【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

51 成人 61

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「ただいま。」
「お、おかえり?」

 ワゴンに、お茶のポットと湯呑みを乗せてガラガラと運んでいたら、大きな鞄を持った力丸りきまるが、玄関から入ってきた。
 ただいま、と言われて思わず、おかえりと答えたけど、ここは力丸りきまるの家じゃないよ?

荘重むらしげさま。俺の部屋はどこですか?」

 姿が見えていないじいやに話しかけている。

力丸りきまるは知りませんでしたね。私は、成人なるひとさまの専属護衛となりました。連絡事項は村正むらまさに聞きなさい。」
「え?」

 じいやは、いつの間にか目の前に来て、説明をするとまた、見えなくなってしまう。
 ま、いいか。
 俺は忙しい。
 またワゴンを押して進み始めると、力丸りきまるが付いてきた。

「何してんの?」
「お仕事。」
「仕事?」
「お金がいるからね。」
「なんで?」
「お買い物ができないでしょ。」

 力丸りきまるは、入ってきた時の気まずそうな表情から、ちょっと笑顔になった。

「俺と買い物行くために?」
「それもあるけど。」
「ふーん…。」

 話してるうちにさいさんの部屋に着く。ノックをして……。
 返事が聞こえるかどうかで扉を開けようとする力丸りきまるの手を、べちんと叩いた。

「邪魔。」
「手伝ってやろうとしてるんだろ。」
「い・ら・な・い!あっち行って。」

 どうした?と緋色ひいろが内側から扉を開けてしまう。
 もうっ。

「何でもない…ないです。お茶を持って…お持ち。え、と。」

 あー、もう。絶対、力丸りきまるのせいだ。

「お茶を、お持ち、しました。」

 くっくっくっ、と緋色ひいろの笑い声が聞こえるけど、知らん顔してワゴンを押して入る。ソファで座って書類を見ているさいさんの前に、ポットから注いだ温かいお茶を置いて、ぺこりと頭を下げた。緋色ひいろも座ったので、そこにもお茶を置く。また、ぺこりと頭を下げた。

「ありがとう、成人なるひと。」

 さいさんが、優しく笑ってくれる。左手に持っていた書類を置いて、すぐに飲んでくれた。
 ふふん。できた。

「失礼しました。」

 出ていこうとすると、ご苦労様、と緋色ひいろの声がした。
 ポットを乗せたワゴンを押して、また歩く。次は、村正むらまささんのお部屋かな。
 むすっとした力丸りきまるがまだ付いてきてたので、一緒に行ってあげることにした。
 仕方ないなあ、もう。
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