4 / 20
04 初陣
しおりを挟む
彼女は今、自分の目の前で起こっていることが、現実とはとても思えなかった。
絶体絶命の危機に瀕していたその前に、光を纏いし何かが舞い降りた。
それはまさしく――救世主。オークの足を片手で受け止めながら、黄色く光る眼でじっと少女を見つめている。
力強くも暖かさを感じる視線を受け、彼女の口は思考よりも先に言葉を紡いでいた。
ありがとう、と。
救世主は――ハジメはゆっくりと頷くとオークへと視線を戻し、
「テャッ!」
雄々しく叫びをあげた。オークの体がみるみるうちに持ち上げられ、背中から地面へと叩きつけられた。
「アグッ!!」
何とか受け身を取ったオークだったが、地面をえぐるその威力にうめき声を漏らす。
よろめきながらすぐに立ち上がる彼を前に、ハジメは構える。
腰を低く落とし、背中を丸く曲げ、両手は手刀の形に。じっと敵を見据え、出方をうかがう。
「ヨクモジャマシタナ、チビガ!」
激昂とともにその丸太の如く太き腕を振るい、大鬼が彼を狙う。
「!?」
だが、そんなものは何の意味もなさなかった。あっさりと拳を受け止められるオーク。
狼狽する彼をよそに、今度はハジメの番がやってきた。
身体の赤い部分が輝いたかと思うと、一気に全身が同じ色に染まる。
「カワッタ!?」
全身の筋肉量が増した真紅の戦士の姿を見て、さらにうろたえる大鬼。
「ハアァ……!」
拳を受け止めたまま気合を込め、ハジメは自身を中心として回転し始める。
2度、3度と回るうちに、オークの足は地面を離れた。
「デェア!」
そして間もなく、その巨体は宙を舞った。激しいきりもみを伴いつつ飛んで行くその姿は、みるみるうちに小さくなってゆく。
が。それだけでは終わらない。ハジメは腕を交差させ、その体を再び輝かせる。
今度は紫色の光が全身を包むと――
「ショアッ!」
掛け声とともに、それは飛び立った。
先ほどまでとは対照的に、筋肉量の減ったシルエット。紫電の勇者が、空を行く。
5秒も経たぬうちにいまだ飛び続けるオークとすれ違い、
「セアッ!」
加速と全体重を乗せた蹴りを見舞った。
「グゲェ!」
再び大地に叩きつけられる大鬼。その口からは苦悶の声があふれ出る。
「ク、クソ……ナゼダ!?ナゼアンナチビニ!」
信じられない、といった様子で怒りをあらわにする大鬼の姿をよそに、またもハジメは姿を変える。
今度は、最初に見せたあの姿だ。彼は眼下のオークを見下ろしたのち、
「チャッ!」
手のひらを手刀の形にし、両の腕を胸の前で交差させ力を込める。全身が白く光り輝くと、
「ハァァ……!」
右腕を高く突き上げ、左手を腰の位置に持ってゆくと、さらに力を集中。右腕にエネルギーを収束させ――
「セェヤァ――ッ!」
雄叫びとともに、解き放った。
胸の前で横向きに構えた右腕から、直線状に光の奔流が打ち出される。
それは瞬く間にオークへと直撃。そして――
「ギッ……ウグアァァ――ッ!」
数秒に渡る照射ののち、オークの断末魔の叫びが響く。大爆発を起こし、夜空が明るく照らされた。
それを見届けると、戦士は星空へ向かって飛び去ってゆく。
その姿は、天へと昇る一筋の流星のようだった――
絶体絶命の危機に瀕していたその前に、光を纏いし何かが舞い降りた。
それはまさしく――救世主。オークの足を片手で受け止めながら、黄色く光る眼でじっと少女を見つめている。
力強くも暖かさを感じる視線を受け、彼女の口は思考よりも先に言葉を紡いでいた。
ありがとう、と。
救世主は――ハジメはゆっくりと頷くとオークへと視線を戻し、
「テャッ!」
雄々しく叫びをあげた。オークの体がみるみるうちに持ち上げられ、背中から地面へと叩きつけられた。
「アグッ!!」
何とか受け身を取ったオークだったが、地面をえぐるその威力にうめき声を漏らす。
よろめきながらすぐに立ち上がる彼を前に、ハジメは構える。
腰を低く落とし、背中を丸く曲げ、両手は手刀の形に。じっと敵を見据え、出方をうかがう。
「ヨクモジャマシタナ、チビガ!」
激昂とともにその丸太の如く太き腕を振るい、大鬼が彼を狙う。
「!?」
だが、そんなものは何の意味もなさなかった。あっさりと拳を受け止められるオーク。
狼狽する彼をよそに、今度はハジメの番がやってきた。
身体の赤い部分が輝いたかと思うと、一気に全身が同じ色に染まる。
「カワッタ!?」
全身の筋肉量が増した真紅の戦士の姿を見て、さらにうろたえる大鬼。
「ハアァ……!」
拳を受け止めたまま気合を込め、ハジメは自身を中心として回転し始める。
2度、3度と回るうちに、オークの足は地面を離れた。
「デェア!」
そして間もなく、その巨体は宙を舞った。激しいきりもみを伴いつつ飛んで行くその姿は、みるみるうちに小さくなってゆく。
が。それだけでは終わらない。ハジメは腕を交差させ、その体を再び輝かせる。
今度は紫色の光が全身を包むと――
「ショアッ!」
掛け声とともに、それは飛び立った。
先ほどまでとは対照的に、筋肉量の減ったシルエット。紫電の勇者が、空を行く。
5秒も経たぬうちにいまだ飛び続けるオークとすれ違い、
「セアッ!」
加速と全体重を乗せた蹴りを見舞った。
「グゲェ!」
再び大地に叩きつけられる大鬼。その口からは苦悶の声があふれ出る。
「ク、クソ……ナゼダ!?ナゼアンナチビニ!」
信じられない、といった様子で怒りをあらわにする大鬼の姿をよそに、またもハジメは姿を変える。
今度は、最初に見せたあの姿だ。彼は眼下のオークを見下ろしたのち、
「チャッ!」
手のひらを手刀の形にし、両の腕を胸の前で交差させ力を込める。全身が白く光り輝くと、
「ハァァ……!」
右腕を高く突き上げ、左手を腰の位置に持ってゆくと、さらに力を集中。右腕にエネルギーを収束させ――
「セェヤァ――ッ!」
雄叫びとともに、解き放った。
胸の前で横向きに構えた右腕から、直線状に光の奔流が打ち出される。
それは瞬く間にオークへと直撃。そして――
「ギッ……ウグアァァ――ッ!」
数秒に渡る照射ののち、オークの断末魔の叫びが響く。大爆発を起こし、夜空が明るく照らされた。
それを見届けると、戦士は星空へ向かって飛び去ってゆく。
その姿は、天へと昇る一筋の流星のようだった――
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる