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41 最終章③ リセイ無き、獣の咆哮
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「武器を捨て、投降しろ!」
「うるせぇ、負け犬どもが!今更番人気取りしてんじゃねぇよ!」
互いに獲物を構え、睨み合う二組の団体。その片方の後ろには――非武装の民間人。所謂人質だ。テロ組織《ガットネロ》の残党と、レイヴンズとが対峙しているのである。
「これが最後の警告だ。人質を解放し、投降せよ。悪いようにはしない」
レイヴンズ側にいる一人の人物――隊長格の男が、落ち着いた口調で、諭すように言う。人質をむやみに傷つけぬためだ。
しかし――
「誰がテメェらなんぞの言うことを!第一、もうこの世は終わりだぁ!ならいっそ、一花咲かせて散ってやるよ!」
彼らは、捨て鉢の様相であった。
レイヴンズの――《秩序》のシンボルの崩壊という事態が引き起こしたこのような事件は今や、あまり珍しくもない。
この世への希望を無くした人間と、尚諦めず生きようとする人間。両者が引き起こす争いは、激化の一方を辿っていた。
最早、一触即発と言った雰囲気。それを――
「オォォォォォーーーッ!」
天空から轟く咆哮が引き裂いた。
獄炎の柱を伴って舞い降りたそれ――変異したケイトは間に立ち、両者を睨む。
そして体を震わせると――
「ガアァァァァァァウッ!」
叫びとともに跳躍。鋭い爪を光らせ、
「ぐぁっ!」
ガットネロの構成員の一人の喉元を引き裂いた。
「別動隊、人質の確保を!」
しかし、彼はレイヴンズにとっても味方ではない。先日スクトがいた部隊を彼が襲撃したという情報は、既に伝わっていた。
隊長格の男が指示を出す。隊員は二つのグループへと別れ、人質の安全確保のため駆けた。「撃てぇーーっ!」
そしてまた一部は、現れた異形の怪物を倒すべく発砲。
「ギャアアウッ!」
だが、一筋縄で叶う相手でもない。銃撃をものともせず振り返ったケイトは、絶叫を上げながら彼らへと襲い掛かる。
「う、うわぁっ、がっ!」
一番前方にいた隊員へと飛び掛かったケイトはマウントの態勢を取り、その顔面を殴り潰した――その瞬間。
「ウゥ、ガ、ギャアアアーーッ!」
ケイトの悲鳴が轟いた。殴打の衝撃で、自身の腕の骨が砕けたのだ。右手を抑え、苦しみもがくケイト。
だが、その僅か数秒後――
「アッ、ガ、ギギッ!オッ!」
ケイトが呻く。すると、その右腕が奇妙に震えだし、
「オオッ、フゥーッ、フゥーッ!」
砕けた骨が怪音を立てて再生。瞬く間に動くようになったのだ。
「ば、化け物め……!」
あまりにも常軌を逸した光景に、思わず一人の男が呟く。
「アアアア―――――ッ!」
そうして傷を癒したケイト。慟哭ともとれる声を上げながら、次なる標的へと襲い掛かる。
そんな様子を――
「無茶だ!その傷で何ができるって言うんだ!?」
「行くしかねぇだろ!このまま黙って見てられるか!」
「君の傷はまだ言えていない、死ぬぞ!」
隊員達のレイヴンテクターを通しラボにてモニタリングしていたキュリオら。
惨劇を止めるべく出撃しようとするスクト。が、それをキュリオとサクヤは必死にとどめた。
当然である。彼は今朝意識を取り戻したばかりなのだから。未だ痛む傷に立つのがやっとなほどの彼を、戦場に赴かせるわけにはいかなかったのだ。
「うっ、うわぁぁぁーーっ!」
「!」
そうやって彼らがいさかいを繰り広げるうち――悲鳴が轟いた。
信号が途絶し、残ったのは電子音だけ。全滅したという証拠だった。
「クソっ!」
壁に拳を打ち付け、吐き捨てるスクト。その表情には、怒りと悲しみとが見て取れる。
それは、キュリオらもまた同じであった。
為す術もなく、一瞬のうちに奪われた命を思うと――悔しさがこみ上げる。
「……回収に行ってくる」
だが、そうしてばかりもいられない。犠牲者をこれ以上増やさぬために、彼ら、彼女らは前を向かなければならないのだ。
キュリオはスクトを祖父に任せ、現場に残った遺品から調査を行うべく、一人ラボを出た――
※
数時間後――どこかの廃墟。月明りが二つの人影を映し出す。
「ううっ、あ、あぅ……」
一人は、苦しげな声で呻く青年。
「マスター、ありがとうございます。これでまた一つ、私の夢が完成に近づきました」
もう一人は彼を労う女性――ケイトとマリスである。
「マリ、ス、おれ、は」
最早言葉も途切れ途切れとなるほどに衰弱したケイト。そんな彼にマリスは言う。
「ええ、疲れたのですね。どうぞ、私の胸の中でお眠りください。私はいつだって、貴方の側にいますから」
マリスはケイトを抱きしめると、その頭を撫でた。
「あ、あ、ぅ……」
同時に、ケイトの意識は途切れる。その瞳が閉じられると――
「……では、また朝に」
彼の身体は、炎となって消滅した。
それを見送り、一人となったマリス。彼女は月を眺めると――
