【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

85 見可と緋椀  成人

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「わあ!すごい!」

 食堂へ入った見可みかが壁の飾りを見て言ってくれたのが、すごく嬉しかった。

乙羽おとわさん、こんにちは。お招きありがとう」
緋椀ひまりさま、こんにちは。お久しぶりです」

 乙羽おとわ緋椀ひまりがご挨拶している。

乙羽おとわさんと成人なるひとが準備をしたの?」
「そうよー」
「すごいなあ。このお花も?」

 あ、それ?ちり紙で作ったお花、綺麗でしょ?

「あのね、涼乃絵すずのえさまに教えてもらって作れるようになったの。それを私がなるに教えて」
「二人とも、すごいことができるようになったんだね」
「ふふ。楽しいの」
「うん、楽しい」
「ねえ、成人なるひとさま。これなにー?」
「あ、見可みか。鉄板触ったら駄目」

 話してると、すぐに壁の飾りからたこ焼きの鉄板に興味を移した見可みかが、すごい速さで鉄板に駆け寄った。触ったら駄目って声は掛けたけど俺じゃ追い付けない、と思っていると、鉄板の近くで準備中だった村次むらつぐが素早く見可みかの腕を掴み上げた。さすが!
 緋椀ひまりもあっという間に見可みかの横まで移動していた。

見可みか

 いつも優しく話す緋椀ひまりの怖い声。

「約束は覚えているか?」
「触ってない。まだ触ってない」

 村次むらつぐに腕を掴まれたまま見可みかが必死に首を横に振る。緋椀ひまり見可みかを見下ろす様子が怖い。
 見可みか、まだって言っちゃ駄目だったんじゃないかな。今から触るつもりだったってことだよね。

「勝手にうろうろしない。勝手に物に触らない。お利口にすると約束したよな」
「はい!」

 見可みかが真面目な顔でこくこく首を縦に振る。

「玄関からすでにできていなかったよね?成人なるひとが許してくれたから大目にみたが、これ以上同じことを繰り返すなら、誕生日会が終わるまでこの家の物置部屋に居てもらいます。もちろん、一人で」

 うわあ。緋椀ひまり、こんな怖い顔できるんだ。美人が怒るととっても怖いって、前に半助はんすけが怒ったのを見た睦峯むつみねが言っていたけど、本当だ。俺はその時の怒ってる半助はんすけを見てないし、乙羽おとわが怒ってる時はちょっと可愛かったから、本当かなって思ってたけど、本当だった。

「ひ、緋椀ひまり父さま、ご、ごめんなさい。で、できます。ちゃんとできます。お、お利口します」

 見可みかがかたかた震えながらも誓いを立てた。泣いてない。見可みか強いな。

「次はありません」
「はい!」

 村次むらつぐ見可みかの腕を離して、緋椀ひまり見可みかの手をぎゅっと繋ぐ。捕まえられちゃった。
 うーん、すごかった。俺、怒られるの嫌いだからどきどきしたよ。

村次むらつぐ、うちの子がすみません」
「いいえ。緋椀ひまりさまのお子様ですか」
「ええ。この通りやんちゃで。見可みか、ご挨拶」
「はい!七条見可みかです!六歳です!」
「はじめまして、見可みかさま。一ノ瀬いちのせ村次むらつぐです。ここの料理人見習いです」

 うんうん、と頷いた見可みかは、やっぱりたこ焼きの鉄板が気になったみたい。

「これなあに?」

 と、鉄板を指差した。今度はちゃんと離れて見てる。

「たこ焼きっていう美味しい食べ物を焼くための道具です。火を入れると熱くなるから、手で触れると火傷します」
「本当にごめんなさい」

 村次むらつぐの説明をちゃんと聞いて謝った。見可みかはお話をちゃんと聞けるのに、嬉しすぎたり、何だろって思ったりすると体がぱっと動いちゃって失敗するんだよなあ。うーん。その動きが早すぎて止めるのが大変なんだな。
 食堂に人が集まってきた。
 うちは見可みかを止めれる人がいっぱいいるし、緋椀ひまりが捕まえてるからもう大丈夫だね。
 よし。
 お誕生日の人を呼びに行こう。
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