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第四章 西からの迷い人
101 譲れないもの 三郎
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「あの、何で……。」
料理長が控えの間に入ってきた。立ったままはよくないと気付いたんやろう、腰を下ろしてきょろきょろと辺りを見渡す。こちらは、上座も下座もなく好きなように座って好きなように食べているから、誰に声をかけたらええのか分からんかったんかもしれん。城主の顔も知らんかったりして。……まさかな。
「何で、賄いを食べていらっしゃるんですか?」
部屋の全体に話しかけている。ほんまに、城主の顔知らんのか。
「賄い?お前は何を言うとる?この料理は、緋色殿下がお連れしてくれはった料理人に正式に依頼して作って貰ったもんやぞ。良い食材を渡してくれたことには感謝しとるけど、あほなこと言うたらあかん。」
「緋色殿下の……。いや、でも、こちらの作っとるもんのお品書きを見せろやの、出来たもんを見せろやの言うて、ちらと見たら賄い用の厨房に籠ってしもて、てっきりお連れの方の分を作らはるんやと……。」
壱鷹さまが箸を置いて料理長にしっかりと向き合う。料理長は、兄上の方を見てぶつぶつと言った。
「賄い用にしては上等なもんを置いてあって助かったけど、成人くんがもりもり食べられるお肉が、この人数分あるておかしいで。かなり高いやろ?城主とその家族くらいにしか使わへんようなお肉を、なんで賄い用の冷蔵庫に入れてあるん?野菜やらも、余り物には見えへんかった。」
兄上が、兄上にしては鋭い声を上げる。……どうしても柔らかさは消えてないけど。
「え?は?成人くん?が食べられるお肉?」
「知らんの?もてなす相手の名前も、必要な配慮も知らんと作ってたん?」
「緋色殿下に、好まれないものは無いとご連絡を頂いております。せやから、上等な食材で上等な味のもんを作っとります。」
「緋色殿下は、甘すぎるもんや匂いのきつすぎるもんは好まれへんよ!殿下の伴侶の成人くんは、顎の噛む力が弱くて飲み込むのが苦手やから、かたいもんや大きいもんは食べられへん。味が濃いすぎるのもあかん。熱くて冷めないもんもあかん。もともとの情報がどうやったかて、当人たちが来られたら家臣の方にでもうちにでも聞いたら分かることやろ?あんたは、聞きにも来んかった。うちが教えようとしても、聞く耳持たへんかった。上等な食材で上等な味のもんを作ったかて、食べられへんかったらそれはご馳走ちゃう。」
「見ても食べてもおらんのに……。」
料理長が怖い顔で兄上を睨んでいるけど、料理のことになったら兄上も一歩も引かんのやなあ。
「ほな、ここにあちらの料理も並べてみるか、と言いたいとこやけど、すまんがよう知らん者が作った料理を口にする気にはなれんくてな。もったいないから、使用人たちで食べてくれ。それと、賄い用にしては上等な食材がある件はしっかり帳簿やら調べるからな。臣、協力してくれ。」
「こ、今回は客のもてなしのために多めに買うたんです!」
「その辺も調べるわ。」
父上……壱鷹さまが軽く言うて、料理長は大広間へ慌てて逃げていった。
料理長が控えの間に入ってきた。立ったままはよくないと気付いたんやろう、腰を下ろしてきょろきょろと辺りを見渡す。こちらは、上座も下座もなく好きなように座って好きなように食べているから、誰に声をかけたらええのか分からんかったんかもしれん。城主の顔も知らんかったりして。……まさかな。
「何で、賄いを食べていらっしゃるんですか?」
部屋の全体に話しかけている。ほんまに、城主の顔知らんのか。
「賄い?お前は何を言うとる?この料理は、緋色殿下がお連れしてくれはった料理人に正式に依頼して作って貰ったもんやぞ。良い食材を渡してくれたことには感謝しとるけど、あほなこと言うたらあかん。」
「緋色殿下の……。いや、でも、こちらの作っとるもんのお品書きを見せろやの、出来たもんを見せろやの言うて、ちらと見たら賄い用の厨房に籠ってしもて、てっきりお連れの方の分を作らはるんやと……。」
壱鷹さまが箸を置いて料理長にしっかりと向き合う。料理長は、兄上の方を見てぶつぶつと言った。
「賄い用にしては上等なもんを置いてあって助かったけど、成人くんがもりもり食べられるお肉が、この人数分あるておかしいで。かなり高いやろ?城主とその家族くらいにしか使わへんようなお肉を、なんで賄い用の冷蔵庫に入れてあるん?野菜やらも、余り物には見えへんかった。」
兄上が、兄上にしては鋭い声を上げる。……どうしても柔らかさは消えてないけど。
「え?は?成人くん?が食べられるお肉?」
「知らんの?もてなす相手の名前も、必要な配慮も知らんと作ってたん?」
「緋色殿下に、好まれないものは無いとご連絡を頂いております。せやから、上等な食材で上等な味のもんを作っとります。」
「緋色殿下は、甘すぎるもんや匂いのきつすぎるもんは好まれへんよ!殿下の伴侶の成人くんは、顎の噛む力が弱くて飲み込むのが苦手やから、かたいもんや大きいもんは食べられへん。味が濃いすぎるのもあかん。熱くて冷めないもんもあかん。もともとの情報がどうやったかて、当人たちが来られたら家臣の方にでもうちにでも聞いたら分かることやろ?あんたは、聞きにも来んかった。うちが教えようとしても、聞く耳持たへんかった。上等な食材で上等な味のもんを作ったかて、食べられへんかったらそれはご馳走ちゃう。」
「見ても食べてもおらんのに……。」
料理長が怖い顔で兄上を睨んでいるけど、料理のことになったら兄上も一歩も引かんのやなあ。
「ほな、ここにあちらの料理も並べてみるか、と言いたいとこやけど、すまんがよう知らん者が作った料理を口にする気にはなれんくてな。もったいないから、使用人たちで食べてくれ。それと、賄い用にしては上等な食材がある件はしっかり帳簿やら調べるからな。臣、協力してくれ。」
「こ、今回は客のもてなしのために多めに買うたんです!」
「その辺も調べるわ。」
父上……壱鷹さまが軽く言うて、料理長は大広間へ慌てて逃げていった。
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