【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

162 黄色いものは美味しい  成人

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「あ!だし巻き玉子だ」

 やっと肉団子を食べ終えて、噛むのに疲れたから豚汁を飲んでいた。母さまから返ってきた豚汁は、いい感じのあったかさだ。母さまには、いなり寿司をあげることにした。
 母さまは、

「これも成人なるひとちゃんのお勧め?ありがとう」

 と、笑って半分かじってくれた。
 お盆の上にお皿やお椀をいくつも乗せた緋色ひいろと父さまが帰ってきて、机の上にお皿を並べていく。空になったお皿は、お水のコップを持ってきてくれた使用人が片付けて行ってくれたので、またたくさん並べられた。
 お願いした時だけ手伝って、と言ってあるから、使用人たちは呼ばないと来ない。すぐ近くにいるから、緋見呼ひみこさまみたいにお願いしたらいいんだけど、普段やっていないと思いつかないよね。後で、朝桐あさぎりにお茶だけお願いしよう。朝桐あさぎりの淹れてくれるお茶は美味しい。

「だし巻き玉子食べる」
「おう」

 緋色ひいろが、俺と母さまの前にだし巻き玉子を置いた。今日も黄色くて綺麗。美味しそう。

壱臣いちおみ作ったの?」

 俺たちと同じように衣装を着て結婚式してたけど、いつ作ったんだろ?

「いや。村次むらつぐが作ったらしい」
「おお」

 すごい。壱臣いちおみが作るだし巻き玉子と同じに見える。どこも茶色になってなくて、ふわふわとやわらかそう。
 
「これは、緋色ひいろさんのお勧め?」
「美味しいよ」

 俺はうんうんと頷いたけど、緋色ひいろはふいと横を向いた。

「気になるものを食べたらいい」

 湯気の立っている豚汁のお椀を母さまの前に置いて、他に取ってきたおかずのお皿も母さまの周りに並べていく。魚や野菜の煮物や、さっき取ってきて全部食べちゃった天ぷら。あ、俺、唐揚げ食べたいなあ、鶏の唐揚げ。緋色ひいろが自分の前に置いている大きいの。

「だし巻き玉子。珍しい食べ物ね。綺麗ね」

 綺麗だよね。黄色くて、ふわふわで。黄色いものは美味しいんだよ。

村次むらつぐ、上手になった」
「そうなの」

 練習してるところを見たことがある。

「茶色くなったり、やわらかくて形が崩れたりしてた。ちょっとかたいときもあった」
「まあ。難しいものなのね」
壱臣いちおみ広末ひろすえは茶色にならない」
「その二人はすごいのね」
「すごい」

 あ、でも、もう村次むらつぐのだし巻き玉子も茶色くない。

村次むらつぐもすごい」
「そうね」

 こんなにたくさん、料理人の皆で作ってくれたんだなあ。すごいなあ。嬉しいなあ。
 たくさんの料理が並んでいて、好きなものを好きなだけ取って食べられるなんて、すごいよね。すごく特別な感じがする。特別な日が、もっと特別になるみたい。また、何か特別なことがある日にこれやろう。皆で集まってやろう!

「唐揚げはやめとけ」

 嬉しくてにこにこして鶏の唐揚げに伸ばした手は、緋色ひいろに止められて、鶏の唐揚げはかぼちゃの煮物と交換された。
 もう噛めると思うんだけど。肉団子も一つ食べれたし。
 かぼちゃと唐揚げ、色しか似てない。……美味しいけど。
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