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第十章 されど幸せな日々
54 一人でお風呂に入った日 成人
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「わああ」
ガラス戸の向こうは、入ってみれば湯気で埋もれてなんかいなかった。ちゃんと周りが見えた。
外から見たら、中は湯気でいっぱいで、あんまり周りは見えないんだろうな、って思っていたのに。
広い。大きい。びっくり。髪や体を洗うところがたくさんある。湯船も、たくさんある。大きい湯船。小さくて、ぶくぶくと泡が出ている湯船。深いの。浅いの。電気風呂? 何それ。
「おおお」
一番大きい湯船の上の壁に、何か絵が描いてある。山? 山だな、山。お風呂なのに山? なんでー?
「緋色。なんで山?」
「ん? 山? おう。山だな……」
あれ? 緋色も知らないのか。緋色でも知らないことあるんだな。
後で安さんに聞いてみよう。何で山の絵が書いてあるの? って。
なんか、いい感じなんだけどさ。山の絵が、ないよりあった方がいい感じ。お風呂屋さんって感じ。
そういう事?
いや、まあ、お風呂屋さんに初めて来たから分かんないんだけど。
「ゆっくり歩けよ。滑るぞ」
「ん」
お風呂でこんなに歩き回ることないもんね。気を付けないと。
「まずは湯をかぶれ。冷える」
「大丈夫」
中は、お湯から出る湯気で温かい。
でも、まあ、お風呂なんだから、お湯はかぶらないと駄目だな。
一番大きな湯船のお湯を桶ですくって、足の下の方にかけてみた。うん。熱い。やっぱりだ。朝、ここの湯はちと熱い、と誰かが言ってたのを覚えてる。貸し切りの時は温くしてもらうようにお願いしたんだけど、それでも熱い。
「ここは熱い」
「そうか」
手に持ってきたお風呂セットを洗い場に置いて、ざば、と勢いよく体に湯をかけた緋色は、お、と言った。
緋色は熱い湯が好きだから、ここがいいかも。
俺は泡のとこ行ってみよう。
「気をつけろよ」
「大丈夫」
泡のお風呂は、小さくて深い。何故か、下から横から泡がぶくぶくぶくぶく出ている。ここのお湯も、すくって足にかけてみた。大きい湯船ほどじゃないけど熱い。
「むー」
なんだ。桶ですくったら、泡無くなるんだな。足にかけても普通のお湯だった。湯船の中に入らないと泡のお湯のままじゃないのかぁ。泡の中に入ってみたいけど、ちょっと熱いんだよな、ここ。……次行こ。
浅い湯船は、いい感じの熱さだった。ざぱざぱとお湯をすくって体にかける。おお、俺、ここがいい。ちょうどいい。でも、浅いし、変な形の湯船だな。これも湯船って言うのかな?
見渡すと、すぐ上の壁に、寝転がって入ってください、って説明の図が貼ってあった。なるほど。寝転がって入るから浅いのか。
……。
やろうかな。俺、ここに入ろうかな。いい感じの熱さだし。うん。一人ずつしか入れないけど。……うん。よし。一人で入ろう。
よし、と決めて立ち上がると、緋色が熱い湯船から上がって側に来てくれた。
「これに入るのか?」
「ん。入る」
「これ、一緒に入れないぞ」
「ん。一人で入る」
「……そうか」
これは一人用だからね。緋色と一緒に入れないから。俺、一人でお風呂に入るよ。入っちゃう。
側に来てくれた緋色の手を握って、一人で寝転がってみた。
「ふわ」
「どうした?」
「気持ちいい~」
「そうか」
ちょうどいい熱さのお湯が、ちゃぷちゃぷと寝転がった体にかかる。頭を乗せるところに頭を置いて寝転がっていると、ふわふわと浮いているみたいだ。ずっとこうして居られそう。
「ふわ~」
「いや、これ、風呂に入った気しないぞ?」
手を握ったまま隣に寝転がった緋色が何か言っているけど、知らなーい。
俺、もう少しここに入ってる。緋色は熱いところに行ってきていいよ?
