【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

47 会えて良かった  成人

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 俺たちが歩いていくと、小さなベッドの側にいた侍女さんが包拳礼を取って頭を下げた。見たことない人だ。

玉乃井たまのい、ありがとう。しばらく下がっていていいわ」

 玉乃井たまのいと呼ばれた侍女さんが、はい、と返事をして顔を上げて、俺を見てびくりと体を震わせた。
 え、何?
 あ、そうか。俺は、初めて会う人にはちょっと怖い見た目だったんだっけ?左目の上に傷があって目が開いてないし、左腕が半分以上無いし。最近、そんなに反応されたこと無かったから忘れてた。お正月の集まりでも、誰も何にも言わなかった。子どもたちも普通に遊んでくれたなあ。会う前からこんなんだって知ってたのかな?んー?でも旅行中もそんなに気にならなかったんだけど。
 とりあえず、

「こんにちは」

 と、頭を下げておく。
 玉乃井たまのいはまじまじと俺を見ながら、もう一度頭を下げて壁際に下がった。
 ま、いいや。赤ちゃんにご挨拶しなきゃ。

「ああ、可愛いぃ……」

 はあ、と息を吐いた。
 小さなベッドに寝ている赤ちゃんは、とても美人だった。寝てても美人。ああ、可愛い。口の辺りが緋色ひいろに似てる。あ、朱実あけみ殿下に似てるのか。お父さんやお母さんに似ることが多いんだもんな。じゃあ、大きくなったら格好良くなるのかな。楽しみだなあ。
 赤璃あかりさまが俺を見ながらくすくす笑ってベッドの柵を下ろしてくれた。

「撫でても大丈夫よ」

 いいの?嬉しい。起きちゃわないかな?
 あああ。良い匂い。
 手を伸ばそうとして、がさがさと紙袋が音を出した。あ、お土産忘れてた。

「お預かりします」

 潜めた声が聞こえて振り向くと、いつもの侍女さんがいる。いつも通りにこにこしてて嬉しくなった。

「久しぶり」

 そっと言うと、ますますにこにこになって頷き、荷物をそっと預かってくれる。お茶、置いといてね。この侍女さんの出してくれるお茶は、一番美味しいから好き。冷まして飲みやすくして置いてくれるから好き。

「なるが来なくて朝桐あさぎりも寂しがってたのよ」

 侍女さん、朝桐あさぎりって名前なのか。俺、聞いてなかったな。何人か侍女さんがいるのに、皆侍女さんって呼んでた。皆、名前あるよね。今度からちゃんと名前聞こう。母さまのとこにいつもいる侍女さんも、名前を聞こう。
 俺がそんなことを思いながら朝桐あさぎりを見ると、朝桐あさぎりはこくこくと頷いた。
 そうなの?嬉しい。俺も会いたかった。理由は分からないけど、立ち入り禁止じゃなくなって良かったよ。
 赤ちゃんを起こさないように、皆でそっと動いて小さな声でしゃべる。そんなのも好き。大事な大事な赤ちゃん。いっぱい、ねんねしてね。
 そっと撫でたふわふわの柔らかい髪の毛は、雫石しずく母さまに似てるなって思った。
 
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