【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ

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小さな幸せを願った勇者の話

83 風呂の楽しみ

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 風呂も、もちろんセナは張り切った。髪の毛は当然、体も洗ってくれるらしい。大浴場の隅で、されるがままになっている。

「ユーゴー。何か体が硬い。」
「硬い?」
「うん。」

 セナはそう言って、背中を擦っていたタオルを置いて、手で肩や二の腕を触る。
 ああ。

「いきなりレベルアップしたからだろ?」

 体も、レベルに耐えられるように変化するのだろう。こんなに一気にレベルアップしたことはないが、少しずつ鍛えると体は硬く強くなる。そのレベルにあった体になるために、とりあえず硬くなったかな?
 動かしにくいと困るが、今のところ違和感は感じていない。

「ふーん。」

 ひとしきり触ると、またタオルで擦ってくれた。
 毎日、風呂に入れるのでそんなに汚れていることはないが、背中は自分で洗いにくいから、擦ってもらうのは気持ちいい。
 もしかして……。

「セナ。」
「んー?」

 一生懸命、洗ってくれているセナに声をかける。

「体や頭を洗うのも、楽しいのか?」
「うん!」

 満面の笑みが返ってきた。

「すっごく楽しい。」
「そうか……。」

 なら。

「俺も、セナを洗いたい。」
「うーん。今日は無し。ユーゴーは今日は、お世話される人ね。」

 まあ、確かに。
 今、座ってるだけですんで、助かっている。
 積極的に動きたい体調ではないな……。

「分かった。」

 素直に頷いて洗ってもらい、湯船に浸かる。……寝そう。

「ユーゴー、本当に体調悪いのな。大丈夫か?」

 マリオンの声がして、沈みそうになっていた体を立て直した。

「あ、いや。寝そうだっただけ。」
「ユーゴーがそんな風になってんの、初めて見た。飯の時は、セナが大げさに言ってんのかと思ってたけど、悪かったな。」
「いや、ご飯は自分で食べられたから、まあ、大げさだったんじゃないか?」
「ぶっ。まあ、そうか。風呂は気を付けろよ。セナのお世話は、どうも抜けてるからな。」

 体を洗っているセナへ、二人で目を向ける。頑張って早く終わらせようとしているのだろう。背中の上の方へ手が届かなくて洗えていないまま、湯で石鹸を流してしまう。

「あーあ。」

 と言いながらマリオンが湯船から上がる。置いてあった、セナの体を洗っていたタオルを手に取ると、先ほど洗えていなかった辺りを擦りはじめた。

「何?」
「ここ、洗えてなかった。」
「え?あ、ありがとう。」

 今日は、セナもレベルアップしたんだろうに、その細い肩や背中が硬くなったようには見えない。
 笑ってタオルを返すマリオンを見て、嫌だな、と思った。
 嫌だな……?
 何だろう。
 セナの世話をしてくれてありがたいのに?
 
「楽しかった?」

 戻ってきたマリオンに聞く。

「楽しい?何が?」
「いや、何でもない。」

 何とも言い様のない、訳のわからない気分でセナを待った。
 湯に浸かりすぎて、ますますぼんやりした俺は、セナに体を拭いてもらい、服を着る手伝いまでしてもらって、手を引かれて部屋に戻った。
 部屋で、髪の毛をしっかりと拭いてもらってるうちに、ものすごーく眠たくなって早々に寝てしまったらしい。
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