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14.妄想
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俺は、何としても兄さんと同じ所に合格して、一緒に暮らしてやる!
そう意気込みながら勉強を続けること2ヶ月。
既に俺は兄さん不足だった。
勉強を教えてもらいたかったが、兄さんも4月と5月は忙しかったみたいだ。
まぁ、俺から連絡もしてないんだけど……。
母さんが言うにはそうらしい。
夏休みに泊まり込みで兄さんの家に行きたいけれど、補講もあるし、塾もあるし、あまり時間は取れそうになかった。
そんな俺の、性の解消法とはオナニーしかないのだが……。
「母さんたちも居なくなったし……よし」
準備を終えて向かうは、兄さんの部屋だ!
何も無くなった兄さんの部屋に物資を持ち込む。
今日のメニューは既に決めていた。
そう、ディルドだ。
やっぱり、兄さんに挿れられる妄想が1番興奮する。
ベッドを置いて行ってくれたらなお良かったけれど、持って行ってしまったから仕方がない。
タオルを敷いて、横になり、自分で尻の穴を弄る。
「んんっふっ………」
前立腺を掠めてしまい、我慢ができずに自分で自分をいじめたくなってしまった。
「んぁっ、はぁ、だめっ、あぁっんんっ」
誰に駄目と言っているのか?
自分なんだけど、俺の中の妄想では兄さんに言っている設定だった。
「あぁっ、あっ、そこばっかりっ、んんっ!」
そこばかり触っているのも俺なんだけど、やっぱり兄さんにいじめられた時を思い出して、前立腺が嫌になる程弄る。
「あぁっ、あぁんっ、あぁ、はぁっ」
誰もいないからって声も抑えない。
どんどんエスカレートして行き、ムスコにも手を伸ばす。
「はぁっ、やぁぁっ、いきそっ、はぁっ、いっちゃう!」
声を出して妄想することで、より興奮しながら手の中に射精することが出来る。
最近はこんなオナニーが増えているので、慣れたものだった。
この時、ティッシュに出せば楽なのに、何故か手に出して精液を見つめてしまった。
前回した時、兄さんはこれを舐めたんだよな……。
そんな事を思い出してしまった。
兄さんのを舐めるのは良いけれど、自分のは到底出来そうにない。
手を拭き、いざ兄さんのサイズを意識して購入したディルもを手に取る。
これには何度もお世話になって来た。
それなら、いっそ……兄さんのペニスを型取りさせてもらって、兄さんディルドを作ってしまおうか。
そうすれば、俺のオナニーライフも少しは楽になる気がする。
しかし、型取りしている最中、完勃ちを維持できるのだろうか?
いや、そんな事を考えても無駄だろうから、このディルドで我慢しよう。
そう考えたのも何度目か分からない。
俺はディルドにもしっかりとローションを塗って、ゆっくりと挿入した。
「んんっ、あっ、はぁっ……あっ」
兄さんに挿れてもらう時とは、やはり圧迫感が違う。
それでも、ゆっくり動かし、だんだんと速くしていく。
「はぁっ、あぁっ、あっ、はげしっ、いよぉっ、あぁぅ、んんぅっ、おくっ、きもちぃっ……」
ディルドで届く、1番奥へと挿れ、穴の入り口まで一気に引き抜く。
ギリギリを攻める為、たまに抜け出てしまう。
「んぁぅっ、はぁっ……はぁっ……」
また挿入し、同じように強く激しく責め立てる。
「あああぁっ、またいくっ、あぁっ、あぁっ、いくっ、あぁっ!いっちゃう!」
また精を吐き出しながら、快感から逃げるように、身体を丸めて横に転がってしまう。
「はぁっ、きもちぃ……はぁっ……って、何やってんだろ……」
そして一瞬で我に返って、兄さんロスを体感してしまうのだ。
息を整えながら、広げた物を片付け、虚しく玩具達と一緒に風呂へ入った。
そんな寂しいオナニー生活を続けている俺は、とある土曜日、塾の帰りに有松のおじさんがやっているバーの前にいた。
何でも相談に乗るって、言ってくれたよな?
