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俺は自分の仕事を適当なところで切り上げ、久しぶりに訓練場へ顔を出すことにした。レオナに怒られはしたがまずは事実を確認しないことにはどうしようもない。
先にイオリが行っているはずだ。そういえばイオリが訓練場に行き始めてからは部隊への伝達もついでに頼んだりしていて随分と部隊へは顔を出していなかった。以前は手合わせしたい時や1人で鍛えることに飽きた時とか意外と通っていたが…。
……思っていたよりも足が遠のいてしまっていたか。部隊の者たちのことを蔑ろにしている訳では無いがここ最近の俺の態度は薄情だったのだろうか。ウィレムをはじめ、頼れる者が多いので安心しきっていた…。
訓練場まで最近のことを振り返り俺も少しばかり部隊の者たちへの誠意が欠けていたと思う。かといって、不平不満の捌け口を誰かに向けていい訳では無いが。
訓練場に着き、扉を開け中に入る。訓練自体はいつもと変わらずしっかりしているようであまり心地いいとは言えない熱気がこもっている。
ザッと周りを見渡すとウィレムを中心として各々手合わせなどしているようだ。イオリを探して見渡すと隅の方で柔軟をしたり短剣を振ったりしている。
俺が来たことに気づいたウィレムが集合をかけようとするのを手で制すと個人的にウィレムが駆け寄ってきた。
「リッカ隊長!ご無沙汰しております。最近はあまりお姿が見られませんでしたので。今日はどうされましたか?」
いつもと変わらないウィレムだ。朗らかに話しかけてくる。
「あぁ。最近顔を出せていなかったからな。部隊は変わりないか?何件か討伐や城下の治安対策を頼んでいたと思うが…。」
「はい、もちろんです!依頼されていた件は滞りなく。部隊も大きな変わりはありません。」
…大きな変わりはない、か。
「それならいい。今日は時間が取れたから少し様子を見ていこうと思うが、俺には構わずいつも通りにしていてくれ。」
俺がそう言うとウィレムはパァッと笑顔になった。
「本当ですか!では、手合わせをお願いしても大丈夫でしょうか?久しぶりにリッカ隊長と手合わせをお願いしたいです!」
そういえばウィレムとも随分手合わせしていなかったな。ウィレムはまだ若い。この隊に入ってから何度も俺に手合わせを挑んでは負けて、しかしそのたびに成長を感じる。ウィレムの献身的で気の利くところも好きだが、特にこういう勇敢なところが気に入っている。
「そうだな。相変わらずだな、ウィレムは。久しぶり手合わせするか。」
承諾の返事にウィレムが前のめりになる。
「ありがとうございます!久しぶりとはいえ、今回は負けませんよ。」
ウィレムはニッコリだ。上機嫌な部下にそういえばと周りを見渡して俺は聞く。
「そうだ、イオリはどうだ?少しはここに馴染めそうか?」
端の方で1人で鍛練を積むイオリを見ながらウィレムへ聞く。ついさっきまで上機嫌だったと言うのに。ウィレムは面白くないといった風に口を開く。
「あぁ、イオリですか。熱心ですね、毎日仕事終わりにやってきて。」
「なんだ?あんまり歓迎してないような言い方だな。何かあったか?」
ウィレムが感情を隠しもしなかったので俺もストレートに聞くことにした。
「いえ。何かあったと言うほどでは。ですが、何度か俺たちに混ざって鍛練をしてみないかと誘ってはみたんですが、あんな感じで。俺たちとは手合わせするのも嫌みたいなので……。」
あまりいい気持ちはしないだろうな。そう思い、苦々しく言うウィレムへ「そうか。」と軽く返事をし、俺はイオリの方へ向かう。
イオリの方へ向かう俺を、ウィレムが後ろからジッと見ていたことには気づかなかった。
先にイオリが行っているはずだ。そういえばイオリが訓練場に行き始めてからは部隊への伝達もついでに頼んだりしていて随分と部隊へは顔を出していなかった。以前は手合わせしたい時や1人で鍛えることに飽きた時とか意外と通っていたが…。
……思っていたよりも足が遠のいてしまっていたか。部隊の者たちのことを蔑ろにしている訳では無いがここ最近の俺の態度は薄情だったのだろうか。ウィレムをはじめ、頼れる者が多いので安心しきっていた…。
訓練場まで最近のことを振り返り俺も少しばかり部隊の者たちへの誠意が欠けていたと思う。かといって、不平不満の捌け口を誰かに向けていい訳では無いが。
訓練場に着き、扉を開け中に入る。訓練自体はいつもと変わらずしっかりしているようであまり心地いいとは言えない熱気がこもっている。
ザッと周りを見渡すとウィレムを中心として各々手合わせなどしているようだ。イオリを探して見渡すと隅の方で柔軟をしたり短剣を振ったりしている。
俺が来たことに気づいたウィレムが集合をかけようとするのを手で制すと個人的にウィレムが駆け寄ってきた。
「リッカ隊長!ご無沙汰しております。最近はあまりお姿が見られませんでしたので。今日はどうされましたか?」
いつもと変わらないウィレムだ。朗らかに話しかけてくる。
「あぁ。最近顔を出せていなかったからな。部隊は変わりないか?何件か討伐や城下の治安対策を頼んでいたと思うが…。」
「はい、もちろんです!依頼されていた件は滞りなく。部隊も大きな変わりはありません。」
…大きな変わりはない、か。
「それならいい。今日は時間が取れたから少し様子を見ていこうと思うが、俺には構わずいつも通りにしていてくれ。」
俺がそう言うとウィレムはパァッと笑顔になった。
「本当ですか!では、手合わせをお願いしても大丈夫でしょうか?久しぶりにリッカ隊長と手合わせをお願いしたいです!」
そういえばウィレムとも随分手合わせしていなかったな。ウィレムはまだ若い。この隊に入ってから何度も俺に手合わせを挑んでは負けて、しかしそのたびに成長を感じる。ウィレムの献身的で気の利くところも好きだが、特にこういう勇敢なところが気に入っている。
「そうだな。相変わらずだな、ウィレムは。久しぶり手合わせするか。」
承諾の返事にウィレムが前のめりになる。
「ありがとうございます!久しぶりとはいえ、今回は負けませんよ。」
ウィレムはニッコリだ。上機嫌な部下にそういえばと周りを見渡して俺は聞く。
「そうだ、イオリはどうだ?少しはここに馴染めそうか?」
端の方で1人で鍛練を積むイオリを見ながらウィレムへ聞く。ついさっきまで上機嫌だったと言うのに。ウィレムは面白くないといった風に口を開く。
「あぁ、イオリですか。熱心ですね、毎日仕事終わりにやってきて。」
「なんだ?あんまり歓迎してないような言い方だな。何かあったか?」
ウィレムが感情を隠しもしなかったので俺もストレートに聞くことにした。
「いえ。何かあったと言うほどでは。ですが、何度か俺たちに混ざって鍛練をしてみないかと誘ってはみたんですが、あんな感じで。俺たちとは手合わせするのも嫌みたいなので……。」
あまりいい気持ちはしないだろうな。そう思い、苦々しく言うウィレムへ「そうか。」と軽く返事をし、俺はイオリの方へ向かう。
イオリの方へ向かう俺を、ウィレムが後ろからジッと見ていたことには気づかなかった。
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