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16 新たなる動乱の予感
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あれから一週間ほど経った頃。宿でいつものように目を覚ました俺は、マリスへ尋ねる。
「マリス、今日のスケジュール教えて」
『本日は15時よりアルバイトの面接となっております』
「ありがとう」
アロガが起こした事件の影響で、この街は随分寂しくなった。
あれだけ賑わっていた広場も閑散とし、どこの店も閉店ラッシュ。
数百人単位の死傷者が出た故に当然ではあるが、それでも無情なものだ。
ようやく取り付けた食い扶持を逃すわけにはいかないと気合を入れたその時。
ドアをノックする音が聞こえた。従業員にしては随分乱雑な叩き方だな――誰だろう?
そう思いつつドアを開ける。
そこには――
「お前に用がある。一緒に来てもらうぞ」
相変わらず眉間にしわを寄せた顔のスクトさんが立っていた。
俺は言う。
「あの……俺、またなんかやらかしましたか?」
「まぁ、ある意味な・・・・・・・いいからついて来い」
「いいですけど……あぁでもその前に」
「何だ」
「バイトの面接……断ってきます」
「チッ。早く済ませて来い」
「は、はーい……」
そして30分ほどして。向こうの人へ謝り倒し、面接を断ってきた俺はスクトさんが待つ宿の前に帰ってきていた。
「すいません、戻りました!」
「おう。……すまねぇな」
「いえ。それにしても、いったい何が?」
「詳細は移動しながら話すが……お前を《レイヴンズ》本部へ連れて来いって話だ」
「え……」
「とにかく来い」
「わ、わかりました」
そう言って歩き出したスクトさんを、少し遅れて追う。
やれやれ、また厄介ごとが起こりそうな予感がするな――
※
「あとどのくらいかかりそうですか?」
「もう少しだ」
そして数十分後。
俺たちはレイヴンズ本部に向けて移動していた。
「それにしても、こんな乗り物があるなんて驚きました」
「キュリオのやつが開発したんだとよ。しかし、自前の動力だけで動かせるとは大したもんだ」
「ええ、ホントですね。しかも自動だなんて」
俺たちが今乗っているこの乗り物。これは例えるなら――そう、護送車だ。
地球に存在しているそれとほとんど遜色のないデザインをしたこの車は、何と自動運転である。
だが、俺の脳裏にふと疑問が浮かぶ。
エンデの屋敷へ行った時、俺は馬車へ乗った。
それだけではなく、この世界では馬車もしくは人力車が一般的で、こんな現代的な車は一度たりとも見たことがない。
そもそも、レイヴンズの装備や設備自体、この世界の文化レベルと比べて妙にオーバーテクノロジーな部分がある。
道行く人は槍や剣を手にしているというのに、彼らが持っているのはライフルやハンドガンと言った特殊部隊じみた装備。
それにこの前行ったキュリオさんのラボだってそうだ。モニターやキーボードなど、どう見ても地球の文化レベルと同等かそれ以上のテクノロジーが用いられている。
その違和感をぬぐえず――スクトさんへ尋ねた。
「それにしても、キュリオさんってどこでこんな技術力を手に入れたんでしょうか」
「詳しいことは知らん。……が、アイツから昔聞いたことはあるな」
「何をです?」
「アイツにこういう知識を与えたのは、アイツの爺さんらしいって話だ」
「へぇ……」
キュリオさんの祖父――か。その人が彼女にこんな知識を与えたとするのなら、まさか――?
俺の脳裏に、あるワードが過る。
(まさか、その人も《転生者》なのか……?)
この世界に自分以外の《転生者》がいるというのは、アロガの例で実証されている。
ならなぜこんな技術を彼は?
キュリオさんの祖父だし、少なくとも治安維持が目的の組織に運用されているのだから、きっと悪い人ではないのだろうけれど……
そんなことを思っていると。
「っつ、スクトさん!前!」
「うおっ!?」
ふと前を見た俺の眼に、近くの崖から飛び出してくる人影が映った。
慌てて緊急停止ボタンを押し、車を止めるスクトさん。
俺たちはドアを開けて飛び出す。
「おい、どういうつもりだ!急に飛び出しやがって!」
怒鳴り散らし、目の前にいた男を睨むスクトさんだったが、男は応えない。それどころか――
「……なるほどな、そういう事かよ」
彼は懐から、ナイフを取り出し始めたのだ。辺りを見渡すと、仲間らしき男たちが俺たちを囲んでいる。
どうやら、彼らは山賊の類のようだ――
「ククク、命が惜しけりゃ金目のモン置いていきやがれ……」
何とまぁテンプレ全開のセリフを吐く男に、スクトさんが笑いを漏らす。
「フン、お前ら運が悪かったな」
「何だとぉ!」
スクトさんは上着を脱ぎ、隊員服姿となる。その背中にあしらわれたエンブレムを見て、たちまち男たちの表情は青ざめた。
「ゲッ……《レイヴンズ》っ!?お頭、どういうことだよ!?」
「と、とにかくやっちまえーっ!」
困惑しつつもその号令で飛び出す彼らを見つつ、スクトさんは叫んだ。
「お前ら全員まとめてしょっ引いてやるよ!」
※
そして、数分後。瞬く間に返り討ちにされた山賊たちはあえなくお縄。
俺が《生成》で作り出した手錠と鎖に繋がれ、まとめて護送車へ放り込まれた。
後ろで愚痴る声を聴きながら、俺たちは再び目的地を目指していた――
「あそこだ」
そして数分後。スクトさんが言った。前方を見ると、遠くに巨大な建物が映っている。
あれが――《レイヴンズ》の本部か。
果たして今度は一体、何が起こるというのだろうか。
8割の不安と2割のワクワクを胸に、俺は近づきつつある建物を見つめていた――
「マリス、今日のスケジュール教えて」
『本日は15時よりアルバイトの面接となっております』
「ありがとう」
アロガが起こした事件の影響で、この街は随分寂しくなった。
あれだけ賑わっていた広場も閑散とし、どこの店も閉店ラッシュ。
数百人単位の死傷者が出た故に当然ではあるが、それでも無情なものだ。
ようやく取り付けた食い扶持を逃すわけにはいかないと気合を入れたその時。
ドアをノックする音が聞こえた。従業員にしては随分乱雑な叩き方だな――誰だろう?