「フフ……計画は順調、と言ったところかな」
口調を変え、呟いた――
「うるせぇ、負け犬どもが!今更番人気取りしてんじゃねぇよ!」
互いに獲物を構え、睨み合う二組の団体。その片方の後ろには――非武装の民間人。所謂人質だ。テロ組織《ガットネロ》の残党と、レイヴンズとが対峙しているのである。
「これが最後の警告だ。人質を解放し、投降せよ。悪いようにはしない」
レイヴンズ側にいる一人の人物――隊長格の男が、落ち着いた口調で、諭すように言う。人質をむやみに傷つけぬためだ。
しかし――
「誰がテメェらなんぞの言うことを!第一、もうこの世は終わりだぁ!ならいっそ、一花咲かせて散ってやるよ!」
彼らは、捨て鉢の様相であった。
レイヴンズの――《秩序》のシンボルの崩壊という事態が引き起こしたこのような事件は今や、あまり珍しくもない。
この世への希望を無くした人間と、尚諦めず生きようとする人間。両者が引き起こす争いは、激化の一方を辿っていた。
最早、一触即発と言った雰囲気。それを――
「オォォォォォーーーッ!」
天空から轟く咆哮が引き裂いた。
獄炎の柱を伴って舞い降りたそれ――変異したケイトは間に立ち、両者を睨む。
そして体を震わせると――
「ガアァァァァァァウッ!」
叫びとともに跳躍。鋭い爪を光らせ、
「ぐぁっ!」
ガットネロの構成員の一人の喉元を引き裂いた。
「別動隊、人質の確保を!」
しかし、彼はレイヴンズにとっても味方ではない。先日スクトがいた部隊を彼が襲撃したという情報は、既に伝わっていた。
隊長格の男が指示を出す。隊員は二つのグループへと別れ、人質の安全確保のため駆けた。「撃てぇーーっ!」
そしてまた一部は、現れた異形の怪物を倒すべく発砲。
「ギャアアウッ!」
だが、一筋縄で叶う相手でもない。銃撃をものともせず振り返ったケイトは、絶叫を上げながら彼らへと襲い掛かる。
「う、うわぁっ、がっ!」
一番前方にいた隊員へと飛び掛かったケイトはマウントの態勢を取り、その顔面を殴り潰した――その瞬間。
「ウゥ、ガ、ギャアアアーーッ!」
ケイトの悲鳴が轟いた。殴打の衝撃で、自身の腕の骨が砕けたのだ。右手を抑え、苦しみもがくケイト。
だが、その僅か数秒後――
「アッ、ガ、ギギッ!オッ!」
ケイトが呻く。すると、その右腕が奇妙に震えだし、
「オオッ、フゥーッ、フゥーッ!」
砕けた骨が怪音を立てて再生。瞬く間に動くようになったのだ。
「ば、化け物め……!」
あまりにも常軌を逸した光景に、思わず一人の男が呟く。
「アアアア―――――ッ!」
そうして傷を癒したケイト。慟哭ともとれる声を上げながら、次なる標的へと襲い掛かる。
そんな様子を――
「無茶だ!その傷で何ができるって言うんだ!?」
「行くしかねぇだろ!このまま黙って見てられるか!」
「君の傷はまだ言えていない、死ぬぞ!」
隊員達のレイヴンテクターを通しラボにてモニタリングしていたキュリオら。
惨劇を止めるべく出撃しようとするスクト。が、それをキュリオとサクヤは必死にとどめた。
当然である。彼は今朝意識を取り戻したばかりなのだから。未だ痛む傷に立つのがやっとなほどの彼を、戦場に赴かせるわけにはいかなかったのだ。
「うっ、うわぁぁぁーーっ!」
「!」
そうやって彼らがいさかいを繰り広げるうち――悲鳴が轟いた。
信号が途絶し、残ったのは電子音だけ。全滅したという証拠だった。
「クソっ!」
壁に拳を打ち付け、吐き捨てるスクト。その表情には、怒りと悲しみとが見て取れる。
それは、キュリオらもまた同じであった。
為す術もなく、一瞬のうちに奪われた命を思うと――悔しさがこみ上げる。
「……回収に行ってくる」
だが、そうしてばかりもいられない。犠牲者をこれ以上増やさぬために、彼ら、彼女らは前を向かなければならないのだ。
キュリオはスクトを祖父に任せ、現場に残った遺品から調査を行うべく、一人ラボを出た――
※
数時間後――どこかの廃墟。月明りが二つの人影を映し出す。
「ううっ、あ、あぅ……」
一人は、苦しげな声で呻く青年。
「マスター、ありがとうございます。これでまた一つ、私の夢が完成に近づきました」
もう一人は彼を労う女性――ケイトとマリスである。
「マリ、ス、おれ、は」
最早言葉も途切れ途切れとなるほどに衰弱したケイト。そんな彼にマリスは言う。
「ええ、疲れたのですね。どうぞ、私の胸の中でお眠りください。私はいつだって、貴方の側にいますから」
マリスはケイトを抱きしめると、その頭を撫でた。
「あ、あ、ぅ……」
同時に、ケイトの意識は途切れる。その瞳が閉じられると――
「……では、また朝に」
彼の身体は、炎となって消滅した。
それを見送り、一人となったマリス。彼女は月を眺めると――
「フフ……計画は順調、と言ったところかな」
口調を変え、呟いた――
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