「男の奴隷は必要ない」と捨てられた俺が、伝説の勇者になった件 ~俺たちの名は、エヴォリュート・ソル~

さぼてん

文字の大きさ
13 / 29

第三話 月夜のツルギ ~プロローグ~

しおりを挟む
「ううっ……ああっ!ぐあぁぁーーっ!」

ベッドに横たわり、悲痛な叫びをあげながらのたうち回るアサヒ。
その全身には、紫色のシミのようなものがじわじわと広がりつつあった。

何故、彼がこのような状態に陥ったのか?それは数時間前に遡る――

第三話

月夜のツルギ

劇毒刃獣ブラード
登場




「よう、あんちゃん。何にする?」
「んー、じゃあコレひとつで」
「あいよ」

――5時間ほど前、朝。情報取集と腹ごしらえのため、アサヒは小さな町を訪れていた。
西部劇に出てきそうな雰囲気のその町にある酒場は、多くの人々で賑わっていた。

「ほれ、おまちどう!」
「っしゃ、いただきます!」
アサヒが注文したのは、『巨鳥の足焼き』と呼ばれる料理。
見た目そのものは地球の鶏肉の足部分と何ら変わりはなかったが、そのサイズは段違いに大きい。
こんがりと焼き上げたそれは、食欲をそそる匂いを放っていた――

《こんな時間からそんな濃いものを食べて大丈夫なのか?》
(次いつまともなもん食えるかわかんねぇだろ?今のうちに食っとくんだよ)
《まぁ、それもそうか》

「そういや聞いたか?また例のバケモノが出たんだってさ」
彼が料理に舌鼓を打っている最中。他の席に座る客がそんな話をしているのが耳に入った。

「ああ聞いた。でっかいムカデみたいなやつのことだろだろ?」
「何とか逃げ帰ったやつの話だと、頭を切り飛ばしても平気だったとか」
「なんじゃそりゃ!?まるっきりバケモンじゃねぇか」
「だからバケモノだって」

「なぁ、おっちゃん」
「どうした?」
アサヒはしばらく聞き耳を立てたのち、店員の男に話しかける。
「ムカデのバケモノって?」
「何だあんちゃん、知らねぇのか?」
「ここには来たばっかで」
「教えてやってもいいが……どうしよっかなぁ」
男はわざとらしくもったいぶると右手の指で丸を作り、軽く目配せをする。
アサヒはしばらく考えたのち――

「ちぇーっ、わかったよ」
袋から食事代の銀貨を3枚、さらに追加で情報代分の3枚を取り出し手渡した。日本円換算にして1枚200円――しめて1200円。手痛いものの、必要な出費と割り切った。
「まいどあり」
男はにんまりと笑みを浮かべてそれを受け取ると、話を始めた。

「最近、この近くの洞窟あたりで出てくるようになったバケモンのことさ。なんでも、普通のモンスターとはわけが違うらしい」
「どういうことだよ?」
「異様に強いんだよ、そいつ。あんちゃんが今食ってる巨鳥の足だって元は鳥型のモンスターだ」
男は皿の上の料理を指さしながら言う。
「だが人間の手に負える範疇だからこそ、こうやって食材として出回ってる」
「けどそいつは違う、ってことか」
「ああ。行商人が結構な数襲われててな……まずいと踏んだ王都が軍から討伐隊を出したが、ものの見事に全滅したぐらいだ」
「なるほど」
「けどよ……」
そこまで言うと男は一呼吸置く。

「おかしいとは思わねぇか?」
「何が?」
「考えてもみろよ。そんなバケモノが突然湧いて出てくるなんて、普通はありえねぇだろ」
「……確かに」
「これは俺の想像だが、思うんだ……あれは、誰かが持ち込んだものなんじゃねぇか、って」
「!」
その言葉に、確信めいたものを感じるアサヒ。

「ま、想像に過ぎないけどな。第一、そんなバケモンどこから持ち込むんだー、って話だしよ」
男はそう言って笑い飛ばす。

「いや、ありがとおっちゃん。いい話聞けたよ」
「そうかい。ま、あんちゃんも旅人なら気ぃ付けなよ」
「ああ!」
そう言うと、アサヒは席を立ち、店を出ていこうとするが――

「待ちな」
男が彼を呼び止める。アサヒが振り返ると、
「おわっ!」
銀貨が3枚、彼の手元めがけて放り投げられた。慌てて受け止めるアサヒ。
「そんな素直じゃ、いつか足元すくわれるぜ」
男はにやりとした笑みを浮かべたまま、そう言った。
「あんがと、おっちゃん!」
それを袋にしまうと、アサヒは改めて店を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...