そう思いつつドアを開ける。
そこには――
「お前に用がある。一緒に来てもらうぞ」
相変わらず眉間にしわを寄せた顔のスクトさんが立っていた。
俺は言う。
「あの……俺、またなんかやらかしましたか?」
「まぁ、ある意味な・・・・・・・いいからついて来い」
「いいですけど……あぁでもその前に」
「何だ」
「バイトの面接……断ってきます」
「チッ。早く済ませて来い」
「は、はーい……」
そして30分ほどして。向こうの人へ謝り倒し、面接を断ってきた俺はスクトさんが待つ宿の前に帰ってきていた。
「すいません、戻りました!」
「おう。……すまねぇな」
「いえ。それにしても、いったい何が?」
「詳細は移動しながら話すが……お前を《レイヴンズ》本部へ連れて来いって話だ」
「え……」
「とにかく来い」
「わ、わかりました」
そう言って歩き出したスクトさんを、少し遅れて追う。
やれやれ、また厄介ごとが起こりそうな予感がするな――
※
「あとどのくらいかかりそうですか?」
「もう少しだ」
そして数十分後。
俺たちはレイヴンズ本部に向けて移動していた。
「それにしても、こんな乗り物があるなんて驚きました」
「キュリオのやつが開発したんだとよ。しかし、自前の動力だけで動かせるとは大したもんだ」
「ええ、ホントですね。しかも自動だなんて」
俺たちが今乗っているこの乗り物。これは例えるなら――そう、護送車だ。
地球に存在しているそれとほとんど遜色のないデザインをしたこの車は、何と自動運転である。
だが、俺の脳裏にふと疑問が浮かぶ。
エンデの屋敷へ行った時、俺は馬車へ乗った。
それだけではなく、この世界では馬車もしくは人力車が一般的で、こんな現代的な車は一度たりとも見たことがない。
そもそも、レイヴンズの装備や設備自体、この世界の文化レベルと比べて妙にオーバーテクノロジーな部分がある。
道行く人は槍や剣を手にしているというのに、彼らが持っているのはライフルやハンドガンと言った特殊部隊じみた装備。
それにこの前行ったキュリオさんのラボだってそうだ。モニターやキーボードなど、どう見ても地球の文化レベルと同等かそれ以上のテクノロジーが用いられている。
その違和感をぬぐえず――スクトさんへ尋ねた。
「それにしても、キュリオさんってどこでこんな技術力を手に入れたんでしょうか」
「詳しいことは知らん。……が、アイツから昔聞いたことはあるな」
「何をです?」
「アイツにこういう知識を与えたのは、アイツの爺さんらしいって話だ」
「へぇ……」
キュリオさんの祖父――か。その人が彼女にこんな知識を与えたとするのなら、まさか――?
俺の脳裏に、あるワードが過る。
(まさか、その人も《転生者》なのか……?)
この世界に自分以外の《転生者》がいるというのは、アロガの例で実証されている。
ならなぜこんな技術を彼は?
キュリオさんの祖父だし、少なくとも治安維持が目的の組織に運用されているのだから、きっと悪い人ではないのだろうけれど……
そんなことを思っていると。
「っつ、スクトさん!前!」
「うおっ!?」
ふと前を見た俺の眼に、近くの崖から飛び出してくる人影が映った。
慌てて緊急停止ボタンを押し、車を止めるスクトさん。
俺たちはドアを開けて飛び出す。
「おい、どういうつもりだ!急に飛び出しやがって!」
怒鳴り散らし、目の前にいた男を睨むスクトさんだったが、男は応えない。それどころか――
「……なるほどな、そういう事かよ」
彼は懐から、ナイフを取り出し始めたのだ。辺りを見渡すと、仲間らしき男たちが俺たちを囲んでいる。
どうやら、彼らは山賊の類のようだ――
「ククク、命が惜しけりゃ金目のモン置いていきやがれ……」
何とまぁテンプレ全開のセリフを吐く男に、スクトさんが笑いを漏らす。
「フン、お前ら運が悪かったな」
「何だとぉ!」
スクトさんは上着を脱ぎ、隊員服姿となる。その背中にあしらわれたエンブレムを見て、たちまち男たちの表情は青ざめた。
「ゲッ……《レイヴンズ》っ!?お頭、どういうことだよ!?」
「と、とにかくやっちまえーっ!」
困惑しつつもその号令で飛び出す彼らを見つつ、スクトさんは叫んだ。
「お前ら全員まとめてしょっ引いてやるよ!」
※
そして、数分後。瞬く間に返り討ちにされた山賊たちはあえなくお縄。
俺が《生成》で作り出した手錠と鎖に繋がれ、まとめて護送車へ放り込まれた。
後ろで愚痴る声を聴きながら、俺たちは再び目的地を目指していた――
「あそこだ」
そして数分後。スクトさんが言った。前方を見ると、遠くに巨大な建物が映っている。
あれが――《レイヴンズ》の本部か。
果たして今度は一体、何が起こるというのだろうか。
8割の不安と2割のワクワクを胸に、俺は近づきつつある建物を見つめていた――
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