息抜きも必要だと言い聞かせながら、そのドアを開けた。
チリンチリンと来客を告げるベルが鳴る。
「あれ、えっと……咲耶くん?1人?」
有松のおじさんはやっぱりかっこいい。
周りを見渡すと、客は俺しか居らず、夜の仕込みをしているようだった。
「はい……あの……今、良いですか?」
「もちろん」
笑って快くカウンターに案内してくれる。
「どうしたの?」
カウンターに座ると、水が置かれる。
「その……有松には黙っててくれますか?」
「もちろん。お兄さんと何かあった?」
おじさんは、有松が話していた事を覚えているようだった。
だけど、話したいのはその逆で……。
「いえ……。兄さんが一人暮らしを始めて、一度だけ家に行ったんですけど、それから2ヶ月何の音沙汰もなくって……」
有松は、俺と兄さんが義兄弟でセフレだとか、一人暮らしを始めるから元気が無くなったとか、一通りおじさんに話していた。
その時俺は否定していたけど、まぁ反応からしてバレていただろう。
「家に行った時はどうだったの?」
「どうって……普通でした」
「セックスした?」
水を飲もうとしたその手が止まった。
性事情をオープンに話したことなんて、当然一度も無かった。
こんな普通に訊かれることも無かったけど。
「し、しました……けど、いや……」
俯いてその時のことを断片的に思い返す。
誘えと言われ、うまく出来ず、兄さんを怒らせて、それでも何回かした。
「俺がやっぱり下手だったのかな?」
あれか?本当は俺が下手で感じなかった癖に、不感症って言ったから怒ったの?
でも、感じているという話だったし……。
「咲耶くん何かしたの?」
「その、俺が誘って、その気になったらしてくれるって言ったから、フェラしたんですけど……」
本当に俺は何の話してんだ?
「あまり上手く出来なかったのかなって……」
僅かに目線を上げておじさんを盗み見る。
おじさんは真剣に考えているようで、腕を組んで天井を見つめていた。
「それなら、練習したら?」
「それでも練習して行ったんです……。そしたら、そんな事するなって言われて」
おじさんは俺を見て首を傾げた。
「いや、お兄さんにさせてもらえば良いんじゃない?お兄さんもそういう意味で言ったんじゃないかな」
え?兄さんで練習?考えもしなかった。
「俺は、あんまり下手な所を見せたく無いんです」
「最初はみんな上手く出来ないんだから、気にする必要ないよ」
おじさんは優しく話を聞いてくれるから、俺は少し甘えてしまった。
「そうですか?結局その日は、その気にさせる方法が分からなくって……俺って魅力無いですか?」
「えっと……」
おじさんは苦笑いをして鼻をかいている。
困らせてしまったようだ。
「でも最後までセックスしたんでしょ?」
「はい。一度諦めたんですけど、何で誘うの止めたの?って言われて、何だか腑に落ちなかったけど……」
うーん……とおじさんは考え込む。
「お兄さんは、好きな子をいじめたいだけじゃないの?」
好きな子?
「それは、ちょっと都合良く考え過ぎじゃないですか?」
「そんな事ないと思うけど……。よく考えてみて。快楽の為にアナルセックスをするなんて、一部の人達だけだよ。普通は好きでもなきゃしない」
そんなもんなのか……?
