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第十章 されど幸せな日々
17 変わらない景色 成人
バスはどんどん走っていく。賑わっていた辺りを過ぎると、途端に建物の数が少なくなった。人の姿も少なくなっていく。畑や山が見え始めて、西賀国に向かっているんだな、って感じがした。今日は曇りだから、午前なのに外は明るくない。雨が降りそうで降らない天気。そんな天気だから、頭が痛くならないようにって、睦峯に薬をもらって飲んできた。薬はよく効いている。俺は今日も元気。
元気なんだけど、緋色に右手を握られながら外を眺めていたら眠たくなってきた。車って、乗っていると眠たくなることが多い。揺れ具合がちょうどいいんだろうか。車の中を温めてくれている暖房がちょうどいいんだろうか。走っている音とかも、眠くなるのにちょうどいい音なのかもしれない。
荷台に乗っていた頃も、そこで休息を取っていたな。暑かったり寒かったり、揺れはもっと激しくて眠くなるような環境ではなかったけれど、移動中だけは何も考えずに座っていられた。
だから、車で移動するのは嫌いじゃないんだ、きっと。
数少ない休息の時間が、そこにあったから。
「眠いなら寝ていろ」
緋色が手を伸ばして、俺の頭を自分にもたれさせた。
幸せな時間にぼんやりしかけて、はっと気付く。
運転してる人は眠くなったりしないのかな? 乗っていたら同じように揺れを感じたりするんだから、運転手だって眠いかもしれない。そういえば、長い距離を運転する時に常陸丸と力丸が運転を交代しているのを見たことがある。あれはもしかして、眠くなった時だったのかもしれないな。今日は交代する人がいないけれど、大丈夫だろうか。じいじも運転できるんだったっけ?
さっき、力丸も一人で運転して皇国に帰って行ったな。大丈夫だったかな。
やっぱり、力丸は俺たちの側にいてくれた方がいい。
「本当に……?」
「なんじゃ?」
「本当に、出るんか……」
元真中の呟く声が聞こえた。
「やっと理解したか?」
「わしがおらん、西中国、など……」
「それはもう何度も聞いた」
ふふ。何回も繰り返された話だったみたいだ。じいじがすぐに遮った。元真中は大きな子どもだから、何回も同じことを言うのかもしれない。覚えるまで、何回も。
「よいか。お主がおらんでも、西中国は存在しとるし存続しとる。大きな混乱も起こっとらんことは、たった今見てきた通りじゃ。城も、街も村も、何も変わりなかったであろう? お主が、国の元の姿を知らねば、その事も知りようは無いわけじゃが」
「なんで……? なんで、混乱もない……?」
「お主のしていた仕事は、他の者でもできる仕事だったようじゃな」
「……」
城も、街も村も混乱はなかった。窓から見える景色は、俺たちが西賀国から来た時と変わりなかった。
元真中たちがいなくなっても、何も変わらない。
それが、バスの窓からはっきり見えた。
混乱がなくて良かった。でも、自分が居てもいなくても何も変わらないって分かるのは、ちょっと寂しいことかもしれない。
元気なんだけど、緋色に右手を握られながら外を眺めていたら眠たくなってきた。車って、乗っていると眠たくなることが多い。揺れ具合がちょうどいいんだろうか。車の中を温めてくれている暖房がちょうどいいんだろうか。走っている音とかも、眠くなるのにちょうどいい音なのかもしれない。
荷台に乗っていた頃も、そこで休息を取っていたな。暑かったり寒かったり、揺れはもっと激しくて眠くなるような環境ではなかったけれど、移動中だけは何も考えずに座っていられた。
だから、車で移動するのは嫌いじゃないんだ、きっと。
数少ない休息の時間が、そこにあったから。
「眠いなら寝ていろ」
緋色が手を伸ばして、俺の頭を自分にもたれさせた。
幸せな時間にぼんやりしかけて、はっと気付く。
運転してる人は眠くなったりしないのかな? 乗っていたら同じように揺れを感じたりするんだから、運転手だって眠いかもしれない。そういえば、長い距離を運転する時に常陸丸と力丸が運転を交代しているのを見たことがある。あれはもしかして、眠くなった時だったのかもしれないな。今日は交代する人がいないけれど、大丈夫だろうか。じいじも運転できるんだったっけ?
さっき、力丸も一人で運転して皇国に帰って行ったな。大丈夫だったかな。
やっぱり、力丸は俺たちの側にいてくれた方がいい。
「本当に……?」
「なんじゃ?」
「本当に、出るんか……」
元真中の呟く声が聞こえた。
「やっと理解したか?」
「わしがおらん、西中国、など……」
「それはもう何度も聞いた」
ふふ。何回も繰り返された話だったみたいだ。じいじがすぐに遮った。元真中は大きな子どもだから、何回も同じことを言うのかもしれない。覚えるまで、何回も。
「よいか。お主がおらんでも、西中国は存在しとるし存続しとる。大きな混乱も起こっとらんことは、たった今見てきた通りじゃ。城も、街も村も、何も変わりなかったであろう? お主が、国の元の姿を知らねば、その事も知りようは無いわけじゃが」
「なんで……? なんで、混乱もない……?」
「お主のしていた仕事は、他の者でもできる仕事だったようじゃな」
「……」
城も、街も村も混乱はなかった。窓から見える景色は、俺たちが西賀国から来た時と変わりなかった。
元真中たちがいなくなっても、何も変わらない。
それが、バスの窓からはっきり見えた。
混乱がなくて良かった。でも、自分が居てもいなくても何も変わらないって分かるのは、ちょっと寂しいことかもしれない。
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