【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

63 侍女と俺の災難  弐角

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 包拳礼を解き、勧められるままに座卓を挟んで殿下たちの向かいの座布団に腰を下ろす。俺らが座ったのを確認して、殿下の斜め後ろに静かに立っていた常陸丸ひたちまるも、殿下の隣に腰を下ろした。一ノ瀬のじい様も珍しく、殿下を挟んで常陸丸ひたちまると反対側の座布団に座る。
 おみと半助が厨房から、茶を持って戻ってきた。隣で橙々だいだいが、はっと息を飲むのが聞こえたが、膝を軽く叩いて合図をすれば賢く口を閉じた。

「お手伝い致します」

 橙々だいだいの侍女のしまが慌てて立ち上がり、おみへ申し出る。

「ええよ、ええよ。座っとき」

 おみの言葉にしまは、はたとその顔を確認し、あ、と口を開いて固まった。
 今日はしまは、色々と災難なことやで。後でよう労ってやろ、と思いながら口を開く。

おみ、ありがとう。しま、ええから座っとき」
「は、はは」

 しまは小さくなって、机から離れた後ろに控えた。
 その近くで、おろおろしていた椿つばきおみを見て驚き、口を開きかけた所を才蔵さいぞうに押さえられて腰を下ろす。半助が小さな座卓を運んできて、三人の前に置いた。

「半助さま、ありがとうございます」

 才蔵が静かに頭を下げている間に、俺らの前に茶が並ぶ。

「いちおみ、さま」
「はい。よろしく」

 橙々だいだいの呟きに、にこにことしたおみが返事をした。

「ほんまに、そっくり……」

 橙々だいだいがぽつりとこぼす頃にはおみは、後ろの座卓にも茶を出している。恐縮する三人を気にした様子もなく、全員に茶を出してから、俺の隣に座った。もちろんその横に半助。当たり前の顔で、静かに腰を下ろす。俺とおみより、半助とおみの方が近いな、とふと思う。俺と橙々だいだいよりも近い。羨ましいことや。……おみが、幸せそうで良かった。

「遅かったな」

 緋色ひいろ殿下が、成人なるひとさまに話しかけとる。面白がっている口調やから、大体のことは把握しとるんやろう。成人なるひとさまと話したいだけならええけど、あれは、俺をからかって遊ぼうと思うとる顔や。

「うーん?橙々だいだいは、弐角にかくがあいびきしてたから、怒ってたんだって」
「ぶはっ。逢い引き」

 やっぱりや。やっぱり面白がっとる。そんなことやと思たんや。

「誤解やってちゃんと……」
「あいびきって何?」

 説明しようとする俺の耳に、成人なるひとさまの言葉が聞こえてきて、盛大にずっこけそうになった。
 知らんかったんかい!
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