【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

75 まあ、そういうこと  成人

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「あら。どちら様?」

 じいやに促されて入ってきた椿つばきを見て、乙羽おとわが言った。常陸丸ひたちまるを背中にくっつけたままだ。

椿つばき九鬼くきから連れてきた」

 俺が紹介すると、椿つばきに向かってにっこり笑う。今日も美人!

「はじめまして。泉門院せんもんいん乙羽おとわと申します。緋色ひいろ殿下が留守の際は、こちらの城を預かっております」

 椿つばき乙羽おとわをまじまじと見て、大きく目を見開いた。それから、じいやに背中を叩かれ背筋を伸ばす。

六車むぐるま椿つばきでございます。あの、お世話になります」
「んん?」
「ああ、うちの下働きとして預かることになった。後を頼む」
「下働き?六車むぐるまを?」
「名字なぞ、今、初めて聞いた」
「殿下。また、いい加減なことを」
弐角にかくの許可は得ている。構わんだろ」
弐角にかくさまの許可を得ているのなら、まあ宜しいのですけれど……。あなたも、ご納得の上で?」
「は、いえ、あの、はい……」
「家の案内をしてやってくれ。部屋は適当に」
「適当!そんな馬鹿な!」
「あるだろ、部屋は」
「ありますけど」
「じゃあ、問題ない」
「何日預かるんです?」
「特に決めてはないな」
「あ、呆れた……。あなた、そんな適当なことでこちらへ来て良かったの?」
「…………」
「仕方あるまい。本人が護衛の仕事がしたいと言うのに、とんでもなく弱いんだ。うちで少し心身ともに鍛えてやろうと思ってな」
「よ、弱……」
「じゃあ、自分でやってくださいってんですよ。俺は乙羽おとわと一旦、部屋へ入りたい」
「……まあ、そうか」

 そうね。部屋に入らないと、ちゅーできないもんね。人前で、口にちゅーはしないものだからね。

「俺が案内するー。常陸丸ひたちまる乙羽おとわは、お部屋に行っていいよ。壱臣いちおみ半助はんすけもいいよ」
「では、お言葉に甘えて」

 常陸丸ひたちまるは、あっという間に乙羽おとわを抱いて二階に消えた。速いね……。

「ありがとうございます。お言葉に甘えます」

 半助はんすけも、壱臣いちおみの背中を押して階段を上がる。

「皆さま、おかえりなさいませ。旅の洗濯物は、朝までに出してください」

 いつの間にか居た水瀬みなせが、階段に向かって声を上げる。
 椿つばきが目を数回、ぱちぱちとした。
 どうかした?

「はいよ」
「了解です」
「出しますー」

 水瀬みなせへのお返事が、ちゃんと三つ聞こえた。俺も、荷物の片付けしないとなあ。

椿つばきは、これから暮らす部屋へ私が案内します。緋色ひいろ殿下と成人なるひとさまは、しばしお部屋でお寛ぎくださいませ」
「うん」
「任せた。残業代は出す」
「喜んで頂きます」

 椿つばきはずっと、目を見開いたり、ぱちぱちしたりして落ち着かない様子だった。

 
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