1,282 / 1,325
第十章 されど幸せな日々
73 鍛錬所は寒くない 成人
しおりを挟む
「成人。すぐ戻ってくる約束だろう?」
半助と晦たちの手合わせを夢中で見ていたら、緋色が迎えに来てしまった。
え? そんなに時間経ったかなあ。まだそうでもないと思うよ? たぶん。
足に重みを感じて見れば、亀吉が俺の足につかまってぐらぐらと揺れ始めている。んー、と目を擦る。
大変、大変。
すごく眠たい時の仕草だ。
お布団の敷いてあるお昼寝部屋に戻らなくちゃ。
「亀吉さま、香月のところへいらしてください」
「や」
いやなのかー。
「抱っこしてみた方が見やすいかもしれませんよ?」
「ん?」
「晦さま達の動き。香月は亀吉さまより大きいですから、とーってもよく見えとります」
そうだね。亀吉はまだまだ小さいから、亀吉の立っている位置からだと見えにくいことがたくさんあるだろう。亀吉の位置からしか見えないことも、たくさんあると思うけど。小さいってのは悪いことばかりじゃない。
「お前。すごく冷えてしまってるじゃないか」
ありゃ。俺が先に、緋色に抱き上げられてしまった。俺の足に寄りかかっていた亀吉がバランスを崩すのなんて、緋色は全然お構いなしだ。もー。もちろん亀吉のことは、常陸丸が素早く抱き上げているんだけどさ。香月がまた、手を出しかけた姿勢で止まっていた。確かこの前は、力丸が先に抱き上げたんだったな。
ちょっと鍛錬しとく?
「抱っこするぞ、って言って」
「抱っこするぞ」
もうしちゃってるじゃないか。
「もー」
「約束を破ったお前が悪い。鍛錬所は寒いから、すぐに城内に戻ってこいと言ったろう?」
「言った」
俺も、うん分かった、って返事した。
でも、まだそんなに時間経っていないと思うんだよな。ああでも、緋色にくっつくとあったかい。冷えてたか。亀吉がつかまってた足の辺りは、ぽかぽかだったんだけどね。子どもってなんだか温かい。
「ごめん……」
小望の三回目を見たら中に、と俺が口にする前に、のんびりとした声がかかる。
「皆さん、少し休憩しませんか? 飲みもんお持ちしましたよ」
「臣」
手合わせ三回目最後の小望を、今までの最速で吹っ飛ばした半助が飛んでくる。
ありゃ、残念だった。
晦たちも慣れてきたし、半助も疲れてきていたし、三回目は皆、少し打ち合い出来ていたのに。
「化けもんか」
汗を拭った晦の呟きが聞こえた。
訓練にならなくてごめんね、小望。半助は壱臣が大事すぎて、壱臣が近くにいると、危ないものをとにかく全力で排除しようとしちゃうんだよ。
「こんな危ないとこ来たらあかん」
「大丈夫やで、半助。緋色殿下と常陸丸さんの後ろからついてきたんやもん。なんも危ないことあらへん。危ないことしとんは半助やろ」
「ただの訓練や」
「でも、打ち合ったりするし、何があるか分からんし。心配しとんやで、いっつも」
「うん。心配かけんように、もっと強なるから」
「いや、もう充分なんやけど。いや、まあ、うん。気ぃつけてな?」
「当たり前や。臣に心配かけるようなことはせえへん」
「ふふ。はーい。信用しとるよ」
今日も二人は仲良し。デートの予定がつぶれたの、本当にごめんね。
「いや、あれ、誰ー?」
「さっき、俺らのこと吹っ飛ばしてた人ちゃいますか?」
「別人やん」
「デートの予定がつぶれたって言うてはりましたよ、確か……」
「それ、俺らのせいやなくないですか?」
「ほんまに……」
晦たちが、ぶつぶつ言っている。
うん、まあ、それはそうかも。
半助と晦たちの手合わせを夢中で見ていたら、緋色が迎えに来てしまった。
え? そんなに時間経ったかなあ。まだそうでもないと思うよ? たぶん。
足に重みを感じて見れば、亀吉が俺の足につかまってぐらぐらと揺れ始めている。んー、と目を擦る。
大変、大変。
すごく眠たい時の仕草だ。
お布団の敷いてあるお昼寝部屋に戻らなくちゃ。
「亀吉さま、香月のところへいらしてください」
「や」
いやなのかー。
「抱っこしてみた方が見やすいかもしれませんよ?」
「ん?」
「晦さま達の動き。香月は亀吉さまより大きいですから、とーってもよく見えとります」
そうだね。亀吉はまだまだ小さいから、亀吉の立っている位置からだと見えにくいことがたくさんあるだろう。亀吉の位置からしか見えないことも、たくさんあると思うけど。小さいってのは悪いことばかりじゃない。
「お前。すごく冷えてしまってるじゃないか」
