【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
499 / 1,325
第五章 それは日々の話

149 許可を出したのは?  成人

しおりを挟む
 今、物音に気付いたからといった様子で、じいやが扉を開ける。
 扉前にいた女の兵士二人が、白衣を着たお爺さんとそれより若い白衣の人を押さえて跪かせ、もっと若い白衣の人は自分で膝をついていた。三人の顔というか雰囲気が、何となく似ている。
 部屋の前でワゴンがひっくり返っていて、頬が赤くなった侍女さんと、侍女さんと同じ服装の女の人が二人、音も大して立てずに片付けていた。
 軍服の男の人が一人だけ様子を見に来ている。この区画に入る廊下に立っていた二人の兵士のうちの一人だ。けれど、手を出すつもりは無いようで、少し離れて立っていた。
 城の中で、この辺りは特に人が少ない。使用人とか護衛も見た目は少ない。立ち入りできる人が本当に限られているから、最小限の人員で静かに暮らせるんだそうだ。友達の乙羽おとわ力丸りきまるに、雫石しずく母さまの部屋の金魚を見せようと連れてきた後で、そのことを知った。
 二人は、俺がこちらに向かっている時から、ここ、本当に入っていいの?ってずっと言ってて、俺は何で駄目なのか分からずに首を傾げてた。母さまの侍女さんが迎えに来てくれたから、二人も黙って付いてきてくれたんだけど。
 でも、帰ってから、あそこは皇族の居住区域で、誰でも入っていいとこじゃ無いんだよって力丸りきまるが教えてくれた。許可をもらった人しか入れないんだって。
 俺は、初めてこの区域に来たときは、気が付いたら母さまの部屋で寝てた。起きた後で金魚から離れられずにいたら、いつでもおいでって言ってもらったから、廊下を進むときに立っている兵士達が敬礼して通してくれる。母さまに許可をもらったから。友達も連れていらっしゃいって母さまが言ったから、乙羽おとわ力丸りきまるも入れた。
 あれ?じゃあこの大国おおくにって人も、誰かに許可をもらってここに来てるってことじゃない?
 赤璃あかりさまは、聞いてないって言ってたから違う。それとも、治療をする医師は入れるのかな。病気の時とか、急いでるもんね。
 隣から、はあ、と赤璃あかりさまの溜め息が聞こえた。

「掃除なら自分でやってよね、朱実あけみ……」

 小さな声で呟いてから、強い目で扉の向こうを睨み付ける。俺たちはソファから動かない。

「何の騒ぎなの?」
「お休みの所、お騒がせしまして誠に申し訳ございません。大国おおくに医師がこちらまで来られたということは、殿下が緊急で手配されたのかと思い、様子を見ておりました。しかし、殿下の侍女に暴力をふるう所を見かねて、取り押さえましてございます」

 女兵士の一人が、淡々と言った。
 手配してたら、扉の前の兵士が知らない訳ない。

「私は、医師を呼んだ覚えはないわ」
「定期の検診を行うように、との指示を受けて、まかりこしましてございます」

 体を押さえられながらも、顔を上げて大国おおくにが言った。

「結構よ。妊娠は病気では無いのだから」

 にっこりと笑う赤璃あかりさまは、今日もとても綺麗で、全ての人の視線を集めて輝いていた。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...