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第十章 されど幸せな日々
43 本職は料理人 成人
牛乳は、本当にお腹が膨れるものらしい。そして、広末が作るミックスジュースとお風呂屋さんのフルーツ牛乳は、味とか似ていても中身が全然違うんだ、って分かった。俺は、広末の作ってくれるミックスジュースを飲んだ後でも、いつもご飯はちゃんと食べられる。いつでも飲んでいいよ、って言ってもらっている。だから、ご飯の前にジュースをちょっと飲んでも、ご飯は食べられると思っていた。
「うう」
具だくさんの味噌汁とご飯を半分食べたところで、もうお腹が膨れてきて悔しい。壱臣の得意のだし巻き玉子よりほんの少し甘い玉子焼きも、肉とじゃがいもと葱の煮物もすごく美味しいのに。おかずはまだ、半分も食べられていない。
広末の作ってくれるミックスジュースを飲んだ後にご飯を食べても、こんなにすぐお腹が膨れたりしないのに。
「無理するなよ」
隣に座る緋色が、俺の手から箸を取った。俺の箸が、しばらく何も掴んでいないことを気付かれてしまったみたいだ。代わりに、いい感じに冷めてきたお茶を手の前に置く。
周りを見ると、皆はまだもりもりと食べている。
「ご、ごめん。お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
申し訳なくてうつむいちゃった。本当に本当にごめん。千代は、俺の分をちゃんと少なめにしてくれていた。それでも食べ切れなかった。お盆に乗ったご飯とおかずを見た時は、これならいけるな、って思ったのにな。
「ちょうどええ分食べてもろたら、それでええんですよ」
千代の優しい声に顔を上げると、一緒にご飯を食べている千代が、にこにこ笑っている。
「牛乳でお腹が膨れるんや、という新しい発見がありました。料理する時の良い参考になります。ありがとうございます」
「そう?」
「そうです。うちの周りは大飯食いばっかりやったから、そういう配慮が足りませんでしたね。こちらこそ、申し訳ありません」
「んーん」
お風呂屋さんで飲むフルーツ牛乳やコーヒー牛乳がすごく美味しい、って教えてもらって嬉しかった。そして、すごく美味しかった。また行っても、絶対飲む。ご飯の前に飲むとご飯があんまり食べられなくなることは分かったけれど、でも飲むと思う。
「千代のご飯、美味しい」
「お口に合うて何よりです」
千代はお料理が大好きだから、ついこの間まで住んでいたお屋敷では料理を全部やっていたんだって。ここでも、少しずつ任せてもろてます、って言った。
そして、この城の料理人は、なるべく早く西中国の城に行けるように準備してもろとります、って。それは、良かった。あちらの城は、広くて人もたくさんだから、信頼できる料理人が来てくれると助かると思う。
「本職は料理人なんですよ。領主の奥様なんて柄やないんですけど、殿や玉鶴さまに頭を下げられたらしゃあない。副業で頑張ります」
お仕事二つ……? あ、水瀬たちみたいな? 大変だ。ちゃんとお休み取ってね。
千代は、厨房の者に聞いとりますよって、他の人と少しだけ量の違う俺の分を緋色の隣に置いてくれた。
「緋色殿下はこちら」
って言っていたから、緋色の分も何か皆と違うところがあるのかもしれない。玉子焼きとか煮物が、俺のより甘くないのかもしれない。広末と同じで、一人ずつのことを考えて作ってある? 流石、料理人だ。
「夜は、もっといっぱい食べるね」
緋色。俺、もう少し千代のご飯を食べたいから、戻るの明日にしよう。
「うう」
具だくさんの味噌汁とご飯を半分食べたところで、もうお腹が膨れてきて悔しい。壱臣の得意のだし巻き玉子よりほんの少し甘い玉子焼きも、肉とじゃがいもと葱の煮物もすごく美味しいのに。おかずはまだ、半分も食べられていない。
広末の作ってくれるミックスジュースを飲んだ後にご飯を食べても、こんなにすぐお腹が膨れたりしないのに。
「無理するなよ」
隣に座る緋色が、俺の手から箸を取った。俺の箸が、しばらく何も掴んでいないことを気付かれてしまったみたいだ。代わりに、いい感じに冷めてきたお茶を手の前に置く。
周りを見ると、皆はまだもりもりと食べている。
「ご、ごめん。お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
申し訳なくてうつむいちゃった。本当に本当にごめん。千代は、俺の分をちゃんと少なめにしてくれていた。それでも食べ切れなかった。お盆に乗ったご飯とおかずを見た時は、これならいけるな、って思ったのにな。
「ちょうどええ分食べてもろたら、それでええんですよ」
千代の優しい声に顔を上げると、一緒にご飯を食べている千代が、にこにこ笑っている。
「牛乳でお腹が膨れるんや、という新しい発見がありました。料理する時の良い参考になります。ありがとうございます」
「そう?」
「そうです。うちの周りは大飯食いばっかりやったから、そういう配慮が足りませんでしたね。こちらこそ、申し訳ありません」
「んーん」
お風呂屋さんで飲むフルーツ牛乳やコーヒー牛乳がすごく美味しい、って教えてもらって嬉しかった。そして、すごく美味しかった。また行っても、絶対飲む。ご飯の前に飲むとご飯があんまり食べられなくなることは分かったけれど、でも飲むと思う。
「千代のご飯、美味しい」
「お口に合うて何よりです」
千代はお料理が大好きだから、ついこの間まで住んでいたお屋敷では料理を全部やっていたんだって。ここでも、少しずつ任せてもろてます、って言った。
そして、この城の料理人は、なるべく早く西中国の城に行けるように準備してもろとります、って。それは、良かった。あちらの城は、広くて人もたくさんだから、信頼できる料理人が来てくれると助かると思う。
「本職は料理人なんですよ。領主の奥様なんて柄やないんですけど、殿や玉鶴さまに頭を下げられたらしゃあない。副業で頑張ります」
お仕事二つ……? あ、水瀬たちみたいな? 大変だ。ちゃんとお休み取ってね。
千代は、厨房の者に聞いとりますよって、他の人と少しだけ量の違う俺の分を緋色の隣に置いてくれた。
「緋色殿下はこちら」
って言っていたから、緋色の分も何か皆と違うところがあるのかもしれない。玉子焼きとか煮物が、俺のより甘くないのかもしれない。広末と同じで、一人ずつのことを考えて作ってある? 流石、料理人だ。
「夜は、もっといっぱい食べるね」
緋色。俺、もう少し千代のご飯を食べたいから、戻るの明日にしよう。
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