【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ

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そして勇者は選んだ

74 人間として

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 勇者の剣の鞘を拵えてくれた武器屋で、鍛冶職人を紹介してもらう。武器屋の売り場の裏に小屋があり、客の要望に、すぐに応じられるようになっていた。
 
「この剣を溶かして、身に付けられる装飾品に変えたい」

 寡黙な鍛冶師は、仄かに光る剣をまじまじと見て、嫌そうに眉をしかめた。

「もったいねえ。こんな良いものを溶かすだなんて」
「でももう、要らないものなんだ」
「なら売ればいい。こんな立派な品なら、言い値で売れることだろう」
「いや。決まった人間にしか使えない仕掛けがあって、売っても他の人には使えない。でも、他に使えることがあって……」

 俺の言葉に鍛冶師は、はあ、と溜め息のような気の抜けた返事をする。

「できないなら、他の所で聞いてみるよ。それか、割って使おうかね」

 シャンフウは、鍛冶師の様子にあっさりと言った。言ってから、良い案だとばかりに俺の方を向く。

「割るのもいいかもしれんな。割って皮袋に入れて首からぶら下げておけば、どうだ?二人で使えるんじゃないか?」
「いいかも!」

 セナと俺の声が重なって、鍛冶師が慌てた。

「馬鹿者。危ないだろう、剣を割るなんて」
「だから、危なくない状態で持ち歩きたいと言っている」

 俺が落ち着いて言うと、もう一度、手の中の剣に目をやってから、預かる、と言ってくれた。
 
 シャンフウは、そろそろ帰る日取りを決めるよ、と領主館に帰り、俺たちはクロの様子を見てから家に帰った。クロはまだ、すやすやと寝ていて、こんなに穏やかな寝顔は初めてだ、とムスカが言った。
 良かった。
 家に帰った俺たちは、冒険者ギルドで依頼をこなして帰ってきたマールクとガウナーと相談して屋台の食事を買いに行き、話しながら食べた。全員、料理が苦手なままだと、いつも買いに出なくてはならないから、料理ができるように練習した方がいいかな。
 そんなことを思って、そう考えた自分に驚く。
 何もすることが無くなった筈の勇者の未来。それを、何気なく考えている自分。
 光の腕輪もなく、勇者の剣も持っていなくとも、今、自分の気持ちを素直に保っていられること。もちろん、セナが俺に光の結界を張ってくれているけれど、それでも、自分の意志で生きている。
 神は、もう俺を前世までのように操れないのだ。
 後は、このまま……。
 俺にも本来の寿命というものがあるなら。
 寿命を全うして、そのまま死にたい。ユーゴーという、人間として。
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