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第四章 西からの迷い人
93 いい男 成人
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あの後、じいやとじいじが動く前に城の兵が紋付き袴の集団を捕らえ、門の方から軍服の集団が駆けてきて城を制圧した。二人はちょっとつまらなさそうに引いて、久々に城落としができるかと思うたのに……、とか言ってた。
「ま、間に合って良かったです……。」
青い顔で挨拶してきたのは、壱鷹の弟の弐藤だって。また、壱臣に似た顔の人が増えて、俺はくふくふ笑った。黒い軍服の弐藤は、跪いて綺麗な包拳礼で挨拶をすると、お礼を言った。
「俺の大切な家族達を守って頂き、ありがとうございます。」
って。この人も、好き。
この人もきっと、たくさんのものを守ってきたんだろう。少し汚れた軍服は、とても格好良かった。緋色が礼を受けて立ち上がらせると、弐藤は壱臣と弐角をまとめて抱きしめて、声もなく泣いた。黒装束の壱鷹も後ろから同じように抱きついて、喉を鳴らした。俺も何だか、鼻の奥がつんとした。
「この城で、わたくしにこのような扱いをするなど許される筈がない。誰か、誰かおらぬか!早うこの者らを捕らえよ!お主らも、何故従うておる。早う何とかせよ。」
一緒に車で移動してきた集団も、城の前に到着する。九鬼綾女が大きな声を上げていた。諦めたように歩く集団に向かって、甲高い声がずっと響いている。
銃を持った兵に囲まれて歩いているのに、怖くないのかな?
「お父様!お父様は何処におられる?」
綾女の目にようやく、城の前が見えたようだ。捕縛された集団と、痛みで地面に倒れている八朔与市。一応、銃で撃った足は応急手当をして、うるさいので猿ぐつわを噛ませてある。
「きぃやあぁぁぁぁ!お父様!」
八朔与市を見た瞬間に叫んだ。もう、うるさい……。
緋色の胸に左耳を押し付けて右耳は手でふさいだ。甲高い音や大きな音は苦手なんだよー。
「うるさいな。」
そう言った緋色にすぐに抱き上げられて、壱鷹の案内で城の中へ入った。中でも、あちこちで大きな物音が聞こえる。
「広いもんやから鼠も隠れやすうて。もう少しだけお待ちください。寛げる部屋をご用意致します。」
壱鷹は申し訳なさそうに頭を下げている。
「夕食は?」
壱臣の言葉に壱鷹と弐藤が顔を見合わせた。
「うち、厨房へ行ってくるわ。」
「たぶん、ご馳走を用意してるやろと思うけど。」
「成人君が食べれなんだら、それはもうご馳走ちゃう。急がんと。」
背広を邪魔そうに脱いで半助に渡した壱臣は、シャツの袖を捲りながら足を早めた。半助が嬉しそうに目を細めて付いていく。
「臣は、ずいぶんとええ男になったな。」
ぽつり、と壱鷹が呟いた。
知らなかったの?壱臣は最初っから、いい男だったよ。
「ま、間に合って良かったです……。」
青い顔で挨拶してきたのは、壱鷹の弟の弐藤だって。また、壱臣に似た顔の人が増えて、俺はくふくふ笑った。黒い軍服の弐藤は、跪いて綺麗な包拳礼で挨拶をすると、お礼を言った。
「俺の大切な家族達を守って頂き、ありがとうございます。」
って。この人も、好き。
この人もきっと、たくさんのものを守ってきたんだろう。少し汚れた軍服は、とても格好良かった。緋色が礼を受けて立ち上がらせると、弐藤は壱臣と弐角をまとめて抱きしめて、声もなく泣いた。黒装束の壱鷹も後ろから同じように抱きついて、喉を鳴らした。俺も何だか、鼻の奥がつんとした。
「この城で、わたくしにこのような扱いをするなど許される筈がない。誰か、誰かおらぬか!早うこの者らを捕らえよ!お主らも、何故従うておる。早う何とかせよ。」
一緒に車で移動してきた集団も、城の前に到着する。九鬼綾女が大きな声を上げていた。諦めたように歩く集団に向かって、甲高い声がずっと響いている。
銃を持った兵に囲まれて歩いているのに、怖くないのかな?
「お父様!お父様は何処におられる?」
綾女の目にようやく、城の前が見えたようだ。捕縛された集団と、痛みで地面に倒れている八朔与市。一応、銃で撃った足は応急手当をして、うるさいので猿ぐつわを噛ませてある。
「きぃやあぁぁぁぁ!お父様!」
八朔与市を見た瞬間に叫んだ。もう、うるさい……。
緋色の胸に左耳を押し付けて右耳は手でふさいだ。甲高い音や大きな音は苦手なんだよー。
「うるさいな。」
そう言った緋色にすぐに抱き上げられて、壱鷹の案内で城の中へ入った。中でも、あちこちで大きな物音が聞こえる。
「広いもんやから鼠も隠れやすうて。もう少しだけお待ちください。寛げる部屋をご用意致します。」
壱鷹は申し訳なさそうに頭を下げている。
「夕食は?」
壱臣の言葉に壱鷹と弐藤が顔を見合わせた。
「うち、厨房へ行ってくるわ。」
「たぶん、ご馳走を用意してるやろと思うけど。」
「成人君が食べれなんだら、それはもうご馳走ちゃう。急がんと。」
背広を邪魔そうに脱いで半助に渡した壱臣は、シャツの袖を捲りながら足を早めた。半助が嬉しそうに目を細めて付いていく。
「臣は、ずいぶんとええ男になったな。」
ぽつり、と壱鷹が呟いた。
知らなかったの?壱臣は最初っから、いい男だったよ。
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