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そして勇者は選んだ
75 命尽きようとも君を守る
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「死んでくれないの?」
相変わらず、表情の無い白い顔で神は言った。
「生きているのが楽しい。絶対に死にたくない」
「魔王に、勇者を殺せと頼んだのに、動いてもくれない」
やはり、お前がクロを苦しめていたのか。
「いつもは素直に頷いてくれたのに」
クロは、ただ話しかけてくれる声が嬉しかったのかもしれない。長い孤独。辛い生活。誰も、彼を愛さなかった。
「僕が、目を掛けていた。死なないように気を付けたさ。いつも、死と隣り合わせだったから」
いっそ死ねたら、それは救いだっただろうに。
「死んで、この世界を正して」
俺は、俺の世界を正した。
クロの幸せを願い、俺の幸せを願う。この世界は、正しい。
不意に、明るい光が射し込んで、神の像がぼやける。
「どうして?」
その言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
「ユーゴー!」
体を揺らされ、名前を呼ばれている。目を開けると、焦った顔のセナが見えた。まだ、部屋は薄暗い。
「なに?」
俺が少し掠れた声を上げると、セナが、ほおっと息を吐いた。
いつも通りに俺たちの部屋にいて、俺たちのベッドで寝ている。体が大きくなったから、と奮発して大きなベッドと布団を買って、入れ替えてもらった。
一人用ベッドをもう一つ買うんじゃないのかよ?と俺たちに言ったムスカのベッドが大きかったのは、きっとクロと一緒に寝るために買い替えたからだと思う。クロももう、寝るときも一人にはならない。
俺も。
「い、息をしていなかったんだよ……」
俺が?
気が付いてみると、全身に嫌な汗をかいている。じっとりと体にまとわりつくような、汗。
「光の腕輪が無いから、心配してたんだ。何があった?」
「ああ。神が」
「やっぱり来やがった」
神の意思を最も受けていると言われる神託の聖者は、もうどこにもいない。
「クロに頼んだのに、俺を殺してくれなかった、と」
「やっぱり!やっぱりそうだったんだ。クロは、ユーゴーを殺したくなくて、あんなに苦しんでたんだ」
「ああ。早く死んで、世界を正せって」
すっと真顔になったセナの手から、きらきら、きらきらと光の魔力が溢れ出た。
『光の帳、ユーゴーを包み守れ。我が命尽きようとも、解けること勿れ』
詠唱は厳かに紡がれ、命尽きようとも、の所で物凄い量の魔力が移動したのが感じられた。
「セナ、やめろ。強すぎる魔法を使うな」
きらきら、きらきらと俺が光る。セナから流れてくる大量の魔力。温かい力。
セナの魔力がようやく止まった頃には、もう誰も、俺に傷は付けられないほどの結界に包まれていた。
俺の隣に倒れ込んだセナが言う。
「俺たちは、皆でおじいさんになって、良い人生だったと笑い合うんだ」
「それは、いいな……」
なんて素晴らしい人生!
相変わらず、表情の無い白い顔で神は言った。
「生きているのが楽しい。絶対に死にたくない」
「魔王に、勇者を殺せと頼んだのに、動いてもくれない」
やはり、お前がクロを苦しめていたのか。
「いつもは素直に頷いてくれたのに」
クロは、ただ話しかけてくれる声が嬉しかったのかもしれない。長い孤独。辛い生活。誰も、彼を愛さなかった。
「僕が、目を掛けていた。死なないように気を付けたさ。いつも、死と隣り合わせだったから」
いっそ死ねたら、それは救いだっただろうに。
「死んで、この世界を正して」
俺は、俺の世界を正した。
クロの幸せを願い、俺の幸せを願う。この世界は、正しい。
不意に、明るい光が射し込んで、神の像がぼやける。
「どうして?」
その言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
「ユーゴー!」
体を揺らされ、名前を呼ばれている。目を開けると、焦った顔のセナが見えた。まだ、部屋は薄暗い。
「なに?」
俺が少し掠れた声を上げると、セナが、ほおっと息を吐いた。
いつも通りに俺たちの部屋にいて、俺たちのベッドで寝ている。体が大きくなったから、と奮発して大きなベッドと布団を買って、入れ替えてもらった。
一人用ベッドをもう一つ買うんじゃないのかよ?と俺たちに言ったムスカのベッドが大きかったのは、きっとクロと一緒に寝るために買い替えたからだと思う。クロももう、寝るときも一人にはならない。
俺も。
「い、息をしていなかったんだよ……」
俺が?
気が付いてみると、全身に嫌な汗をかいている。じっとりと体にまとわりつくような、汗。
「光の腕輪が無いから、心配してたんだ。何があった?」
「ああ。神が」
「やっぱり来やがった」
神の意思を最も受けていると言われる神託の聖者は、もうどこにもいない。
「クロに頼んだのに、俺を殺してくれなかった、と」
「やっぱり!やっぱりそうだったんだ。クロは、ユーゴーを殺したくなくて、あんなに苦しんでたんだ」
「ああ。早く死んで、世界を正せって」
すっと真顔になったセナの手から、きらきら、きらきらと光の魔力が溢れ出た。
『光の帳、ユーゴーを包み守れ。我が命尽きようとも、解けること勿れ』
詠唱は厳かに紡がれ、命尽きようとも、の所で物凄い量の魔力が移動したのが感じられた。
「セナ、やめろ。強すぎる魔法を使うな」
きらきら、きらきらと俺が光る。セナから流れてくる大量の魔力。温かい力。
セナの魔力がようやく止まった頃には、もう誰も、俺に傷は付けられないほどの結界に包まれていた。
俺の隣に倒れ込んだセナが言う。
「俺たちは、皆でおじいさんになって、良い人生だったと笑い合うんだ」
「それは、いいな……」
なんて素晴らしい人生!
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