魔王様と禁断の恋

妄想計のひと

文字の大きさ
64 / 64
番外編

※55の続き

しおりを挟む
「レイリンのドレスは本当に綺麗だった」

元天帝はその時の情景を思い出しながら、夢見心地だった。

「いつまで言っているのですか?同じ話を繰り返す老人のようですよ」

夕飯の支度をしながら魔王様はチラリと、壁にもたれて立っている元天帝に目をやった。

結婚式を挙げてから1ヶ月、2人きりの時間が増えて、元天帝は幸せを噛み締めていた。

「レイリンがご飯を用意してくれると、本当に夫婦だなって実感するよ」

元天帝の目尻は下がりきっていた。
そんな元天帝の姿に、魔王様も殊更言うこともなく、微笑んで眺めているだけだった。

「あ、そろそろ良い時間ですね」

パンの入っているバスケットを元天帝に渡した。

出来上がったのは、肉と野菜のスープだ。
肉の周りを焼いた後に、じっくりと野菜と煮込み、柔らかく仕上げてある。

2人分を器に盛って、魔王様は食堂へ運んだ。

元天帝はその後に続き、魔王様の右隣に座る。

「頂きます」

2人は手を合わせて、魔王様の用意した食事を食べ始めた。




「レイリン、お湯の準備が出来たよ」

食事が終わり、お茶を飲んでいた魔王様に元天帝が声をかけた。

特に理由が無ければ2人は行動を共にしており、それは湯浴みも例外ではなかった。

「ありがとうございます」

魔王様は、飲んでいたカップを片付けてから、元天帝について浴場へ向かった。

石でできた大きな浴槽には、たっぷりのお湯が張ってあり、そのそばで元天帝は立って待っていた。

「レイリン」

元天帝は魔王様の腰帯を解き、1枚1枚、順に服を脱がしていった。

「良い身体しているよね」

その身体には情事の跡がくっきりと、数多く残っている。

元天帝はその痕をなぞる様に、胸や背中に手を滑らせて、首元に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。

魔王様はその仕草で思い当たる事を訊いてみた。

「まさか、ここでしたいのですか?」

「だめ?」

「だめです。ここはリタも使うのですよ?」

「綺麗にしておくよ」

元天帝は懇願するが、あまり手応えを感じなかった。

「だめです。部屋まで我慢してください」

魔王様は元天帝をあしらい、湯に浸かると大きく息を吐いた。

「気持ちいいです」

元天帝も服を全て脱ぎ、髪を束ねている紐も外し、ちゃぽんと音を立てて魔王様の隣に座った。

「ねぇ、2人でこのまま魔王城で暮らすのもいいけれど、旅行もしたいな」

元天帝は、魔王様の髪で遊び、口づけを落とした。
魔王様はゆっくりと目を開けて、呆けながら答えた。

「そうですね、行きましょうか。まずは人間界の色んな所で食事がしたいです」

魔王様は想像して、楽しそうにちゃぽちゃぽと足をバタつかせた。

元天帝は誰にも邪魔されずに魔王様を独り占めできれば、どこでも良かった。

「それなら明日にでも行こう」

「それはまた急ですね。構いませんが……」

魔王様は元天帝に甘かった。

返事を聞いて更に気分の良くなった元天帝は、もう一度訊いてみることにした。

身体を寄せて、両腕で魔王様を抱き込む。

「ねぇ、しばらくここへは戻ってこないわけだし、一度ぐらいここでしても良いんじゃない?」

魔王様の首筋に口付けし、肩に頭を乗せる。

魔王様は僅かに眉間に皺を作って言った。

「1回だけですよ」

魔王様は元天帝には甘かった。





浴室の壁に手をついて、後ろから突き上げられる姿は、なんとも惨めなんだと、魔王様は冷静になった時に思う事だろう。

だが、情事の最中はそんなことよりも、快感に身体を委ねることの方が大事だった。

声を出すことも、素直になることも、元天帝に教え込まれて来た魔王様は、あられもない声で髪を踊らせながら泣き叫いている。

「あぁっ!気持ちいい、ですっ……そこっ……あっ!あぁぁっ!」

強すぎる快感を逃したくなくて必死に腰を上げるが、力がどんどん抜けていく。

元天帝はそんな魔王様の腰をしっかりと支え、腰を前後に激しく振っている。

魔王様の濡れた肌や響く声は、元天帝の征服欲を満たし、腰を動かす原動力となる。

「レイリン。可愛いよ、愛している」

「あっ、ランシュエっ!愛しています」

魔王様も必死になって答え、気持ちが昂ったところで、2人一緒に果てた。

「はぁっ……はぁっ……抜いてください」

元天帝は1回の約束を守り、中から引き抜き、魔王様を抱きしめた。

「今、最高に幸せだ」

上辺だけでないその言葉に、魔王様も心が暖かくなる感覚に浸った。

大袈裟と言えばそうなのだが、強まる腕を拒絶することなく手を重ねて、魔王様も言葉を発した。

「私も、幸せです」




その後、汚れた部分を洗い流し、元天帝は言った通りに浴室を綺麗にした。

ベッドに戻ってから、もう1戦行ったとか。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ
BL
目覚めたら親指姫サイズになっていた僕。親切なチョウチョさんに助けられたけど童話の世界みたいな展開についていけない。 親切なチョウチョを食べたヒキガエルに攫われてこのままヒキガエルのもとでシンデレラのようにこき使われるの?と思ったらヒキガエルの飼い主である悪い魔法使いを倒した強面騎士様に拾われて人形用のお家に住まわせてもらうことになった。夜の間に元のサイズに戻れるんだけど騎士様に幽霊と思われて…… 可愛いもの好きの強面騎士様と異世界転生して親指姫サイズになった僕のほのぼの日常BL

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

処理中です...