【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

214 一番格好いい  成人

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 鉄板に火が入ったんだろう。部屋にいい匂いがし始めた。大変だ。緋色ひいろがたこ焼きを焼くんだ。絶対に見たい!

「たこ焼き?」
「焼き始めるかな?」

 隣の力丸りきまると顔を見合わせる。
 プレゼントは置かせておいてもらって、鉄板の前に移動した。後から行ったのに、一番見やすい場所が空いている。これは、誰にお礼を言ったらいいのかな。

「どした?」
「うん。えーと、ここ……」

 移動しても隣に座った力丸りきまるに上手く伝えられなくて、きょろきょろと辺りを見回してしまう。

「ああ。いいんだよ。お誕生日席だ」

 いいのか。
 そうか、いいのか。
 俺はまた、あは、と笑った。頬っぺたがひくひくと動いて疲れている。顔も、たくさん動かすと本当に疲れるんだなあ。たくさん食べた後も、あごとか疲れるし。
 疲れるってことはもしかして、鍛えられるってことか?それなら、鍛えなくちゃならないなあ。

「それに、殿下が料理するんだぜ。お誕生日じゃなくても、お前の席はここだろ?」
「そうなの?」
「そうだろ。伴侶なんだから」

 へへ、そうか。

「よく分かってんな、力丸りきまる。そんなわけだからお前、そこ避けろ。乙羽おとわと代われ」

 常陸丸ひたちまる力丸りきまるに話しながら、手早く温まった鉄板の穴に生地を流し込んでいく。緋色ひいろの前の分も一気にやって、たこもぽんぽんと放り込んだ。 
 ん?

常陸丸ひたちまる、すごい、上手」

 ちゃんと見やすい場所にやってきた乙羽おとわが、力丸りきまるがいるのと反対側の俺の横に座って手を叩いている。常陸丸ひたちまるは、嬉しそうに笑った。

「ほんとだ、上手」

 緋色ひいろは、ひっくり返す担当らしい。まだ、棒を持ってじっと待っている。下の方がじゅうじゅうと焼けてきて、緋色ひいろの手が動き始めた。
 なんだろ、どきどきする。緋色ひいろ、上手にできるかな。
 何でこんなにどきどきするのか分からずに、右手で胸の辺りの服を、きゅっと握った。
 くる、くる、くる。

「わ。緋色ひいろ、上手!」

 綺麗な丸いたこ焼きがどんどん出来上がっていく。常陸丸ひたちまるもひっくり返すのに加わって、たくさんのたこ焼きが美味しそうに丸くなった。
 すごい、すごい。

「すごいね、上手ね」

 乙羽おとわが俺の手をぎゅっと握って言った。手の力が、ほうっと抜ける。
 俺は一生懸命、うんうんと頷いた。
 緋色ひいろがお皿にたこ焼きを入れながら、こっち向いてちょっとだけ笑う。
 ああ、流石、緋色ひいろ
 たこ焼きまで、上手に焼けちゃうんだね。
 たこ焼きを焼いてる姿も格好いいなんて、もう、何をやっても一番格好いいのは間違いない。 
 俺は、すっごく嬉しくて、たこ焼きを焼く緋色ひいろを、うっとりと眺めていた。

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