【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

34 選ぶ人は決まってる  成人

末良すえよし亀吉かめきちだよ。亀吉かめきち末良すえよしだよ」

 二人とも俺から離れないから、しゃがんでしがみつかれたままで、前と後ろを見て紹介する。

「かめきち」
末良すえよし亀吉かめきちさまとおっしゃい。ご挨拶は?」
「かめきちしゃま。こんちは」

 お。末良すえよし斑鹿乃むらかのの言うこと聞いた。

「なりゅひとしゃまは、すえーしの。かめきちしゃまは、めっ」

 ん?
 あ、末良すえよしの手が、亀吉かめきちが俺の服を掴んでいた手を掴んでぺいっと投げた。末良すえよしの手は、すぐに俺の服に戻ってくる。

「なーひとでんかは、かめの」

 んん?
 あ、亀吉かめきちの手が末良すえよしの手を狙ってる。しがみつかれてたら、片手しかない俺には止めるのが難しい。
 末良すえよしの手は斑鹿乃むらかのに掴まれて、やーって言いながら俺から離された。

灯可とうか

 呼べば、亀吉かめきちについてきてくれた灯可とうかが、亀吉かめきちの手をそっと掴んで止めてくれた。俺から離して、亀吉かめきちと向き合う。亀吉かめきちのお世話をしてる香月かづきも近くにいたんだけど、俺にしがみついている亀吉かめきちに近付けないみたいだったから、灯可とうかにお願いしたんだ。

亀吉かめきち成人なるひとさまは亀吉かめきちのでも末良すえよしのでもないよ」

 灯可とうか亀吉かめきちに言う。
 あ、うん。俺は皆と仲良くしたいけど、誰か一人一番大事な人を選べって言われたら、選ぶ人は決まっている。

「とーかにーさまの?」
「そうだと嬉しいけれど、もちろん違う」

 その時、階段から緋色ひいろが降りてきた。皆で出かけてしてきた朝の鍛錬がかなりきつかったみたいで、疲れた、疲れたとずっと言っていた緋色ひいろは、昼ご飯の後は、部屋でだらだらしてたんだ。様子を見に行ったら捕まりそうだったから、慌てて逃げてきた。俺は今日は、一緒にだらだらしてる時間はなかったからさ。

斑鹿乃むらかの、ちび、よく来たな」
緋色ひいろ殿下。お招き頂き、ありがとうございます」

 斑鹿乃むらかの末良すえよしを抱えたまま、頭を下げる。

「元気な声が聞こえていたぞ。嫌だーってな」

 緋色ひいろ、笑ってる。疲れは取れたかな。

「もう本当に、最近は、嫌だ嫌だばっかりで」
「やっぱりそうなりますか」

 あ、緋色ひいろも来たからと慌てた香月かづき松吉まつきちを呼んできた。
 え?と顔を上げた斑鹿乃むらかのに、松吉まつきちがすっと頭を下げる。

「この亀吉かめきちの母です。各務かがみ松吉まつきちと申します。うちの息子が何ぞ悪いことしとらんかったやろか?」
「ご丁寧なご挨拶、ありがとうございます。錫ヶ瀬すずがせ斑鹿乃むらかのと申します。こちらの料理長の妻です。悪いことなんてとんでもない。悪いことしたのはうちの子です。うちの息子がご子息のお手を掴んで投げておりました。お止めできず、申し訳ございません」
「手を掴んで投げた? そんだけ? なんや、そんなん可愛いもんや」

 松吉まつきちが笑う。

「料理長に、同じくらいの年のご子息がおると聞いてお会いするのを楽しみにしておったんや。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」

 お母さん達は、あっという間に仲良くなったみたい。灯可とうか亀吉かめきちも、仲良くなってる。
 末良すえよし亀吉かめきちは、いつ仲良くなるかなあ。
 
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