ガラス戸の向こうは、入ってみれば湯気で埋もれてなんかいなかった。ちゃんと周りが見えた。
外から見たら、中は湯気でいっぱいで、あんまり周りは見えないんだろうな、って思っていたのに。
広い。大きい。びっくり。髪や体を洗うところがたくさんある。湯船も、たくさんある。大きい湯船。小さくて、ぶくぶくと泡が出ている湯船。深いの。浅いの。電気風呂? 何それ。
「おおお」
一番大きい湯船の上の壁に、何か絵が描いてある。山? 山だな、山。お風呂なのに山? なんでー?
「緋色。なんで山?」
「ん? 山? おう。山だな……」
あれ? 緋色も知らないのか。緋色でも知らないことあるんだな。
後で安さんに聞いてみよう。何で山の絵が書いてあるの? って。
なんか、いい感じなんだけどさ。山の絵が、ないよりあった方がいい感じ。お風呂屋さんって感じ。
そういう事?
いや、まあ、お風呂屋さんに初めて来たから分かんないんだけど。
「ゆっくり歩けよ。滑るぞ」
「ん」
お風呂でこんなに歩き回ることないもんね。気を付けないと。
「まずは湯をかぶれ。冷える」
「大丈夫」
中は、お湯から出る湯気で温かい。
でも、まあ、お風呂なんだから、お湯はかぶらないと駄目だな。
一番大きな湯船のお湯を桶ですくって、足の下の方にかけてみた。うん。熱い。やっぱりだ。朝、ここの湯はちと熱い、と誰かが言ってたのを覚えてる。貸し切りの時は温くしてもらうようにお願いしたんだけど、それでも熱い。
「ここは熱い」
「そうか」
手に持ってきたお風呂セットを洗い場に置いて、ざば、と勢いよく体に湯をかけた緋色は、お、と言った。
緋色は熱い湯が好きだから、ここがいいかも。
俺は泡のとこ行ってみよう。
「気をつけろよ」
「大丈夫」
泡のお風呂は、小さくて深い。何故か、下から横から泡がぶくぶくぶくぶく出ている。ここのお湯も、すくって足にかけてみた。大きい湯船ほどじゃないけど熱い。
「むー」
なんだ。桶ですくったら、泡無くなるんだな。足にかけても普通のお湯だった。湯船の中に入らないと泡のお湯のままじゃないのかぁ。泡の中に入ってみたいけど、ちょっと熱いんだよな、ここ。……次行こ。
浅い湯船は、いい感じの熱さだった。ざぱざぱとお湯をすくって体にかける。おお、俺、ここがいい。ちょうどいい。でも、浅いし、変な形の湯船だな。これも湯船って言うのかな?
見渡すと、すぐ上の壁に、寝転がって入ってください、って説明の図が貼ってあった。なるほど。寝転がって入るから浅いのか。
……。
やろうかな。俺、ここに入ろうかな。いい感じの熱さだし。うん。一人ずつしか入れないけど。……うん。よし。一人で入ろう。
よし、と決めて立ち上がると、緋色が熱い湯船から上がって側に来てくれた。
「これに入るのか?」
「ん。入る」
「これ、一緒に入れないぞ」
「ん。一人で入る」
「……そうか」
これは一人用だからね。緋色と一緒に入れないから。俺、一人でお風呂に入るよ。入っちゃう。
側に来てくれた緋色の手を握って、一人で寝転がってみた。
「ふわ」
「どうした?」
「気持ちいい~」
「そうか」
ちょうどいい熱さのお湯が、ちゃぷちゃぷと寝転がった体にかかる。頭を乗せるところに頭を置いて寝転がっていると、ふわふわと浮いているみたいだ。ずっとこうして居られそう。
「ふわ~」
「いや、これ、風呂に入った気しないぞ?」
手を握ったまま隣に寝転がった緋色が何か言っているけど、知らなーい。
俺、もう少しここに入ってる。緋色は熱いところに行ってきていいよ?
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