750 / 1,325
第七章 冠婚葬祭
39 喜んで貰えると嬉しい 成人
しおりを挟む
「灯可、おかえり!」
何でか分からないけれど、見つかってしまっているなら隠れててもしょうがない。
門番の人達が、おかえりなさいませ、と頭を下げて門を開けるのを、振り返りもせずに灯可は飛び込んできた。俺も、大きな声でお出迎えする。お迎えするために、ここに居たしな。うん。合ってる。
「ああ。ああ、成人さまだ。成人さまがいた。嬉しい、嬉しいです。今日はどうされたのですか!」
荒い息を吐きながら、灯可は本当に嬉しそうに笑った。一気にお話して、ますます息が苦しくなって、ぜいぜい言っている。
門を閉めるためにこちらを向いていた門番二人が、とても驚いた顔をして灯可を見ていた。
「大丈夫?」
「はあ、はあ。はい。大丈夫です。嬉しくて。今日は、約束していなかったから」
「急に来て、ごめんね。茉璃と約束してて」
「母上が?」
「うん。大事なお話」
「そうなんですね。それはもう、済まされたのですか?」
「うーん?うん。あの……」
茉璃と約束したんだけど、大事なお話は灯可と見可にするお話だから、用事はまだ終わっていない。でも、内緒なので、大事なお話は二人揃ってから言うので、言えない。
んんー。
どうしたらいい?
「灯可さま、おかえりなさいませ。まずは中へお入りになり、鞄を下ろされたら如何でしょう?」
困っていたら、じいやが横から言ってくれた。
灯可は、一回ものすごくびっくりした顔をしてから、慌てて、いつもの、なんでも無い顔に戻す。
びっくりしたよね、ごめんね。じいや、気配が無くて。意識して消されると、俺でも分かりにくい。
そういえば灯可は、一人で走って帰ってきた。見可は、友だちと帰ってきた。歩いている人は子どもだけ。近隣の家には、各家の前に門番がいて、その他に見守っている大人も立っているけど、それだけだ。学校は、護衛無しで行けるような場所なんだね。安全な場所。いいな、それ。
「ああ。すみません、成人さま。落ち着きが足りませんでした。ただいま帰りました。お迎え頂き、ありがとうございます」
落ち着きなんて、足りなくていいのに。俺がいて嬉しいって言って貰えて、俺も嬉しかった!
「え、と。おかえり、灯可。待ってた」
「はい。待ってて頂いて、嬉しいです。車が見えたから、もしかして、と思ったらもう、すっかり足が早くなってしまって」
家の中へ入りながら、灯可がお話してくれる。
「車?」
「はい。我が家の来客用の駐車場があるのです。そちらに車が停まっていて、ああ、お客様がいらしているのか、と見てみたら、お車に緋色殿下の御紋が見えたので」
俺の乗ってきた車に、そんな印が?知らなかった。え?俺がお出かけで使う車には、緋色の紋が付いてるの?
「殿下は、とても小さく目立たぬように付けられるのですが、それの位置を私は知っていたので」
「へええ」
灯可は相変わらず、小さいのに色々知ってて凄い。
俺、知らなかったよ。
後で、どこに付いてるか教えてね。
何でか分からないけれど、見つかってしまっているなら隠れててもしょうがない。
門番の人達が、おかえりなさいませ、と頭を下げて門を開けるのを、振り返りもせずに灯可は飛び込んできた。俺も、大きな声でお出迎えする。お迎えするために、ここに居たしな。うん。合ってる。
「ああ。ああ、成人さまだ。成人さまがいた。嬉しい、嬉しいです。今日はどうされたのですか!」
荒い息を吐きながら、灯可は本当に嬉しそうに笑った。一気にお話して、ますます息が苦しくなって、ぜいぜい言っている。
門を閉めるためにこちらを向いていた門番二人が、とても驚いた顔をして灯可を見ていた。
「大丈夫?」
「はあ、はあ。はい。大丈夫です。嬉しくて。今日は、約束していなかったから」
「急に来て、ごめんね。茉璃と約束してて」
「母上が?」
「うん。大事なお話」
「そうなんですね。それはもう、済まされたのですか?」
「うーん?うん。あの……」
茉璃と約束したんだけど、大事なお話は灯可と見可にするお話だから、用事はまだ終わっていない。でも、内緒なので、大事なお話は二人揃ってから言うので、言えない。
んんー。
どうしたらいい?
「灯可さま、おかえりなさいませ。まずは中へお入りになり、鞄を下ろされたら如何でしょう?」
困っていたら、じいやが横から言ってくれた。
灯可は、一回ものすごくびっくりした顔をしてから、慌てて、いつもの、なんでも無い顔に戻す。
びっくりしたよね、ごめんね。じいや、気配が無くて。意識して消されると、俺でも分かりにくい。
そういえば灯可は、一人で走って帰ってきた。見可は、友だちと帰ってきた。歩いている人は子どもだけ。近隣の家には、各家の前に門番がいて、その他に見守っている大人も立っているけど、それだけだ。学校は、護衛無しで行けるような場所なんだね。安全な場所。いいな、それ。
「ああ。すみません、成人さま。落ち着きが足りませんでした。ただいま帰りました。お迎え頂き、ありがとうございます」
落ち着きなんて、足りなくていいのに。俺がいて嬉しいって言って貰えて、俺も嬉しかった!
「え、と。おかえり、灯可。待ってた」
「はい。待ってて頂いて、嬉しいです。車が見えたから、もしかして、と思ったらもう、すっかり足が早くなってしまって」
家の中へ入りながら、灯可がお話してくれる。
「車?」
「はい。我が家の来客用の駐車場があるのです。そちらに車が停まっていて、ああ、お客様がいらしているのか、と見てみたら、お車に緋色殿下の御紋が見えたので」
俺の乗ってきた車に、そんな印が?知らなかった。え?俺がお出かけで使う車には、緋色の紋が付いてるの?
「殿下は、とても小さく目立たぬように付けられるのですが、それの位置を私は知っていたので」
「へええ」
灯可は相変わらず、小さいのに色々知ってて凄い。
俺、知らなかったよ。
後で、どこに付いてるか教えてね。
1,262
あなたにおすすめの小説
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【完結】君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる