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39 最終章① オワリの始まり
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――マリスを倒してから、随分と経った頃。
すっかり寒くなった空気を目一杯に取り込みながら、俺は足を進めていた。
「おう、首尾はどうだ」
「まだまだ、と言ったところだね。何せこの規模の撤去作業だ。簡単には終わらないさ」
「そうか」
その行き先は、レイヴンズ本部――の跡地。
積み上がった瓦礫の山を見つめながら、俺は少し物思いに耽る。
――マリスの一件から、世界中は混乱に陥っていた。
親父の死により壊滅状態となったレイヴンズ。その隙を突き、テロ活動が活発化。ただでさえ減った人口が、更に減らされる事態となっていた。
対処に出るたびむせ返るような《悪意》に晒され続け、正直少し参っている。
まぁ、そんなことはどうだっていい。割り切って仕舞えばそれまでだからだ。
問題はーー
「……それで、アイツはまだ?」
「うん……」
アイツーーアヤツジ・ケイトの行方がまだ、掴めていないことだ。
親父の起こした事件以降、姿をくらませたままのアイツ。
爺さんの話と僅かに残った記録とを照合すると、どうやらアイツはレイヴンズに捕らえられていたらしいがーーその後の足取りは不明。
最悪の事態が一瞬脳裏を過ぎったが、すぐに首を振り、払う。
「何だかんだ、アイツは運が良い。きっとーー生きてるさ」
「そう、だよね」
塞ぎ込むキュリオに、そう言って肩へと手を置く。
我ながら下手くそな励ましだが、無いよりマシだろう。
だが、俺もまた信じたかった。
アイツはきっと、生きていると。
いつの日かヒョコッと顔を出すだろうと。
ま、ここまで心配かけたんだーー何か飯ぐらいは奢らせてやろう。とびきり高い奴をな。
そんなことを思っていた、その時。
「ッ、何コレ!?」
キュリオのやつが、突然声を上げた。
手に持った端末からも、けたたましい音量のアラートが響いている。
「オイ、何がどうした!」
「次元の歪みだって!?場所は……この真上じゃないか!」
「何だと!?」
その言葉に、俺はすぐさま空を見る。
そこには、目に見えるほどに大きく歪んだ空間。
そして、キュリオが続けた。
「気をつけて、その中から高エネルギー反応が検出できた!……どんどんこっちに近づいて……!」
キュリオが言い終わる前に、空間に穴が開き、
「ぐっ!」
「あうっ!」
凄まじい衝撃波が、俺たちを襲った。
咄嗟にキュリオを庇い、背中でそれを受ける俺。
まるで背中にハンマーを打ちつけられたかのような衝撃に、少しよろめく俺。
しかしすぐさまそちらを振り向き、睨む。
あれが敵ならーーぶっ潰すまで。
さぁ、出てきやがれ!
「来るよ!」
瞬間。漆黒の炎柱が立ち上り、空を染めた。
それは次第に人型をとりーー完全に姿を現した。
「……マリス?いや、違うか……?」
その雰囲気はかつて戦った時のマリスのものと似ていたが、違う。
感じは似ているものの、別物だ。
白と黒のカラーに彩られたそれは、一言で表すなら《骸》。
胸の中心とその目を赤く光らせ、奴は俺たちを見据えていた。
「展開ッ!」
俺はすぐにレイヴンテクターを纏い、臨戦態勢を取る。
あれは明らかに、敵だ。銃を構え、叫ぶ。
「お前、何者だ!何が目的で来た!」
「……」
無言の返答。
「何か言いやがれってんだ!」
俺が再び問うとーー
「……ウ、ゥ」
唸り声で、奴は答えた。そしてーー
「ス、ク、トォォォォォォーーーッ!」
獣のような咆哮で俺の名を叫びながら、こちらに向かって突っ込んできた!
