先生

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「また、ボードに頭ぶつけないでよ」
「俺、華菜みたいにドン臭くねぇから」

私はまた、バスケ部を見に来ていた。

(私、雄太君を好きになれば良かった)

「次は試合形式でやる」

「華菜~」
「ヒカリ」
「また、バスケ部?」
「うん」
「大丈夫?」
「何が?」
「何がって」
「私は大丈夫、今日は雄太君目当てだから」
「雄太?アレもイケメンだからねぇ」
「こないだ、ダンクしようとしたらボードに頭ぶつけて流血」
「アハハハ、雄太らしいわ」
「私、帰るね」
「帰っちゃうの?」
「一人暮らしする家を見つけないと」
「一人暮らしするんだ」
「一緒には住めないよ」
「そうだね、私も付き合うよ」
「お母さんと待ち合わせてるんだ」
「そっか、良い物件あるといいね」
「ちゃんと、ヒカリの部屋も用意するからね」
「楽しみが増えた」
「楽しみにしててね」

母と落ち合うと不動産屋に急いだ。

「そうねぇ、ここの物件なんて良いんじゃない?」
「3部屋もあるね」
「家賃も手頃だし」
「内覧されてみますか?」
「行きます、行きたい」

内覧すると、すぐ気に入った。

「お父さんと相談してから決めましょ」
「そうだね」

鞄の中を見ると手紙が入っていた。

(手紙...)
<話がある、18時にこの間の公園で待ってろ>
(これ、先生の字)

私はすぐにヒカリに電話をした。

「行って話でも聞いてあげれば?」
「でも」
「華菜も話さなきゃダメじゃない?このままでいいの?」
「うん」
「行きたくない気持ちは分かるけどさ」
「うん」

電話を切ると公園に走った。
ベンチに着くと手を引っ張られた。

「先...生」

先生は抱き寄せた。

「何故、俺を避ける」
「...」

先生は私の手を引くと家に連れて行った。

「先生」

夜景を見つめながら先生と呼んだ。

「もう、私の事は諦めて下さい」
「何故だ」
「私より幸せにならないといけない人がいますよね」

先生は表情を変えなかった。

「それに、学校にバレたら大変です」
「俺は構わない」
「先生が良くても私は辛いです」
「絶対守る」
「...」
「俺は本気だ」
「今日は帰ります」
「送る」
「大丈夫です」

逃げるように家に帰った。

「ただいま」
「お帰り、早かったわね」
「うん」
「お父さんに物件の紙見せたら、いいんじゃないだって」
「そう」
「どうかした?」
「ううん」
「まだ時間はあるわ、良く考えなさい」
「お母さんは私の事分かってるね」
「そうね、一人暮らしが嫌だったら無理にしなくてもいいわよ」
「嫌じゃないよ、ただ」
「ただ?」
「...」
「一緒に暮らそうって言われたんじゃない?」
「何で分かったの?」
「見ていれば分かるわよ」
「そう」
「それで、考えてるのね」
「うん」
「いいんじゃない?せっかく言ってくれたんだから」
「そうだけど」
「自分の気持ちを殺してはダメよ」
「うん」
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