701 / 1,325
第六章 家族と暮らす
136 歩みより 緋色
しおりを挟む
「何やってんすか?入りますよ」
食堂の前で常陸丸と乙羽に捕まる。
入りたくない。
何で、自分のうちで、こんな目に合わなきゃならんのだ。誰だ、あいつ呼んだの。……俺だな。
早くから来ていることは聞いていたから、なるべくぎりぎりまで食堂に入らずにいたが、まあいつまでもそうしている訳にはいかない。成人が主役たちを連れてくるまでに、食堂で皆が待っている状態にしておかないとな。
「緋色殿下!」
渋々、食堂へと足を踏み入れると、奥の方に陣取っていた見可が飛んでくる。あんな奥で席を取るとは珍しい。
ああ。
反対側の端の席を見て納得する。
朱実から離れて座ったのか。見可の本能的なものか?やるな。
お、しっかり止まって包拳礼をした。よくやった、と頭を撫でそうになってとどまる。折角、しっかりとした礼をしたのだ。こちらも応えねばな。
「お招き頂き、ありがとうございます」
「見可、よく来たな。礼は受けたぞ」
「はい!」
「灯可と作治も。よく来た」
「お招き頂き、ありがとうございます」
「本日もお世話になります」
「おう」
見可が目を輝かせて、こちらを見ている。そういえば、今日は。
「焼くのか?」
「はい!」
「火傷すんなよ」
「もう大丈夫です!」
もう、ってことは、練習で何度かやっちまったな。ま、誰も騒いでなかったから、大したことではないんだろう。
「楽しみにしてる」
「緋色殿下も俺の焼いたの食べますか?」
見可の焼くたこ焼きか……。
「まずは緋椀に渡せ。作治にもやるのだろう?余ったら考えよう」
うん。現物を見ないと、こいつのは怪しい。灯可なら、形になっていそうだが。
「私も焼きます」
「そうか。楽しめ」
「はい」
三人が席へ戻っていく。家の者たちには挨拶は不要と言ってあるので、挨拶が必要なのはあと、一人だけ。
「緋色」
はあ。
無視したら……。
くそ、常陸丸が範囲内にいる。ちゃんとしないと、手も口も出すやつだ、あれ。
昨夜も念押しされた。
「俺だって腹は立ってましたけどね。殿下も、知らん顔を続け過ぎですよ。あちらが何とかしようとしているのなら、こちらもそれなりに応えなきゃ」
「何とかしようとしてるのか?」
「話しかけてきたり、誕生日会に参加したいと言ったりするのは、歩みよりでしょうよ?」
「いらねえけど……」
「兄弟なんですから。どうしたって、顔を会わせるなら、どこかでちゃんと話をしなきゃ駄目じゃないっすか?」
「…………分かった」
つまり、今がその時な訳だ。
仕方なく振り向く。
「本当に来るとは思わなかったよ、朱実」
食堂の前で常陸丸と乙羽に捕まる。
入りたくない。
何で、自分のうちで、こんな目に合わなきゃならんのだ。誰だ、あいつ呼んだの。……俺だな。
早くから来ていることは聞いていたから、なるべくぎりぎりまで食堂に入らずにいたが、まあいつまでもそうしている訳にはいかない。成人が主役たちを連れてくるまでに、食堂で皆が待っている状態にしておかないとな。
「緋色殿下!」
渋々、食堂へと足を踏み入れると、奥の方に陣取っていた見可が飛んでくる。あんな奥で席を取るとは珍しい。
ああ。
反対側の端の席を見て納得する。
朱実から離れて座ったのか。見可の本能的なものか?やるな。
お、しっかり止まって包拳礼をした。よくやった、と頭を撫でそうになってとどまる。折角、しっかりとした礼をしたのだ。こちらも応えねばな。
「お招き頂き、ありがとうございます」
「見可、よく来たな。礼は受けたぞ」
「はい!」
「灯可と作治も。よく来た」
「お招き頂き、ありがとうございます」
「本日もお世話になります」
「おう」
見可が目を輝かせて、こちらを見ている。そういえば、今日は。
「焼くのか?」
「はい!」
「火傷すんなよ」
「もう大丈夫です!」
もう、ってことは、練習で何度かやっちまったな。ま、誰も騒いでなかったから、大したことではないんだろう。
「楽しみにしてる」
「緋色殿下も俺の焼いたの食べますか?」
見可の焼くたこ焼きか……。
「まずは緋椀に渡せ。作治にもやるのだろう?余ったら考えよう」
うん。現物を見ないと、こいつのは怪しい。灯可なら、形になっていそうだが。
「私も焼きます」
「そうか。楽しめ」
「はい」
三人が席へ戻っていく。家の者たちには挨拶は不要と言ってあるので、挨拶が必要なのはあと、一人だけ。
「緋色」
はあ。
無視したら……。
くそ、常陸丸が範囲内にいる。ちゃんとしないと、手も口も出すやつだ、あれ。
昨夜も念押しされた。
「俺だって腹は立ってましたけどね。殿下も、知らん顔を続け過ぎですよ。あちらが何とかしようとしているのなら、こちらもそれなりに応えなきゃ」
「何とかしようとしてるのか?」
「話しかけてきたり、誕生日会に参加したいと言ったりするのは、歩みよりでしょうよ?」
「いらねえけど……」
「兄弟なんですから。どうしたって、顔を会わせるなら、どこかでちゃんと話をしなきゃ駄目じゃないっすか?」
「…………分かった」
つまり、今がその時な訳だ。
仕方なく振り向く。
「本当に来るとは思わなかったよ、朱実」
1,228
あなたにおすすめの小説
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる