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第四章 西からの迷い人
70 御前会議 5 赤璃
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「納得がいったなら、婚約の打診などという訳の分からないものを送るのをやめてもらおう。何なら、私の名で婚約の打診を禁ずる旨を発令するが?」
「我が家の力なしにこの国を治めていかれるおつもりで?」
「ああ、それなんだが、朱実。後は頼む。」
「はい。正式発表の前に御前会議の皆にお知らせを。」
ずっと沈黙を続けていた朱実が、滑らかに引き継いだ。トイレから帰ってきた緋色が、なるを抱いたまま席につく。……起きても、抱っこのままなのね。隣に椅子を準備してあるのに、知らん顔。なるも、当然のように緋色の膝の上に座るのね。
「一つ、七条朱可を一条家当主とする。七条は、朱可の弟の緋椀とその伴侶が継ぐ。緋椀は緋色と同じで同性結婚のため、跡取りは朱可の次男を養子とする。養子の件は成人してからで構わないので、次男は一条の家で過ごしてもらうつもりだが、いずれ七条の当主になることは言っておき、そのように教育する予定である。これらは決定事項の通達となる。」
「なっ……。」
何か言いたそうに口を開ける三条を一瞥もせず、朱実は続ける。
「二つ目は、帝国との戦場の後始末について。交代で各部隊が出動し、支援を行っているのだが、終戦後に軍人を引退した者が多く人手が足りていない。そこで、各家が抱える私設部隊を少しお借りしたい。できれば、その家の直系の方に率いて頂けると士気も上がるというもの。まずは、二週間後に出動する部隊に三条家の参加をお願いする。」
ざわ、と流石に場が揺れた。
「それは、なかなかに厳しいご提案ですね。」
八条が声を上げる。八条は領地が小さく、学者の家系なので、大した戦力を持っていない。今ここにはいないが、九条も、治める領地の警備のための部隊しかいないだろう。
「ああ。余力のありそうな所に頼むつもりだから、無理はしなくていい。三条や四条に試してもらおうと思っている。」
「分かりました。父と相談して、どのくらいの余力があるか計算し、回答致します。親族に軍人がおりますので、その者を軍からこちらにお貸し頂いて四条家の隊長とすることは可能でしょうか。」
「ああ、もちろんだ。無理のない範囲で考えてみてほしい。」
「はっ。持ち帰り検討致します。」
四条の次期当主がしっかり考えながら答えるのを聞いたであろうに、三条は傲然と言い放つ。
「無理でございます。お断り致します。」
「検討の様子も見せぬとは、救いようがないな。」
朱実が、鋭い目付きを三条に向けた。
「今回の失態の、挽回の機会をやろうという私の温情を無碍にするというならそれで構わぬ。現在の三条を御前会議から外す。領地は半分没収、三条の名も取り上げる。以後、三ノ瀬を名乗れ。」
「な、ななな、何を。」
「これに伴い、先程の緋色の名による発令は、三条の部分を三ノ瀬の一族郎党と書き換える。以上。」
「お、お待ちを。お待ちください。」
「皆、時間を取って悪かったな。意見があれば聞く。」
「異存はありません。朱可さまは一条を名乗るに相応しきお方と考えます。」
八条の若当主が溌剌とした声を上げる。同意の声が幾つか上がり、お兄さまが丁寧に頭を下げた。
「ご期待に沿うよう、精一杯努めさせて頂きます。」
「朱実殿下。考える時間を頂きたい!先程のお話、持ち帰り検討致します。」
三条改め三ノ瀬嗣永は、必死に声を上げるが、誰もそちらを向こうとはしない。
「それでは、これで解散とする。手間をかけた。」
「我が家の力なしにこの国を治めていかれるおつもりで?」
「ああ、それなんだが、朱実。後は頼む。」
「はい。正式発表の前に御前会議の皆にお知らせを。」
ずっと沈黙を続けていた朱実が、滑らかに引き継いだ。トイレから帰ってきた緋色が、なるを抱いたまま席につく。……起きても、抱っこのままなのね。隣に椅子を準備してあるのに、知らん顔。なるも、当然のように緋色の膝の上に座るのね。
「一つ、七条朱可を一条家当主とする。七条は、朱可の弟の緋椀とその伴侶が継ぐ。緋椀は緋色と同じで同性結婚のため、跡取りは朱可の次男を養子とする。養子の件は成人してからで構わないので、次男は一条の家で過ごしてもらうつもりだが、いずれ七条の当主になることは言っておき、そのように教育する予定である。これらは決定事項の通達となる。」
「なっ……。」
何か言いたそうに口を開ける三条を一瞥もせず、朱実は続ける。
「二つ目は、帝国との戦場の後始末について。交代で各部隊が出動し、支援を行っているのだが、終戦後に軍人を引退した者が多く人手が足りていない。そこで、各家が抱える私設部隊を少しお借りしたい。できれば、その家の直系の方に率いて頂けると士気も上がるというもの。まずは、二週間後に出動する部隊に三条家の参加をお願いする。」
ざわ、と流石に場が揺れた。
「それは、なかなかに厳しいご提案ですね。」
八条が声を上げる。八条は領地が小さく、学者の家系なので、大した戦力を持っていない。今ここにはいないが、九条も、治める領地の警備のための部隊しかいないだろう。
「ああ。余力のありそうな所に頼むつもりだから、無理はしなくていい。三条や四条に試してもらおうと思っている。」
「分かりました。父と相談して、どのくらいの余力があるか計算し、回答致します。親族に軍人がおりますので、その者を軍からこちらにお貸し頂いて四条家の隊長とすることは可能でしょうか。」
「ああ、もちろんだ。無理のない範囲で考えてみてほしい。」
「はっ。持ち帰り検討致します。」
四条の次期当主がしっかり考えながら答えるのを聞いたであろうに、三条は傲然と言い放つ。
「無理でございます。お断り致します。」
「検討の様子も見せぬとは、救いようがないな。」
朱実が、鋭い目付きを三条に向けた。
「今回の失態の、挽回の機会をやろうという私の温情を無碍にするというならそれで構わぬ。現在の三条を御前会議から外す。領地は半分没収、三条の名も取り上げる。以後、三ノ瀬を名乗れ。」
「な、ななな、何を。」
「これに伴い、先程の緋色の名による発令は、三条の部分を三ノ瀬の一族郎党と書き換える。以上。」
「お、お待ちを。お待ちください。」
「皆、時間を取って悪かったな。意見があれば聞く。」
「異存はありません。朱可さまは一条を名乗るに相応しきお方と考えます。」
八条の若当主が溌剌とした声を上げる。同意の声が幾つか上がり、お兄さまが丁寧に頭を下げた。
「ご期待に沿うよう、精一杯努めさせて頂きます。」
「朱実殿下。考える時間を頂きたい!先程のお話、持ち帰り検討致します。」
三条改め三ノ瀬嗣永は、必死に声を上げるが、誰もそちらを向こうとはしない。
「それでは、これで解散とする。手間をかけた。」
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