【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

121 ありがとう  成人

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 たい焼きのお腹や頭は、緋色ひいろに抱っこされて商店街を移動しながら、ひと口ずつかじった。美味しかったけど、大きかった。全部食べたらお昼ご飯が入らなくなることは、言われなくても分かったくらい大きかった。俺のお腹は、入る量が少ないからね。まだ。
 そういうのが分かるようになるのも、大人になるってことなんだって誰かが言ってた。広末ひろすえだったっけ? 生松いくまつだったかな? 二人とも、だったかも。何でもね、自分で、このくらいが丁度いいってことが分かるようになるのが大人。だから、もっと食べたいなって思ってもちゃんと体に聞いて、後のことも考えて食べる。昼寝もそう。大人でも、疲れた時や眠たい時は寝た方がいい。俺は大人だから、末良すえよし亀吉かめきちみたいに、本当は眠たいのに、ねんねないって言わないんだ。眠たくないときに、寝ろって言われると、眠たくないって言うけど。
 かじる場所は悩んだ。あちこちかじると魚がかわいそうな姿になる。残りを置いておくのも誰かにあげるのも、かわいそうな姿ではかわいそうかなって。でも、かじる場所で色んな味わいだって言われたら、いろんな場所をかじりたくてさ。力丸りきまるが、残りは俺が食べてやるって言ってくれたから、安心して好きなようにかじった。ありがと、力丸。俺の親友が、たくさん食べれるお腹を持ってて良かったよ。
 かりかりのしっぽは、あんこがあまり入ってなくて、でも皮の味がよく分かって美味しかった。あんこがいつまでも熱くて、たくさんふーふーして食べたまん丸のお腹は、皮も何だかふわふわな感じがした。甘くて美味しかった。頭は、かりかりのとこもあってふわふわのとこもあって、あんこも半分入ってて丁度よかった。美味しかった。

「全部、美味しいんじゃん」

 俺が一口かじる度に、どうだ? って力丸が聞く。もぐもぐしながら色々考えて、でも口に入ってるからたくさんしゃべれなくて、とりあえず全部に美味しいって言ってたら、力丸は最後にはけらけら笑った。周りを警戒しながら歩いて、俺ともしゃべって、器用だなあ、力丸は。
 今は、お昼ご飯をゆっくり食べれそうな個室のある店を探して歩いている。相変わらずあちらこちらから声がかかって、人が減る気配もなかった。
 この商店街は人が多すぎだから、俺があんこを冷ますまで待てなかったんだ。もともと、全然知らない場所な上に人が多いから、守るのが大変。でも今、すごく楽しいよ。
 常陸丸ひたちまる力丸りきまるもじいじも、笑いながら俺と緋色ひいろの側にいてくれる。
 俺や緋色ひいろが楽しいようにデートさせてくれて、ありがとう。
 こういう時は、ごめんねじゃなく、ありがとうっていうのがいい。いつもありがとう。
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