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第三章 幸せの行方
36 力丸 5
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「成人の悪口。」
戦闘人形と聞いて俺が思うのは、それしかない。
斎さんは、少し可笑しそうに口元を緩めた。
広末が入ってきて、成人の前にカラメル無しプリンと俺の前に皆のより大きな器に入ったプリンが置かれた。
あるじゃん、俺の!
「広末、ありがと!」
「はいはい。」
「ありがと。」
「はいよ。」
早速、食べ始めた俺達を見て、斎さんは生松先生の方を向いた。
「生松先生は、戦闘人形と聞いて、何を思いますか?」
「恐ろしい兵器。」
へ?と俺は生松先生を見る。
「私の認識もそうです。銃や戦車、それに類するものの中で最も優れた恐ろしい兵器。」
「……。」
「そして、成人は戦闘人形でした。」
「私は、戦場で戦闘人形の恐ろしさを知っていました。どれだけの人がその兵器に殺されたことか。……殿下が、壊れた戦闘人形を拾ってきて治療を始めたとき、皆ただただ怯えていました。身分が低くて世話を押し付けられた私も、震えながら触れました。恐ろしくて堪らなかった。」
生松先生は淡々と語る。俺は成人を見た。プリンを少しずつ、なめるように食べている。
「ごめんね。」
成人が言った。上手にすくえなかったプリンが器に戻る。柔らかい、とても柔らかいプリン。スプーンの使い方が下手くそな成人には、すくうのが難しい食べ物。器を持ち上げて口に近付ける手も、無い。
壊れた戦闘人形。それは、もしかして、怪我をした成人のこと?
「兵器に入れる燃料は、なるべく少ない方が使い勝手がいいですね。だから、少量でも動く小さな体です。時間をかけるのも無駄ですから、素早く補給できるようなものを渡されていたことでしょう。小さくても力が出せるよう調整し、素早く動く訓練をさせます。従順であるように、しかし長く戦場で使えるように必要最低限の教育を施し、命令を届ける装置を付け、手入れが楽なように体毛や体液の分泌を抑え…。」
「もういい!」
俺は、思わず叫んだ。
もう、いい。
分かった。分かったから。
「戦闘人形は、買い物をしません。遊びもしません。布団で寝ることもありません。」
戦闘人形と聞いて俺が思うのは、それしかない。
斎さんは、少し可笑しそうに口元を緩めた。
広末が入ってきて、成人の前にカラメル無しプリンと俺の前に皆のより大きな器に入ったプリンが置かれた。
あるじゃん、俺の!
「広末、ありがと!」
「はいはい。」
「ありがと。」
「はいよ。」
早速、食べ始めた俺達を見て、斎さんは生松先生の方を向いた。
「生松先生は、戦闘人形と聞いて、何を思いますか?」
「恐ろしい兵器。」
へ?と俺は生松先生を見る。
「私の認識もそうです。銃や戦車、それに類するものの中で最も優れた恐ろしい兵器。」
「……。」
「そして、成人は戦闘人形でした。」
「私は、戦場で戦闘人形の恐ろしさを知っていました。どれだけの人がその兵器に殺されたことか。……殿下が、壊れた戦闘人形を拾ってきて治療を始めたとき、皆ただただ怯えていました。身分が低くて世話を押し付けられた私も、震えながら触れました。恐ろしくて堪らなかった。」
生松先生は淡々と語る。俺は成人を見た。プリンを少しずつ、なめるように食べている。
「ごめんね。」
成人が言った。上手にすくえなかったプリンが器に戻る。柔らかい、とても柔らかいプリン。スプーンの使い方が下手くそな成人には、すくうのが難しい食べ物。器を持ち上げて口に近付ける手も、無い。
壊れた戦闘人形。それは、もしかして、怪我をした成人のこと?
「兵器に入れる燃料は、なるべく少ない方が使い勝手がいいですね。だから、少量でも動く小さな体です。時間をかけるのも無駄ですから、素早く補給できるようなものを渡されていたことでしょう。小さくても力が出せるよう調整し、素早く動く訓練をさせます。従順であるように、しかし長く戦場で使えるように必要最低限の教育を施し、命令を届ける装置を付け、手入れが楽なように体毛や体液の分泌を抑え…。」
「もういい!」
俺は、思わず叫んだ。
もう、いい。
分かった。分かったから。
「戦闘人形は、買い物をしません。遊びもしません。布団で寝ることもありません。」
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