【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
306 / 1,325
第四章 西からの迷い人

93 いい男  成人

しおりを挟む
 あの後、じいやとじいじが動く前に城の兵が紋付き袴の集団を捕らえ、門の方から軍服の集団が駆けてきて城を制圧した。二人はちょっとつまらなさそうに引いて、久々に城落としができるかと思うたのに……、とか言ってた。

「ま、間に合って良かったです……。」

 青い顔で挨拶してきたのは、壱鷹いちたかの弟の弐藤にふじだって。また、壱臣いちおみに似た顔の人が増えて、俺はくふくふ笑った。黒い軍服の弐藤にふじは、跪いて綺麗な包拳礼で挨拶をすると、お礼を言った。

「俺の大切な家族達を守って頂き、ありがとうございます。」

 って。この人も、好き。
 この人もきっと、たくさんのものを守ってきたんだろう。少し汚れた軍服は、とても格好良かった。緋色ひいろが礼を受けて立ち上がらせると、弐藤にふじ壱臣いちおみ弐角にかくをまとめて抱きしめて、声もなく泣いた。黒装束の壱鷹いちたかも後ろから同じように抱きついて、喉を鳴らした。俺も何だか、鼻の奥がつんとした。
 
「この城で、わたくしにこのような扱いをするなど許される筈がない。誰か、誰かおらぬか!早うこの者らを捕らえよ!お主らも、何故従うておる。早う何とかせよ。」

 一緒に車で移動してきた集団も、城の前に到着する。九鬼くき綾女あやめが大きな声を上げていた。諦めたように歩く集団に向かって、甲高い声がずっと響いている。
 銃を持った兵に囲まれて歩いているのに、怖くないのかな?

「お父様!お父様は何処いずこにおられる?」

 綾女あやめの目にようやく、城の前が見えたようだ。捕縛された集団と、痛みで地面に倒れている八朔はっさく与市よいち。一応、銃で撃った足は応急手当をして、うるさいので猿ぐつわを噛ませてある。

「きぃやあぁぁぁぁ!お父様!」

 八朔はっさく与市よいちを見た瞬間に叫んだ。もう、うるさい……。
 緋色ひいろの胸に左耳を押し付けて右耳は手でふさいだ。甲高い音や大きな音は苦手なんだよー。

「うるさいな。」

 そう言った緋色ひいろにすぐに抱き上げられて、壱鷹いちたかの案内で城の中へ入った。中でも、あちこちで大きな物音が聞こえる。

「広いもんやから鼠も隠れやすうて。もう少しだけお待ちください。寛げる部屋をご用意致します。」

 壱鷹いちたかは申し訳なさそうに頭を下げている。

「夕食は?」

 壱臣いちおみの言葉に壱鷹いちたか弐藤にふじが顔を見合わせた。

「うち、厨房へ行ってくるわ。」
「たぶん、ご馳走を用意してるやろと思うけど。」
成人なるひと君が食べれなんだら、それはもうご馳走ちゃう。急がんと。」

 背広を邪魔そうに脱いで半助はんすけに渡した壱臣いちおみは、シャツの袖を捲りながら足を早めた。半助はんすけが嬉しそうに目を細めて付いていく。

おみは、ずいぶんとええ男になったな。」

 ぽつり、と壱鷹いちたかが呟いた。
 知らなかったの?壱臣いちおみは最初っから、いい男だったよ。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...