「ぐっ!」
俺は銃を放ち、迎撃に出る。しかし奴はその全てを回避し、距離を詰めてきた。
「この!」
接近戦に備え、警棒を取り出す俺。
その数秒後、奴の拳は振るわれた。
「ちぃっ……!」
真正面から攻撃を受け止めたはいいが、予想以上の力だ。
片腕で繰り出された攻撃を、両手で力一杯押し込んでやっと踏み止まれるほどの威力。
どうしたものかーー少しの焦りを抱いた、その瞬間。
「何っ!?ぐぁっ!」
俺の右腕が、たちまち黒い炎に覆われた。
装甲を容易く焼き尽くし、中身へ直に熱が伝わってくる。
「う、がっ……ぐっ、このっ!」
そうして怯んだ俺の隙を見逃さず、奴は俺の首を掴み取った。
足をバタつかせて抵抗するも、俺の身体はゆっくりと浮かび上がっていきーー
「があぁぁぁぁぁーーーっ!」
俺の全身は、炎で包まれた。
逃げることもできず、ただただ絶叫を上げるばかり。
「撃てっ、撃て!」
「うぉぉぉぉっ!」
かすかに聞こえたその声――俺以外のレイヴンズ元隊員が、援護射撃をしていたのだ。
しかし、俺の身体は依然として宙に浮いたまま。
もはや意識も薄れてきたーーその時。
「ぐ、あぐっ……!」
俺は突然、地面へと放り出された。
というより、奴が俺を落としたと言ったほうがいい。
霞む視界で奴を見ると、
「ウゥ、アァ、ウグッ……!」
頭を抱え、全身を震わせーー奴は何故か、ひとりでに苦しみもがいていた。
そして、その直後。
「ウグギヤァァァァーーーッ!」
奴は上体を大きくのけぞらせ、空へ向かって絶叫。
そしてそのままーー姿を消した。
「スクトッっ!」
遠のく意識の中、聴こえるキュリオの声。とりあえずは、助かったらしい。
「何なんだ、奴、は……」
それだけ言い残すと、俺は限界を迎えーー意識を手放した。
※
――どこかの荒地。
「ハァッ、ハァッ、ウゥ……」
そこには、玉のような汗を流しながら膝をつき、息を荒げる一人の青年がいた。
彼は震える己の手を見つめると、更に息を荒げさせ、
「何で、何でだよ……」
微かに脳裏によぎるビジョン。
それは彼にとって、想像もしたくないような光景であった。
「俺、俺は……」
「スクトさんを、殺そうと……!」
そう。
先刻カイセ・スクトを襲った未知の敵。
その正体こそーーアヤツジ・ケイトだったのだ!
すっかり寒くなった空気を目一杯に取り込みながら、俺は足を進めていた。
「おう、首尾はどうだ」
「まだまだ、と言ったところだね。何せこの規模の撤去作業だ。簡単には終わらないさ」
「そうか」
その行き先は、レイヴンズ本部――の跡地。
積み上がった瓦礫の山を見つめながら、俺は少し物思いに耽る。
――マリスの一件から、世界中は混乱に陥っていた。
親父の死により壊滅状態となったレイヴンズ。その隙を突き、テロ活動が活発化。ただでさえ減った人口が、更に減らされる事態となっていた。
対処に出るたびむせ返るような《悪意》に晒され続け、正直少し参っている。
まぁ、そんなことはどうだっていい。割り切って仕舞えばそれまでだからだ。
問題はーー
「……それで、アイツはまだ?」
「うん……」
アイツーーアヤツジ・ケイトの行方がまだ、掴めていないことだ。
親父の起こした事件以降、姿をくらませたままのアイツ。
爺さんの話と僅かに残った記録とを照合すると、どうやらアイツはレイヴンズに捕らえられていたらしいがーーその後の足取りは不明。
最悪の事態が一瞬脳裏を過ぎったが、すぐに首を振り、払う。
「何だかんだ、アイツは運が良い。きっとーー生きてるさ」
「そう、だよね」
塞ぎ込むキュリオに、そう言って肩へと手を置く。
我ながら下手くそな励ましだが、無いよりマシだろう。
だが、俺もまた信じたかった。
アイツはきっと、生きていると。
いつの日かヒョコッと顔を出すだろうと。
ま、ここまで心配かけたんだーー何か飯ぐらいは奢らせてやろう。とびきり高い奴をな。
そんなことを思っていた、その時。
「ッ、何コレ!?」
キュリオのやつが、突然声を上げた。
手に持った端末からも、けたたましい音量のアラートが響いている。
「オイ、何がどうした!」
「次元の歪みだって!?場所は……この真上じゃないか!」
「何だと!?」
その言葉に、俺はすぐさま空を見る。
そこには、目に見えるほどに大きく歪んだ空間。
そして、キュリオが続けた。
「気をつけて、その中から高エネルギー反応が検出できた!……どんどんこっちに近づいて……!」
キュリオが言い終わる前に、空間に穴が開き、
「ぐっ!」
「あうっ!」
凄まじい衝撃波が、俺たちを襲った。
咄嗟にキュリオを庇い、背中でそれを受ける俺。
まるで背中にハンマーを打ちつけられたかのような衝撃に、少しよろめく俺。
しかしすぐさまそちらを振り向き、睨む。
あれが敵ならーーぶっ潰すまで。
さぁ、出てきやがれ!
