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第三章 幸せの行方
11 赤璃 3
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「俺に? 婚約?」
私の合図に従って大人しくしていた緋色が、自分の名前が出たので聞き返している。
「ええ。緋色殿下はまだご婚約されておられないし、家格が合う者もそうそう見つかりませんし、お互いに良いことばかりだと」
三条初花は、本当に嬉しそうに顔を綻ばせた。
「すまない。俺はもう、結婚している。身内に紹介はすんでいるのだが、内縁でな。体が弱いので公の発表はしないが、誓いはすんでいる」
緋色が左手をひょいと持ち上げて、薬指の指輪を見せた。シンプルなデザインの指輪には、緋色の宝石が小さく光っている。
「え?」
三条初花は、ただただ目を見開いてそれを見つめた。
「それでは、私たちはこれで」
素早く礼をして歩き出すと、緋色も軽く頭を下げて付いてくる。
「ま、待って。お待ちになって」
仕方なく足を止めると、腕を掴めそうな位置までやってくる。
「そんな、そんなことが可能ですの? 皇族の婚姻が、婚約も発表もなく済んでいるなんて、あり得ませんわ」
「一条の時に結んだ婚姻だ。問題あるまい」
「朱実殿下も了承済みです」
私が口を挟むと、睨み付けてくる。二条家が無くなった今、三条は野心を隠しもすまい。一悶着ありそうだと、これも朱実への報告事項に頭の中で付け加える。
何も言えずに立ち竦む三条初花を置いて、ようやく朱実の執務室へたどり着くことができた。
私だと分かると人払いが成される。
「緋色も一緒とは珍しい」
嬉しそうに朱実は言った。ちょっと妬けるくらい、緋色のことが好きよね。
「斎文明が手術室へ入りました」
「ついに、生きたままの人の頭の中をいじるのか」
「ええ」
「人が、手を出して良い領域なのかどうかと議論が行われていたけれど」
「そこは、倫理観の違いで帝国の方が進んでいたようですね。人体をいじり回して戦闘人形なんてものを作り、人々の意識を操って戦争をするなど、恐ろしい方向に進歩をしていた」
「医療の方向に進んでいたなら、今頃、教えを乞いに留学している学者などもいたかもしれないのにな……」
私は、灰と化した帝都を思う。勿体ないことだ、と。
私の合図に従って大人しくしていた緋色が、自分の名前が出たので聞き返している。
「ええ。緋色殿下はまだご婚約されておられないし、家格が合う者もそうそう見つかりませんし、お互いに良いことばかりだと」
三条初花は、本当に嬉しそうに顔を綻ばせた。
「すまない。俺はもう、結婚している。身内に紹介はすんでいるのだが、内縁でな。体が弱いので公の発表はしないが、誓いはすんでいる」
緋色が左手をひょいと持ち上げて、薬指の指輪を見せた。シンプルなデザインの指輪には、緋色の宝石が小さく光っている。
「え?」
三条初花は、ただただ目を見開いてそれを見つめた。
「それでは、私たちはこれで」
素早く礼をして歩き出すと、緋色も軽く頭を下げて付いてくる。
「ま、待って。お待ちになって」
仕方なく足を止めると、腕を掴めそうな位置までやってくる。
「そんな、そんなことが可能ですの? 皇族の婚姻が、婚約も発表もなく済んでいるなんて、あり得ませんわ」
「一条の時に結んだ婚姻だ。問題あるまい」
「朱実殿下も了承済みです」
私が口を挟むと、睨み付けてくる。二条家が無くなった今、三条は野心を隠しもすまい。一悶着ありそうだと、これも朱実への報告事項に頭の中で付け加える。
何も言えずに立ち竦む三条初花を置いて、ようやく朱実の執務室へたどり着くことができた。
私だと分かると人払いが成される。
「緋色も一緒とは珍しい」
嬉しそうに朱実は言った。ちょっと妬けるくらい、緋色のことが好きよね。
「斎文明が手術室へ入りました」
「ついに、生きたままの人の頭の中をいじるのか」
「ええ」
「人が、手を出して良い領域なのかどうかと議論が行われていたけれど」
「そこは、倫理観の違いで帝国の方が進んでいたようですね。人体をいじり回して戦闘人形なんてものを作り、人々の意識を操って戦争をするなど、恐ろしい方向に進歩をしていた」
「医療の方向に進んでいたなら、今頃、教えを乞いに留学している学者などもいたかもしれないのにな……」
私は、灰と化した帝都を思う。勿体ないことだ、と。
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