで拭いてくれてたんだって。知らなかった。ありがたい。俺、一生ここに住む。

「髪の毛は、血や汚れで固まってるから、切ってしまうか」

 そう言って、緋色は俺を椅子に座らせ、戦場でただただ肩くらいまでうねうね伸びていた俺の髪の毛を、5センチくらいまでばっさり切った。
 おお、軽い。

「柔らかいくせ毛だから、短くしてもつんつんしないんだなー。可愛い、可愛い」

 格好いいんじゃないの?
 残念。
 そうして、シャワールームに一緒に入った。お湯をかけられると、左腕や左脇腹にしみて痛い。
 うーうー唸っていると、ちょっと我慢しろって言いながら、緋色ひいろが、優しく優しく体も頭も洗ってくれた。
 気持ちよくて、痛いのは我慢できた。
 手拭いでぽんぽん拭いてくれる。

 さて。
 シャワーだけで疲れたけど、頑張らなくては。ここまでしてもらったんだから。
 体を洗った後は、ヤらなくちゃならないんだよね。どこでヤるのかな。俺がいつも寝かせてもらっているベッド? それとも、緋色ひいろのベッドかな?
 いつもの病人着を着せてくれたし、緋色ひいろもしっかり軍服を着込んだし、この更衣室では無さそう。
 疲れて、ふらりふらりと緋色ひいろに付いていく。普通に俺のいつもいる部屋に戻った。廊下ですれ違う人は全然いなかった。もう、夜だし帰ったのかな?
 
 緋色ひいろがベッドに座って、おいでおいでと手をふる。常陸丸ひたちまるは、まだ部屋にいた。そういえば、シャワールームに付いてこなかったな。あ、切った髪の毛を掃除してくれてたのか。ありがとうー。
 では、頑張りますか。ふらりふらりとベッドに近寄って跪き、緋色ひいろのズボンのベルトに手をかける。う、右手だけだと、外せない。どうしよう。

「どうした、十三じゅうさん?」

 緋色ひいろ、ごめん。ベルト自分で外して。
 困ってしまって緋色ひいろを見上げると、ははあ、と呟く声がした。
 いつの間にか常陸丸ひたちまるが後ろにいて、持ち上げられ、ベッドに座らされる。
 なになに? 常陸丸ひたちまるもヤるの?
 ちょっと今日は二人相手できる自信ないんだけど、どうしよう。

「とても魅力的なお誘いだが、今日は髪の毛をしっかり拭いて、もう寝ような」

 緋色ひいろの優しい声がして、髪の毛を手拭いでわしゃわしゃ拭かれた。気持ちよすぎて寝た。
 こめんなさい。
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