「来るよ!」
瞬間。漆黒の炎柱が立ち上り、空を染めた。
それは次第に人型をとりーー完全に姿を現した。
「……マリス?いや、違うか……?」
その雰囲気はかつて戦った時のマリスのものと似ていたが、違う。
感じは似ているものの、別物だ。
白と黒のカラーに彩られたそれは、一言で表すなら《骸》。
胸の中心とその目を赤く光らせ、奴は俺たちを見据えていた。
「展開ッ!」
俺はすぐにレイヴンテクターを纏い、臨戦態勢を取る。
あれは明らかに、敵だ。銃を構え、叫ぶ。
「お前、何者だ!何が目的で来た!」
「……」
無言の返答。
「何か言いやがれってんだ!」
俺が再び問うとーー
「……ウ、ゥ」
唸り声で、奴は答えた。そしてーー
「ス、ク、トォォォォォォーーーッ!」
獣のような咆哮で俺の名を叫びながら、こちらに向かって突っ込んできた!
「ぐっ!」
俺は銃を放ち、迎撃に出る。しかし奴はその全てを回避し、距離を詰めてきた。
「この!」
接近戦に備え、警棒を取り出す俺。
その数秒後、奴の拳は振るわれた。
「ちぃっ……!」
真正面から攻撃を受け止めたはいいが、予想以上の力だ。
片腕で繰り出された攻撃を、両手で力一杯押し込んでやっと踏み止まれるほどの威力。
どうしたものかーー少しの焦りを抱いた、その瞬間。
「何っ!?ぐぁっ!」
俺の右腕が、たちまち黒い炎に覆われた。
装甲を容易く焼き尽くし、中身へ直に熱が伝わってくる。
「う、がっ……ぐっ、このっ!」
そうして怯んだ俺の隙を見逃さず、奴は俺の首を掴み取った。
足をバタつかせて抵抗するも、俺の身体はゆっくりと浮かび上がっていきーー
「があぁぁぁぁぁーーーっ!」
俺の全身は、炎で包まれた。
逃げることもできず、ただただ絶叫を上げるばかり。
「撃てっ、撃て!」
「うぉぉぉぉっ!」
かすかに聞こえたその声――俺以外のレイヴンズ元隊員が、援護射撃をしていたのだ。
しかし、俺の身体は依然として宙に浮いたまま。
もはや意識も薄れてきたーーその時。
「ぐ、あぐっ……!」
俺は突然、地面へと放り出された。
というより、奴が俺を落としたと言ったほうがいい。
霞む視界で奴を見ると、
「ウゥ、アァ、ウグッ……!」
頭を抱え、全身を震わせーー奴は何故か、ひとりでに苦しみもがいていた。
そして、その直後。
「ウグギヤァァァァーーーッ!」
奴は上体を大きくのけぞらせ、空へ向かって絶叫。
そしてそのままーー姿を消した。
「スクトッっ!」
遠のく意識の中、聴こえるキュリオの声。とりあえずは、助かったらしい。
「何なんだ、奴、は……」
それだけ言い残すと、俺は限界を迎えーー意識を手放した。
※
――どこかの荒地。
「ハァッ、ハァッ、ウゥ……」
そこには、玉のような汗を流しながら膝をつき、息を荒げる一人の青年がいた。
彼は震える己の手を見つめると、更に息を荒げさせ、
「何で、何でだよ……」
微かに脳裏によぎるビジョン。
それは彼にとって、想像もしたくないような光景であった。
「俺、俺は……」
「スクトさんを、殺そうと……!」
そう。
先刻カイセ・スクトを襲った未知の敵。
その正体こそーーアヤツジ・ケイトだったのだ!
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