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透子の章
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「それは、私のみこです。玻璃皇子に似ているのではありません。父の快璃に似ているのです!」
「そういうことだな。」
思わず冷静さを欠いた私に、何も変わらない刀戈さまの声が返ってきた。
「報告書によれば、玻璃皇子に似ている者を探して、手妻で呼び出したのだろうが、十歳違いで親子と言うのは無理がありすぎる、なんとお粗末な策謀かと攻めたて、術士を拘束したそうだ。母のような女人が共にいたとの噂もあるらしい。確かに、最後の皇子と言うならもっと幼子にすればよいものを、と私も思うた。」
私は、淡々と語る刀戈さまの言葉を聞き逃さないようにと集中する。城の中での秘め事であろうに、随分と詳細な報告であった。
「だが、先程の話と照らし合わせると、ぴたりと年齢が当てはまってしまう。そして、血筋としては、紛れもない最後の皇子だな。」
ほう、と息を吐いた。つまり、私たちの子は、きっちり十五年生きた姿で帰ってきている、ということなのか。
快璃の方を見ると、すぐに目が合った。深く頷きあう。小さな赤子を思い浮かべていた。胸に抱き上げるつもりだった。どうやら、そういうことにはならないらしい。
「さて。偽物と思われていても、本物と知られていても、皇子が丁寧に扱われるとは思えぬ。どうしたものか。」
「……どういう、ことでしょうか。」
「偽物なら罪人であろ?皇族を騙ったのだ。本物と知るのは、事情を知るもの。玻璃皇子の血筋でないと知っている、ということだ。なれば、邪魔でしかない。」
血の気が引く音がした。何ということだ。やっと、見つけたというのに。
「呪の話があるからな。すぐに殺されることはあるまいが。」
「そうでしょうか。」
「ああ。十五年、皇家の血筋に男が一人も生まれていないのは、厳然たる事実。呪を解く唯一の手段がその子だという話が本当ならば、殺してしまえば、永遠に男は生まれなくなる。とりあえず、閉じ込めて生かして、対策を考えるであろ?深剣、そなたならどうする?」
「その子が子を成せば、呪は解けるのでしたか。なれば、監禁して子を作らせればよいのでは?生まれた子が、次代の帝にならねばならぬという約定や、その血統が帝にならねばならぬ、という約定が無いのであれば、子を生ませて、呪が解けたのを確認してから、親子共々亡き者にします。」
「同意だ。今、得ている情報から導き出される答えはそれだな。」
「すぐにでも、暁の城へ行かねば!」
ずっと、静かに話を聞いていた快璃が叫ぶ。
「急くな。あそこはもう、そちの城ではない。とはいえ、早々に確保せねば、精神が持つまい。うちの坊主に拐わせよう。」
「え?」
◇◇◇◇◇◇◇
手妻→手品、奇術のこと。
「そういうことだな。」
思わず冷静さを欠いた私に、何も変わらない刀戈さまの声が返ってきた。
「報告書によれば、玻璃皇子に似ている者を探して、手妻で呼び出したのだろうが、十歳違いで親子と言うのは無理がありすぎる、なんとお粗末な策謀かと攻めたて、術士を拘束したそうだ。母のような女人が共にいたとの噂もあるらしい。確かに、最後の皇子と言うならもっと幼子にすればよいものを、と私も思うた。」
私は、淡々と語る刀戈さまの言葉を聞き逃さないようにと集中する。城の中での秘め事であろうに、随分と詳細な報告であった。
「だが、先程の話と照らし合わせると、ぴたりと年齢が当てはまってしまう。そして、血筋としては、紛れもない最後の皇子だな。」
ほう、と息を吐いた。つまり、私たちの子は、きっちり十五年生きた姿で帰ってきている、ということなのか。
快璃の方を見ると、すぐに目が合った。深く頷きあう。小さな赤子を思い浮かべていた。胸に抱き上げるつもりだった。どうやら、そういうことにはならないらしい。
「さて。偽物と思われていても、本物と知られていても、皇子が丁寧に扱われるとは思えぬ。どうしたものか。」
「……どういう、ことでしょうか。」
「偽物なら罪人であろ?皇族を騙ったのだ。本物と知るのは、事情を知るもの。玻璃皇子の血筋でないと知っている、ということだ。なれば、邪魔でしかない。」
血の気が引く音がした。何ということだ。やっと、見つけたというのに。
「呪の話があるからな。すぐに殺されることはあるまいが。」
「そうでしょうか。」
「ああ。十五年、皇家の血筋に男が一人も生まれていないのは、厳然たる事実。呪を解く唯一の手段がその子だという話が本当ならば、殺してしまえば、永遠に男は生まれなくなる。とりあえず、閉じ込めて生かして、対策を考えるであろ?深剣、そなたならどうする?」
「その子が子を成せば、呪は解けるのでしたか。なれば、監禁して子を作らせればよいのでは?生まれた子が、次代の帝にならねばならぬという約定や、その血統が帝にならねばならぬ、という約定が無いのであれば、子を生ませて、呪が解けたのを確認してから、親子共々亡き者にします。」
「同意だ。今、得ている情報から導き出される答えはそれだな。」
「すぐにでも、暁の城へ行かねば!」
ずっと、静かに話を聞いていた快璃が叫ぶ。
「急くな。あそこはもう、そちの城ではない。とはいえ、早々に確保せねば、精神が持つまい。うちの坊主に拐わせよう。」
「え?」
◇◇◇◇◇◇◇
手妻→手品、奇術のこと。
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