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第十章 されど幸せな日々
56 ふやけるくらい入った 成人
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「ふやけちまうぞ」
「ふやっ?」
緋色に声をかけられてびっくりした。気持ち良すぎて寝そうになっていた。
ふふ。ふやけちゃう、なんて初めて言われたな。
お風呂はいつも、緋色に抱っこされて入って、あついー、もう上がるーって言うのを、もう少し、もう少し、と止められている。やっと上がって体や頭を洗い終えたら、最後にもう一回入ってから上がるぞって緋色は必ず言う。十数えたら上がっていいって言うから、それくらいならって思って一緒に入るんだけど、緋色は俺が数えている途中で絶対邪魔してくるんだ。早く上がりたくて早口で言えば、早すぎ、もう一回って言うし、いち、に、さんって数えていたら、今日は昔の数え方をしてみろ、知ってるか? って言ったりする。知ってるよ、ひーふーみーって数え始めると、お、良く知ってるな、って頭を撫でられたりして。えへへ、って喜んでいる間に本当は十終わっているんじゃない? って気付くのはいつも、もう無理って緋色の腕を抜け出してからだ。
そうやって、少しでも長くお湯の中に居ようとする緋色と早く上がりたい俺、っていうのがいつものお風呂なのに。
緋色が、お風呂から出ない俺を迎えに来るなんて。
寝転がっていただけなのになんだか疲れて起き上がれず、ん、と右手を上げた。亀吉や末良が抱っこしてほしい時の仕草みたいだな、ってちょっと思ったけど、まあいっか。抱っこしてほしいんだから、これで合ってる。大人も、抱っこしてほしい時は手を伸ばすんだ。
知らんけど。
「はは」
笑いながら俺を抱き上げてくれた緋色の体は、ものすごく温かかった。熱い熱いお風呂に、たくさん入ってきたんだな、きっと。
「緋色、あつーい」
「そんなの、いつものことだろ?」
ま、そうだけど。ちゅーした時の口も、緋色はいつもぬくぬく。あったかくて気持ちいい。
気持ち良くてぽやぽやしているうちに、頭も体も綺麗に洗われていた。
洗われているうちにちょっと目が覚めたので、緋色の背中は俺が洗う。
「もっと力入れろ」
「入れてる。俺の目一杯でこすってる」
「それじゃ俺の背中は綺麗にならんぞ」
「いつもつるつるだから大丈夫」
「はは。なんだそりゃ」
「つるつる」
石鹸の付いた背中をそっと触ると、緋色がくすぐったそうにちょっと動く。緋色はくすぐったがり。
「こら。そんな触り方すると、気持ちいいことしたくなるからやめろ」
「はーい」
気持ちいいことするのは好きだけど、今はお風呂屋さんを楽しみたい。
洗い終わった後は、もう一度浅いところに戻ろうとしたのを止められて、泡のお風呂に連れていかれた。
「あついぃ。なんか、もぞもぞするう。いちにさんしごろくしちはちくじゅう! はい! 終わり!」
「はは」
大きいお風呂よりは温かったけど、泡のお風呂も俺にはすごく熱かった。ぶくぶくとした泡が体に当たる感触が何だか慣れない。大急ぎで十数えた。
緋色は、俺の大急ぎで数えた十を邪魔せずに、すぐに上がってくれた。
あ。緋色もこういうの得意じゃなかったんでしょ? くすぐったいんじゃない?
手を繋いで最後に見に行った電気風呂は、少しぴりぴりと痛いです、と書いてあったので、手を入れるのもやめておいた。
なんでわざわざ痛いところに入るんだろ。変なの。
「ふやっ?」
緋色に声をかけられてびっくりした。気持ち良すぎて寝そうになっていた。
ふふ。ふやけちゃう、なんて初めて言われたな。
お風呂はいつも、緋色に抱っこされて入って、あついー、もう上がるーって言うのを、もう少し、もう少し、と止められている。やっと上がって体や頭を洗い終えたら、最後にもう一回入ってから上がるぞって緋色は必ず言う。十数えたら上がっていいって言うから、それくらいならって思って一緒に入るんだけど、緋色は俺が数えている途中で絶対邪魔してくるんだ。早く上がりたくて早口で言えば、早すぎ、もう一回って言うし、いち、に、さんって数えていたら、今日は昔の数え方をしてみろ、知ってるか? って言ったりする。知ってるよ、ひーふーみーって数え始めると、お、良く知ってるな、って頭を撫でられたりして。えへへ、って喜んでいる間に本当は十終わっているんじゃない? って気付くのはいつも、もう無理って緋色の腕を抜け出してからだ。
そうやって、少しでも長くお湯の中に居ようとする緋色と早く上がりたい俺、っていうのがいつものお風呂なのに。
緋色が、お風呂から出ない俺を迎えに来るなんて。
寝転がっていただけなのになんだか疲れて起き上がれず、ん、と右手を上げた。亀吉や末良が抱っこしてほしい時の仕草みたいだな、ってちょっと思ったけど、まあいっか。抱っこしてほしいんだから、これで合ってる。大人も、抱っこしてほしい時は手を伸ばすんだ。
知らんけど。
「はは」
笑いながら俺を抱き上げてくれた緋色の体は、ものすごく温かかった。熱い熱いお風呂に、たくさん入ってきたんだな、きっと。
「緋色、あつーい」
「そんなの、いつものことだろ?」
ま、そうだけど。ちゅーした時の口も、緋色はいつもぬくぬく。あったかくて気持ちいい。
気持ち良くてぽやぽやしているうちに、頭も体も綺麗に洗われていた。
洗われているうちにちょっと目が覚めたので、緋色の背中は俺が洗う。
「もっと力入れろ」
「入れてる。俺の目一杯でこすってる」
「それじゃ俺の背中は綺麗にならんぞ」
「いつもつるつるだから大丈夫」
「はは。なんだそりゃ」
「つるつる」
石鹸の付いた背中をそっと触ると、緋色がくすぐったそうにちょっと動く。緋色はくすぐったがり。
「こら。そんな触り方すると、気持ちいいことしたくなるからやめろ」
「はーい」
気持ちいいことするのは好きだけど、今はお風呂屋さんを楽しみたい。
洗い終わった後は、もう一度浅いところに戻ろうとしたのを止められて、泡のお風呂に連れていかれた。
「あついぃ。なんか、もぞもぞするう。いちにさんしごろくしちはちくじゅう! はい! 終わり!」
「はは」
大きいお風呂よりは温かったけど、泡のお風呂も俺にはすごく熱かった。ぶくぶくとした泡が体に当たる感触が何だか慣れない。大急ぎで十数えた。
緋色は、俺の大急ぎで数えた十を邪魔せずに、すぐに上がってくれた。
あ。緋色もこういうの得意じゃなかったんでしょ? くすぐったいんじゃない?
手を繋いで最後に見に行った電気風呂は、少しぴりぴりと痛いです、と書いてあったので、手を入れるのもやめておいた。
なんでわざわざ痛いところに入るんだろ。変なの。
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