【完結】何度でもやり直しましょう。愛しい人と共に送れる人生を。

かずえ

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透子の章

6

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「おはよう、透子とうこ。」

 名指しされて無視することもできない。もちろん、名指しされなくても皇子みこに挨拶無しで通り過ぎることなどできはしないのだけれど。

「おはようございます。」

 とだけ、私は返した。隣で姉上も優雅なお辞儀をする。

「はじめまして。本日より共に学ばせて頂きます、あけの国の第一子華子はなこと申します。よろしくお願い致します。」
「ああ、透子とうこの姉君か。俺は。」

 玻璃皇子はりのみこが言えたのはそこまでだった。

「兄上!」

 少し掠れた声が響いたからである。同じく緑の髪紐の皇子みこが現れて周囲は戸惑っている。私は嬉しくて笑顔になってしまった。

「今後は入れ替わりはしたくないと言った筈だ。」

 声が掠れて出しにくそうなのは、声変わりの最中だからである。快璃かいり玻璃皇子はりのみこより少し早く声変わりが始まったようで、最近は喋りにくそうにしている。
 そんな違いがあるのだ。入れ替わりなんて無理がある。
 快璃かいりは不機嫌さを隠しもせずに玻璃皇子はりのみこに詰め寄った。玻璃皇子はりのみこは、ふっと短い息を吐いて、にこりと笑う。

「そうだったかな?」

 そう言いながら、私に近付いて頭を撫でた。私はびくりと体を揺らしてしまったけれど、何とか堪えてその場に固まっている。皇族に失礼をしてはいけない。私たちの国は属国に過ぎず、私たちは人質としてここにいるのだ。
 かっとした快璃かいりが私の腕を自分の方へと引いて、そのまま片手のなかに入れる。今年入学した同年の子たちの中に入っても一番小さいかもしれない私である。十二歳でぐんぐん背の伸びている快璃かいりの腕にすっぽりとはまってしまった。

「小さい頃は、楽しい遊びだった。使用人や教師の反応が面白かった。でも、友人相手に騙すような真似をするのは少しも楽しくないと言っただろう?俺はもうしたくないと何度もお願いした筈だ。誰かにばれたら終わりというルールもあっただろう?透子とうこはずっと、分かっている。一度だって俺たちを間違えたことなどないと気付いているんだろう?」

 出しにくそうに、低い声を絞り出して快璃かいりは訴えた。
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