ありゃ。俺が先に、緋色に抱き上げられてしまった。俺の足に寄りかかっていた亀吉がバランスを崩すのなんて、緋色は全然お構いなしだ。もー。もちろん亀吉のことは、常陸丸が素早く抱き上げているんだけどさ。香月がまた、手を出しかけた姿勢で止まっていた。確かこの前は、力丸が先に抱き上げたんだったな。
ちょっと鍛錬しとく?
「抱っこするぞ、って言って」
「抱っこするぞ」
もうしちゃってるじゃないか。
「もー」
「約束を破ったお前が悪い。鍛錬所は寒いから、すぐに城内に戻ってこいと言ったろう?」
「言った」
俺も、うん分かった、って返事した。
でも、まだそんなに時間経っていないと思うんだよな。ああでも、緋色にくっつくとあったかい。冷えてたか。亀吉がつかまってた足の辺りは、ぽかぽかだったんだけどね。子どもってなんだか温かい。
「ごめん……」
小望の三回目を見たら中に、と俺が口にする前に、のんびりとした声がかかる。
「皆さん、少し休憩しませんか? 飲みもんお持ちしましたよ」
「臣」
手合わせ三回目最後の小望を、今までの最速で吹っ飛ばした半助が飛んでくる。
ありゃ、残念だった。
晦たちも慣れてきたし、半助も疲れてきていたし、三回目は皆、少し打ち合い出来ていたのに。
「化けもんか」
汗を拭った晦の呟きが聞こえた。
訓練にならなくてごめんね、小望。半助は壱臣が大事すぎて、壱臣が近くにいると、危ないものをとにかく全力で排除しようとしちゃうんだよ。
「こんな危ないとこ来たらあかん」
「大丈夫やで、半助。緋色殿下と常陸丸さんの後ろからついてきたんやもん。なんも危ないことあらへん。危ないことしとんは半助やろ」
「ただの訓練や」
「でも、打ち合ったりするし、何があるか分からんし。心配しとんやで、いっつも」
「うん。心配かけんように、もっと強なるから」
「いや、もう充分なんやけど。いや、まあ、うん。気ぃつけてな?」
「当たり前や。臣に心配かけるようなことはせえへん」
「ふふ。はーい。信用しとるよ」
今日も二人は仲良し。デートの予定がつぶれたの、本当にごめんね。
「いや、あれ、誰ー?」
「さっき、俺らのこと吹っ飛ばしてた人ちゃいますか?」
「別人やん」
「デートの予定がつぶれたって言うてはりましたよ、確か……」
「それ、俺らのせいやなくないですか?」
「ほんまに……」
晦たちが、ぶつぶつ言っている。
うん、まあ、それはそうかも。
1,966
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜
なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」
男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。
ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。
冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。
しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。
「俺、後悔しないようにしてんだ」
その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。
笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。
一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。
青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。
本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
【完結】獣王の番
なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。
虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。
しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。
やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」
拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。
冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる