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第三話 月夜のツルギ ~プロローグ~
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「ううっ……ああっ!ぐあぁぁーーっ!」
ベッドに横たわり、悲痛な叫びをあげながらのたうち回るアサヒ。
その全身には、紫色のシミのようなものがじわじわと広がりつつあった。
何故、彼がこのような状態に陥ったのか?それは数時間前に遡る――
第三話
月夜のツルギ
劇毒刃獣ブラード
登場
※
「よう、あんちゃん。何にする?」
「んー、じゃあコレひとつで」
「あいよ」
――5時間ほど前、朝。情報取集と腹ごしらえのため、アサヒは小さな町を訪れていた。
西部劇に出てきそうな雰囲気のその町にある酒場は、多くの人々で賑わっていた。
「ほれ、おまちどう!」
「っしゃ、いただきます!」
アサヒが注文したのは、『巨鳥の足焼き』と呼ばれる料理。
見た目そのものは地球の鶏肉の足部分と何ら変わりはなかったが、そのサイズは段違いに大きい。
こんがりと焼き上げたそれは、食欲をそそる匂いを放っていた――
《こんな時間からそんな濃いものを食べて大丈夫なのか?》
(次いつまともなもん食えるかわかんねぇだろ?今のうちに食っとくんだよ)
《まぁ、それもそうか》
「そういや聞いたか?また例のバケモノが出たんだってさ」
彼が料理に舌鼓を打っている最中。他の席に座る客がそんな話をしているのが耳に入った。
「ああ聞いた。でっかいムカデみたいなやつのことだろだろ?」
「何とか逃げ帰ったやつの話だと、頭を切り飛ばしても平気だったとか」
「なんじゃそりゃ!?まるっきりバケモンじゃねぇか」
「だからバケモノだって」
「なぁ、おっちゃん」
「どうした?」
アサヒはしばらく聞き耳を立てたのち、店員の男に話しかける。
「ムカデのバケモノって?」
「何だあんちゃん、知らねぇのか?」
「ここには来たばっかで」
「教えてやってもいいが……どうしよっかなぁ」
男はわざとらしくもったいぶると右手の指で丸を作り、軽く目配せをする。
アサヒはしばらく考えたのち――
「ちぇーっ、わかったよ」
袋から食事代の銀貨を3枚、さらに追加で情報代分の3枚を取り出し手渡した。日本円換算にして1枚200円――しめて1200円。手痛いものの、必要な出費と割り切った。
「まいどあり」
男はにんまりと笑みを浮かべてそれを受け取ると、話を始めた。
「最近、この近くの洞窟あたりで出てくるようになったバケモンのことさ。なんでも、普通のモンスターとはわけが違うらしい」
「どういうことだよ?」
「異様に強いんだよ、そいつ。あんちゃんが今食ってる巨鳥の足だって元は鳥型のモンスターだ」
男は皿の上の料理を指さしながら言う。
「だが人間の手に負える範疇だからこそ、こうやって食材として出回ってる」
「けどそいつは違う、ってことか」
「ああ。行商人が結構な数襲われててな……まずいと踏んだ王都が軍から討伐隊を出したが、ものの見事に全滅したぐらいだ」
「なるほど」
「けどよ……」
そこまで言うと男は一呼吸置く。
「おかしいとは思わねぇか?」
「何が?」
「考えてもみろよ。そんなバケモノが突然湧いて出てくるなんて、普通はありえねぇだろ」
「……確かに」
「これは俺の想像だが、思うんだ……あれは、誰かが持ち込んだものなんじゃねぇか、って」
「!」
その言葉に、確信めいたものを感じるアサヒ。
「ま、想像に過ぎないけどな。第一、そんなバケモンどこから持ち込むんだー、って話だしよ」
男はそう言って笑い飛ばす。
「いや、ありがとおっちゃん。いい話聞けたよ」
「そうかい。ま、あんちゃんも旅人なら気ぃ付けなよ」
「ああ!」
そう言うと、アサヒは席を立ち、店を出ていこうとするが――
「待ちな」
男が彼を呼び止める。アサヒが振り返ると、
「おわっ!」
銀貨が3枚、彼の手元めがけて放り投げられた。慌てて受け止めるアサヒ。
「そんな素直じゃ、いつか足元すくわれるぜ」
男はにやりとした笑みを浮かべたまま、そう言った。
「あんがと、おっちゃん!」
それを袋にしまうと、アサヒは改めて店を出た。
ベッドに横たわり、悲痛な叫びをあげながらのたうち回るアサヒ。
その全身には、紫色のシミのようなものがじわじわと広がりつつあった。
何故、彼がこのような状態に陥ったのか?それは数時間前に遡る――
第三話
月夜のツルギ
劇毒刃獣ブラード
登場
※
「よう、あんちゃん。何にする?」
「んー、じゃあコレひとつで」
「あいよ」
――5時間ほど前、朝。情報取集と腹ごしらえのため、アサヒは小さな町を訪れていた。
西部劇に出てきそうな雰囲気のその町にある酒場は、多くの人々で賑わっていた。
「ほれ、おまちどう!」
「っしゃ、いただきます!」
アサヒが注文したのは、『巨鳥の足焼き』と呼ばれる料理。
見た目そのものは地球の鶏肉の足部分と何ら変わりはなかったが、そのサイズは段違いに大きい。
こんがりと焼き上げたそれは、食欲をそそる匂いを放っていた――
《こんな時間からそんな濃いものを食べて大丈夫なのか?》
(次いつまともなもん食えるかわかんねぇだろ?今のうちに食っとくんだよ)
《まぁ、それもそうか》
「そういや聞いたか?また例のバケモノが出たんだってさ」
彼が料理に舌鼓を打っている最中。他の席に座る客がそんな話をしているのが耳に入った。
「ああ聞いた。でっかいムカデみたいなやつのことだろだろ?」
「何とか逃げ帰ったやつの話だと、頭を切り飛ばしても平気だったとか」
「なんじゃそりゃ!?まるっきりバケモンじゃねぇか」
「だからバケモノだって」
「なぁ、おっちゃん」
「どうした?」
アサヒはしばらく聞き耳を立てたのち、店員の男に話しかける。
「ムカデのバケモノって?」
「何だあんちゃん、知らねぇのか?」
「ここには来たばっかで」
「教えてやってもいいが……どうしよっかなぁ」
男はわざとらしくもったいぶると右手の指で丸を作り、軽く目配せをする。
アサヒはしばらく考えたのち――
「ちぇーっ、わかったよ」
袋から食事代の銀貨を3枚、さらに追加で情報代分の3枚を取り出し手渡した。日本円換算にして1枚200円――しめて1200円。手痛いものの、必要な出費と割り切った。
「まいどあり」
男はにんまりと笑みを浮かべてそれを受け取ると、話を始めた。
「最近、この近くの洞窟あたりで出てくるようになったバケモンのことさ。なんでも、普通のモンスターとはわけが違うらしい」
「どういうことだよ?」
「異様に強いんだよ、そいつ。あんちゃんが今食ってる巨鳥の足だって元は鳥型のモンスターだ」
男は皿の上の料理を指さしながら言う。
「だが人間の手に負える範疇だからこそ、こうやって食材として出回ってる」
「けどそいつは違う、ってことか」
「ああ。行商人が結構な数襲われててな……まずいと踏んだ王都が軍から討伐隊を出したが、ものの見事に全滅したぐらいだ」
「なるほど」
「けどよ……」
そこまで言うと男は一呼吸置く。
「おかしいとは思わねぇか?」
「何が?」
「考えてもみろよ。そんなバケモノが突然湧いて出てくるなんて、普通はありえねぇだろ」
「……確かに」
「これは俺の想像だが、思うんだ……あれは、誰かが持ち込んだものなんじゃねぇか、って」
「!」
その言葉に、確信めいたものを感じるアサヒ。
「ま、想像に過ぎないけどな。第一、そんなバケモンどこから持ち込むんだー、って話だしよ」
男はそう言って笑い飛ばす。
「いや、ありがとおっちゃん。いい話聞けたよ」
「そうかい。ま、あんちゃんも旅人なら気ぃ付けなよ」
「ああ!」
そう言うと、アサヒは席を立ち、店を出ていこうとするが――
「待ちな」
男が彼を呼び止める。アサヒが振り返ると、
「おわっ!」
銀貨が3枚、彼の手元めがけて放り投げられた。慌てて受け止めるアサヒ。
「そんな素直じゃ、いつか足元すくわれるぜ」
男はにやりとした笑みを浮かべたまま、そう言った。
「あんがと、おっちゃん!」
それを袋にしまうと、アサヒは改めて店を出た。
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