【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

135 護衛の忠言  朱実

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 突然、人が集まり出した。そう、本当に、突然としか言いようがないほど急に。なるほど。影と暮らすというのは、気配や音が少なく、なかなかに恐ろしい。とりあえず私の所へ挨拶に来て頭を下げていく者が途切れると、九条の一家がのんびりと入ってきた。利胤としたねは生まれ月であったな。以前に比べ、随分と落ち着いた顔の三郎さぶろうと共に居た力丸りきまるが、あ、と声を上げて近付いてくる。

「皇太子殿下、こんにちは」
「ああ」 

 私の返事を聞き、頭だけ下げると、各々散っていった。席に決まりもない。話したい者が居ればそちらへと進んでゆくし、そうでなければ空いている場所に勝手に腰を下ろしていく。各々が落ち着いた場所に、私に茶を出した鼓与ことと、挨拶で水瀬みなせと名乗った女が手早く茶を置いていくのが見えた。

弥壌みづちさん、その服格好いいな」

 私の近く、自らの守備範囲内で立っている弥壌みづち力丸りきまるが声をかける。

力丸りきまる、俺は仕事中だ」
「部屋の中では、いいんじゃねえの?行き帰りだけにしとかないと疲れるよ。今日、一人なんだろ?一ノ瀬がこんなにいるんだし、気を張ってても、兄上と九条のじい様に勝てるわけないし」
「お前……。あっさり言うな?」
「今はまだ無理。ちゃんと分かってることも大事だろ?」

 はあ、と弥壌みづちの溜め息が聞こえる。

「三手だった」
「ああ、あれな。見てた」
「五手はいけると思ったんだが」
「そっかー。……ま、美味しいもん食べて帰ってよ」
「俺の分もあるのか?」
「あるに決まってんだろ。成人なるひとだぞ。食うまで帰してもらえないよ、きっと」
「たこ焼きは旨い」
「好きだと思った」
「はは」

 お供は一人でもよろしいか?と言ったのは弥壌みづちだ。

武瑠たける、置いてきたの?」
「先日こちらへ来たときから、少々へこんでいたのでな」
「あー、まあ、なあ。あいつまだ若いし、実戦経験値ねえし、ここに来るのはまだ早いな」
「ははっ。先輩面しやがって。こんなとこで楽しく暮らしてるのは、鈍感なだけじゃねえの?」
「ええ?ここ暮らしやすいよ。飯は旨いし、楽しいし」

 私は、足を踏み入れた時から緊張感に溢れているぞ?
 力丸りきまる弥壌みづちと一頻り話すと離れていった。

「勝てないのか?」
「ええ。力丸りきまる相手でも何手持つか。すみません、役に立たぬ護衛で。皇太子殿下のことは、命を掛けても逃がすつもりではありますが」
「何人連れてくればいい?」

 弥壌みづちは真剣な顔で私を見た。

「この場の雰囲気に乗っかって、差し出がましいことを申します。不敬の段は、平にご容赦を。早く緋色ひいろ殿下と仲直りしてください」
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