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第五章 それは日々の話
119 相談 成人
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青葉と手を繋いで階段を上り、俺と緋色の広い部屋に入る。勉強をするのはいつも、俺の部屋として本棚で間仕切りがしてある場所。ソファもあるし、座卓もある。ふかふかの絨毯が敷いてあって、床にも座れる大好きな大事な場所。床に座ってるときも、もたれ掛かれるように、大きなビーズクッションも置いてある。赤璃さまにもらった大きなくまのぬいぐるみは、夜はベッドにいて、昼間の今はソファに座っている。
「よろしくお願いします」
「はい、よろしく」
勉強に入るときの合図で礼をすると、気が引き締まる。これはすごくいい習慣だと思う。学校では皆、当たり前にすることらしい。
「なるちゃん、絵を描きたいんだって?」
「うん。俺、描いたこと無かった」
「そうだね。文字が書けないと不便だからと、急ぎ足で文字や文章の練習ばかりしていたね。私の失敗だ。もっとゆっくり楽しまなくちゃいけなかった。ごめんよ」
青葉が謝ることなんて何もない。俺には多分、あまり時間が無くて、知ってることが少なすぎた。
俺は勉強が好き。知ってることが増えるとできることが増えるし、見たり聞いたりしていたことの意味が、今まで思ってたことと違ってきたりして、面白い。
「急に描いてみたくなっただけだから」
「そう?どんな絵が描きたくなった?」
どう、言えばいいんだろうか。
雫石母さまの話は、内緒よって言われてない。言われてないから話しても大丈夫?
「母の……絵?」
「そう。母の絵かあ」
青葉は、俺が考えてるときに口を挟まない。どんなに長い時間でも、ずっと待っててくれるから好き。今、何を考えてる?とかって横から言われると、言われた言葉に気を取られて、考えてることが分からなくなることがあるから。
生まれてからずっと、言われたことを忠実にやるだけだった俺は、考えることが下手くそなのかもしれない。でも、戦場に出てからは生き残るために、考えて考えて考えた。必死で生きようとしていたのは何故なのか。壊れてしまったのかと思うくらい考えていた。一人で、ずっと。
「母さまが、緋色からの贈り物が初めてで嬉しいって言って」
「うん」
「母の絵を破ってから、緋色が母の絵もくれなくなったって」
「ああ……。うん……」
「母さまの顔じゃ無かったって」
「……緋色殿下は絵がとてもお上手でね。子ども独特の拙い絵なら、上手く描けなかった皇妃殿下ですよ、と誤魔化せたものを、ねえ。あれでは……」
そう!緋色は絵がとても上手だ。
俺は、昨日描いてもらった母さまの絵を青葉に見せた。
「あら。あら、まあ……」
まじまじとそれを見て、青葉が何か言いかけて止まった。
しばらく黙ってそれを見ていた後で、ふ、と息を吐き出す。
「描けたじゃないの」
「これを見本にしろって」
「いいお手本だ。いいんじゃないか?なるちゃんは、皇妃殿下の絵を描くつもりだったんだろう?」
「んー。でも、これをあげたらいいから、俺はもう描かなくていいんだ」
「そんなことない。なるちゃんも描いて差し上げたら、皇妃殿下はお喜びになると思うよ」
んーん、違うの。聞きたかったのは、絵の描き方じゃない。
「俺の描いた絵を消して、緋色の絵だけ渡したい。どうしたらいい?」
「よろしくお願いします」
「はい、よろしく」
勉強に入るときの合図で礼をすると、気が引き締まる。これはすごくいい習慣だと思う。学校では皆、当たり前にすることらしい。
「なるちゃん、絵を描きたいんだって?」
「うん。俺、描いたこと無かった」
「そうだね。文字が書けないと不便だからと、急ぎ足で文字や文章の練習ばかりしていたね。私の失敗だ。もっとゆっくり楽しまなくちゃいけなかった。ごめんよ」
青葉が謝ることなんて何もない。俺には多分、あまり時間が無くて、知ってることが少なすぎた。
俺は勉強が好き。知ってることが増えるとできることが増えるし、見たり聞いたりしていたことの意味が、今まで思ってたことと違ってきたりして、面白い。
「急に描いてみたくなっただけだから」
「そう?どんな絵が描きたくなった?」
どう、言えばいいんだろうか。
雫石母さまの話は、内緒よって言われてない。言われてないから話しても大丈夫?
「母の……絵?」
「そう。母の絵かあ」
青葉は、俺が考えてるときに口を挟まない。どんなに長い時間でも、ずっと待っててくれるから好き。今、何を考えてる?とかって横から言われると、言われた言葉に気を取られて、考えてることが分からなくなることがあるから。
生まれてからずっと、言われたことを忠実にやるだけだった俺は、考えることが下手くそなのかもしれない。でも、戦場に出てからは生き残るために、考えて考えて考えた。必死で生きようとしていたのは何故なのか。壊れてしまったのかと思うくらい考えていた。一人で、ずっと。
「母さまが、緋色からの贈り物が初めてで嬉しいって言って」
「うん」
「母の絵を破ってから、緋色が母の絵もくれなくなったって」
「ああ……。うん……」
「母さまの顔じゃ無かったって」
「……緋色殿下は絵がとてもお上手でね。子ども独特の拙い絵なら、上手く描けなかった皇妃殿下ですよ、と誤魔化せたものを、ねえ。あれでは……」
そう!緋色は絵がとても上手だ。
俺は、昨日描いてもらった母さまの絵を青葉に見せた。
「あら。あら、まあ……」
まじまじとそれを見て、青葉が何か言いかけて止まった。
しばらく黙ってそれを見ていた後で、ふ、と息を吐き出す。
「描けたじゃないの」
「これを見本にしろって」
「いいお手本だ。いいんじゃないか?なるちゃんは、皇妃殿下の絵を描くつもりだったんだろう?」
「んー。でも、これをあげたらいいから、俺はもう描かなくていいんだ」
「そんなことない。なるちゃんも描いて差し上げたら、皇妃殿下はお喜びになると思うよ」
んーん、違うの。聞きたかったのは、絵の描き方じゃない。
「俺の描いた絵を消して、緋色の絵だけ渡したい。どうしたらいい?」
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