【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
1,233 / 1,325
第十章 されど幸せな日々

24 答えが出ない  成人 

しおりを挟む
「こら、さく

 ぱん、とじいじがトラックから連れてきた中の一人がさくの頭を叩いた。

「すいません。うちの弟が失礼を」

 そのまま、さくの頭を押さえて下げさせながら謝っている。別に失礼じゃないよ。さくは、しっかり挨拶を終えたから。挨拶がちゃんとできたら花丸。
 俺は、いいよいいよ、って右手を振った。最初にちゃんとしてくれたら、それでいい。
 最近、いつまでもちゃんと挨拶ができるようにならない元真中を見ていたから、ちゃんとした挨拶ができるのってすごいことなんだな、って分かったし。
 いや、もう、ほんとに。習った通りにやればいいのにできないの、なんでなのかな。本当に意味が分からないよね。
 ん? 弟?

千寿せんじゅさま付きの戸次とつぎぼうと申します。よろしくお願い致します」

 ぼうは、さくの頭から手を離して包拳礼をした。
 ほら。ぼうもちゃんとできる。

成人なるひと緋色ひいろです。よろしく」

 俺は、また右手をひらひらさせて言った。緋色ひいろは、俺の背中にくっついたままだ。

「そやかて、姉上。可愛いんは誰かて言われたら」

 さくのひそひそ声。姉上か。千寿せんじゅ寿々丸すずまると一緒だな。

「うるさい、さく。言わんでも分かっとる。でもな、こういうのは結局、答えなんて出えへん話なんよ」

 ぼうは、さくが何か言いかけたのを声を潜めて止めた。声を潜めてても、近いから聞こえちゃったけどね。
 そっか。答え出ないのか。

「一番可愛いなんて、亀吉かめきちちゃんやんなー」

 寿々丸すずまるが、ぼそって言ったのも聞こえてくる。

「ほんまや」

 千寿せんじゅも小さな声で頷いて、確かにって俺も思う。あ、でも。

亀吉かめきちも可愛いけど末良すえよしも可愛いよ?」
「「末良すえよし?」」

 ふふ。内緒話じゃなくなっちゃった。

「うん。亀吉かめきちと仲良し」
「え? 亀吉かめきちちゃんのお友達ですか? 何歳ですか?」

 千寿せんじゅが目をきらきらさせながら言った。

「二歳。俺も仲良し」
「へえ。亀吉ちゃんとおんなじくらいかあ。ええなあ。小さい子が二人でおったら可愛いやろなあ」
「うん。可愛い」

 そうだ。一番可愛いってのは、あの二人のことだよ。間違いない。
 ぼう、答え出たよ。
 ぼうに言おうとしたけど、ちょっと待てよ?
 二人だと、どちらかが一番じゃないな? やっぱり答え出てなかった。

「ええなあ。うち、亀吉ちゃんに会えんくなって寂しいんやけど、亀吉ちゃんはお友達おるから寂しないんかなあ」
 
 そっか。
 そうだね。千寿せんじゅは、急に亀吉に会えなくなったもんね。寂しいよね。
 さっき俺が出かける時、亀吉、いっしょいくーって泣いてたな。亀吉も寂しいのかもしれない。

「来る?」
「え?」
「亀吉のとこ、来る?」
「「行く!」」

 話が早い。
 じゃ、帰り乗ってく?

「バス大きいからいっぱい乗れる」

 亀吉、喜ぶな、きっと。

「あー、姫。若も。ちょっとそんなすぐにはお出かけは……」
「「え?」」

 あ、そうだ。
 今、バス、臭いんだった。

「掃除しなきゃ」
「「そやった」」
「「掃除?」」

 ぼうさくも声が揃うんだね。姉弟って面白いな。
 首を傾げたぼうさくにバスの中が汚れたことを説明した。俺の説明を聞き終えたら、皆様はそこにおってください、ってさくが言って、後ろ向きに進むトラックに向かって走っていった。速かった。じいじが、ほうって言うくらい速かった。
 さくは、すぐに大量の布を持って戻ってきた。布を受け取ったぼうが他の人にも指示を出しながら掃除し始めて、あっという間にバスは綺麗になった。ぼうは、水瀬みなせみたいに掃除が上手だった。俺の出番、無かった。
 ぼうたちは、よく効く臭い消しみたいなのも持っていたらしく、掃除が終わったら臭いも無くなっていてびっくりした。元真中以外の西中さいちゅう国の人は、バスの中で大人しく座って待っていた。
 臭いだろうから、掃除している間、外に出る? って聞いてみたんだけど、全員、首を横に振ったんだ。臭くても我慢できるなら、まあ、いいんだけど。外は寒いから、出るのが嫌だったのかな? 
 掃除が終わったら、ぼうさくも、近くの村から手伝いに来てましたって挨拶をしてくれた西賀さいかの人たちも、皆でバスに乗って森を出た。
 皆、バスを見るのも乗るのも初めてや、って喜んでくれた。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...