「男の奴隷は必要ない」と捨てられた俺が、伝説の勇者になった件 ~俺たちの名は、エヴォリュート・ソル~

さぼてん

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第二話 水底の悪夢 ~プロローグ~

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――背の高い木々に囲まれた、巨大な湖。夜明けの太陽を美しく反射させるその湖畔に、一人の少女がいた。


「~~~♪」

少女は、唄を歌っていた。心地よく、明るい唄を。そんな時だった。ザバァ、と湖が大きく波打つ。


「ヌシ様――っ!」

それを見た少女は、明るい笑顔で手を振り、何かの名を呼んだ。


「~~~♪」

そしてその何かに聞かせるように、唄い続けた。


湖の中に潜む、黄色い二対の眼に――



第二話

水底の悪夢

奇械水棲獣アイアンス 

登場










「すっげぇ……!」

それが、アサヒの第一声だった。

(すげぇ!すげぇよソル!ほんとに異世界だ!)

彼は心の内で、ソルに抑えきれぬ興奮を伝える。


目の前に広がるのは、まるでゲーム――とりわけRPG――や漫画の中に出てくるような、レンガ造りが主体の街並み。

通りを行きかう、それぞれに武器を携えた人々。

冒険家の父から継いだ血が、そうさせるのだろうか?

まさしく『異世界』といったこの風景に、彼は子供のように目を輝かせていた。


《アサヒ。本来の目的を忘れていないか?》

それを諫めるように語り掛けるソル。

(大丈夫、忘れちゃいないぜ)

――彼らがこの世界にやってきたのは、ついさっきのことだった。次元奴隷商の船が発する反応を追い、次元を超えてここにたどり着いたのだ。


(けどよソル。)

《何だ?》

(本当にここにあいつらがいんのか?見た感じ、なんか平和そうだけどさ)

《平和の裏には、常に影があるものだ。奴らはその影に潜み、平和を脅かす》

(……そっか。そうだよな)


こうして精神内での会話を切り上げると、アサヒは軽く手を打ち合わせ、気合を入れる。

「おっし、じゃあとりあえず聞き込みだな!」



アサヒは意気揚々と、通りの中へと入っていった――







――数時間後。アサヒは湖畔にて一人、佇んでいた。

「……」

とても、渋い顔をして。


言葉や文字は、ソルが仲介してくれているおかげで問題ない。
調査は進展しなかったが、いきなり有益な情報が得られるとはハナから思っていないため、問題ではない。
では、何が問題なのだろうか?
それは――



「腹、減ったあぁぁぁぁーーっ!」



そう、空腹だ。

彼は四肢を投げ出し、空に向かって叫んだ。
彼は異世界人――当然、この世界の通貨など何一つ持っていない。
しかし人として食い逃げや窃盗に手を染めるわけにもいかない。
ならばどうするか?その答えが――


《やはり……釣れんな》

釣りだった。その辺りにあった木や蔦で釣竿を自作したまではいいが、こんなものに魚が食いつくはずはなかった。


「やべぇ、大声出したらまた腹が」
彼はすっかりまいってしまっていた。

《いっそ、直接潜ってみるというのはどうだ?》
ソルがぼそりとつぶやく。
「いいね!それだ!」
アサヒはそれに食い気味で賛同。上着を脱がんとし始める。
《お、おい!よせ、冗談だ!》
「よーし、目指すぜ大漁ぉーーっ!」
《ま、待つんだアサヒ!?アサヒぃーーっ!!》
――もう、彼は疲れていた。

そんな時。

「あのぅ……何、してるんですか?」

彼の後方から声がした。アサヒが振り向くと、そこには水色の長い髪をした少女が立っていた――
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