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第二章 人として生きる
2 緋色 6
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「俺は、俺以外の男と抱き合う乙羽は、見たくない。嫌だ」
常陸丸が、背中から抱き込んだ乙羽の肩に顔を乗せて呟く。少し考える素振りを見せてから、
「ごめん」
と、乙羽が言った。
「大好きよ、常陸丸」
「俺も。……結婚しよう、乙羽」
え、と驚いた乙羽が振り返って常陸丸の顔を覗きこんだ。
「結婚しよ、乙羽。……出世はできそうにないけど」
常陸丸の耳たぶが赤い。その告白の場所は、ここで合ってるのか?
くったりと身を寄せている成人を揺すりあげながら、俺は笑いを噛みころした。
抱いていても、起きているのか寝ているのか分からないほど力の入らない体は、ますます痩せて恐ろしいほどに軽い。以前は、抱き上げたら右手と両足で、きゅう、と抱きついてきたというのに。
縦に抱いたまま、ソファに座る。どうやら、寝てしまったようだ。寝にくいだろうに、離すとむずかるので、そのまま腹の上で抱き込む。
ご機嫌に口元が緩んで涎がついているので、乙羽に何か食べ物を貰ったのだろう。
ほ、と息を吐く。
拾った時より怪我は軽いというのに、二度目は、いつ呼吸が止まるかと気が気ではなかった。実際、何度か止まった。上半身を抱いて、成人と呼ぶと戻ったが、心配で寝れたものじゃなかった。
帝国の交渉人、斎文明は、自分も痛む頭を押さえながら、指令が出ている、と言った。
交渉決裂後すぐに送り付けた抗議文は、文書では遅いと、そちらも準備させながら電信を飛ばした。
人心を操る術を持つものの首をすべて差し出せ。できなければ、本気で攻撃する。今回の終戦宣言の邪魔を、皇国はかなり重く見ている。
定型文とか、取り繕う言葉とかどうでもよい、とばかりに飛ばした電信に、返事は来なかった。
代わりに届いたのは、指令、であるらしかった。抗議文を送った翌日から、斎文明は頭痛を訴えてたびたび吐き、成人は、か細い呼吸を苦しそうに乱して、捕虜の帝国軍人は、暴れて何人もが撃たれて死んだ。
帝国の各地でまた、人々が武器を手にした、との情報が届き始めた。
成人の呼吸がわずかでも止まったことで、自分の理性はふつり、と切れたのだと思う。
指令を出せる人間を全て殺さなければならない。武器部門と連絡を取り、一発で終わらせる方法を検討する。開発した武器を試したくて仕方なかった研究者は、快く協力してくれた。全権力を使って、反対意見や人道的な意見をねじ伏せる。最終ボタンを自分が押せば、全ての責任は自分にかぶせられる、それでいい。
急ぎに急いで三日後には、帝都を灰にできた。
「消えました……」
斎文明は、そう言って気を失い、強張っていた成人の体から、くたりと力が抜けた。頭痛を訴えていた捕虜も落ち着いたり、気を失ったりしたらしい。各地でも、武器を投げ出した人々が、皇国、万歳、と声を上げているそうだ。
ほっとして、気を失うように眠った。二日間、ほとんど寝ていなかった。
常陸丸が、背中から抱き込んだ乙羽の肩に顔を乗せて呟く。少し考える素振りを見せてから、
「ごめん」
と、乙羽が言った。
「大好きよ、常陸丸」
「俺も。……結婚しよう、乙羽」
え、と驚いた乙羽が振り返って常陸丸の顔を覗きこんだ。
「結婚しよ、乙羽。……出世はできそうにないけど」
常陸丸の耳たぶが赤い。その告白の場所は、ここで合ってるのか?
くったりと身を寄せている成人を揺すりあげながら、俺は笑いを噛みころした。
抱いていても、起きているのか寝ているのか分からないほど力の入らない体は、ますます痩せて恐ろしいほどに軽い。以前は、抱き上げたら右手と両足で、きゅう、と抱きついてきたというのに。
縦に抱いたまま、ソファに座る。どうやら、寝てしまったようだ。寝にくいだろうに、離すとむずかるので、そのまま腹の上で抱き込む。
ご機嫌に口元が緩んで涎がついているので、乙羽に何か食べ物を貰ったのだろう。
ほ、と息を吐く。
拾った時より怪我は軽いというのに、二度目は、いつ呼吸が止まるかと気が気ではなかった。実際、何度か止まった。上半身を抱いて、成人と呼ぶと戻ったが、心配で寝れたものじゃなかった。
帝国の交渉人、斎文明は、自分も痛む頭を押さえながら、指令が出ている、と言った。
交渉決裂後すぐに送り付けた抗議文は、文書では遅いと、そちらも準備させながら電信を飛ばした。
人心を操る術を持つものの首をすべて差し出せ。できなければ、本気で攻撃する。今回の終戦宣言の邪魔を、皇国はかなり重く見ている。
定型文とか、取り繕う言葉とかどうでもよい、とばかりに飛ばした電信に、返事は来なかった。
代わりに届いたのは、指令、であるらしかった。抗議文を送った翌日から、斎文明は頭痛を訴えてたびたび吐き、成人は、か細い呼吸を苦しそうに乱して、捕虜の帝国軍人は、暴れて何人もが撃たれて死んだ。
帝国の各地でまた、人々が武器を手にした、との情報が届き始めた。
成人の呼吸がわずかでも止まったことで、自分の理性はふつり、と切れたのだと思う。
指令を出せる人間を全て殺さなければならない。武器部門と連絡を取り、一発で終わらせる方法を検討する。開発した武器を試したくて仕方なかった研究者は、快く協力してくれた。全権力を使って、反対意見や人道的な意見をねじ伏せる。最終ボタンを自分が押せば、全ての責任は自分にかぶせられる、それでいい。
急ぎに急いで三日後には、帝都を灰にできた。
「消えました……」
斎文明は、そう言って気を失い、強張っていた成人の体から、くたりと力が抜けた。頭痛を訴えていた捕虜も落ち着いたり、気を失ったりしたらしい。各地でも、武器を投げ出した人々が、皇国、万歳、と声を上げているそうだ。
ほっとして、気を失うように眠った。二日間、ほとんど寝ていなかった。
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