兄さんが俺のことを好きかもしれないなんて、俺は考えたことがなかった。
何てったって、家に彼女を連れ込んでいると思っていたからだ。
「でも、兄さん冷たいし」
そう俺が言った時、チリンチリンと鳴り、ドアの開く音がした。
「雅隆さん、いらっしゃい」
「おや、珍しく可愛いお客さんだね」
入ってきたのは、これまたイケメンのお兄さんだった。
「こんにちは」
まさたかさんと呼ばれたお兄さんは、スーツを着ており、髪は軽くワックスで整えられ、優しく微笑んでいた。
系統は兄さんと同じかもしれないが、笑っているだけでこんなに印象は違うのか……。
雅隆さんは俺の隣に座って、こっちに微笑みかけてくる。
「マスター、彼を紹介してくれる?」
俺はなんだか無駄に緊張してしまい、俯いて顔が見えないようにした。
「可愛い甥っ子の友達だから、絶対に手を出さないって約束できるならいいよ」
「大丈夫だよ。いくらフリーでも無理矢理しないよ」
そう言って、雅隆さんは俺の顔を覗き込んでくる。
おじさんは雅隆さんの前にも水を置き、雅隆さんと俺との間に手を差し込む。
「近いよ」
「俺に近づいたからって妊娠するわけじゃないだろ」
雅隆さんは笑って水を一口飲んだ。
もしかして、こんなに優しそうに見える雅隆さんは、結構な遊び人なのかもしれない。
「彼は咲耶くんって言って、恋愛相談中なんだから雅隆さんの入る隙はないよ」
「何その面白い話。俺も聞いて良い?」
いきなり知らない人に恋愛相談なんて出来ないけれど、恋愛経験豊富そうな人に話を聞くのはアリかもしれない。
「あの、ずっと片思いしている人がいるんですけど、その人が少し遠くに行っちゃって、どうしたら気を引けると思いますか?」
「咲耶くん、義理のお兄さんが好きで、セフレだったみたいでね。少し前にお兄さんが一人暮らし始めちゃって、欲求不満なんだよ」
おじさんが俺の話に付け足し、俺はおじさんの方を見てしまった。
欲求不満なんて言った覚えはないんだけど!
まぁ……合っていますけど。
「え、セフレなら普通にエッチしてって言えば良いんじゃないの?」
雅隆さんの意見は確かにその通りだった。
「セフレっていうか、なんか都合が合う時に適当にエッチしてただけっていうか……」
俺としてはセフレになりたかったわけでは無いのに、ここから恋人になんてなれたもんじゃない。
「でも今までしてくれてたなら、お願いしてみたら?」
雅隆さんは簡単そうに言うが、俺にとってはその一歩が踏み出せない。
「フェラが上手く出来なかった事を気にしているんだってさ」
「えっ。こんな可愛い子に咥えてもらえるなんて、お兄さん羨ましい」
あんまり俺が調子に乗るような事ばかり言わないでほしい。
「マスター、本当にこの子貰ったらダメなの?俺が可愛い子に弱いの知ってるよね?」
「知ってるから最初に釘刺したんでしょ?」
「寂しい思いも、欲求不満にもさせないし、フェラなら俺が教えてあげるよ」
そう笑顔で言う雅隆さんの顔はかっこよくて、これはころっと騙されてしまいそうだ。
だが俺には長年片思い中の兄さんがいる。
「フェラって教えたくなりますか?」
「そりゃあまぁ……。自分の為に頑張っている姿って、最高にエロいと思うよ」
やっぱり、俺のフェラが下手だったのか……。
落ち込む俺に、おじさんがフォローしてくれる。
「雅隆さんも言ってるでしょ?自分の為にしてくれる姿が良いんだから、上手さじゃないって」
「じゃあ俺だと興奮しないって事ですか?」
自分で言っておきながら、それは否定したかった。
「フェラの後は何回もしたんです……」
「咲耶くんが何を心配しているのか、俺には分からないよ」
雅隆さんは優しい手付きで、俺の首の後ろに手を回してきた。
「もしお兄さんに断られたら、俺が責任持ってあげるから、自信持って連絡してごらん」
「雅隆さん、断られたら良いとか思ってない?」
おじさんは雅隆さんを軽く睨んでいる。
「まさか。咲耶くんが次に笑顔で報告してくれるのを心待ちにしているよ」
これだけ後押しされて、やっと俺は重い腰を上げて兄さんに連絡してみる事にした。
「何て送ったら良いと思いますか?」
「そうだね……。『欲求不満でエッチしたいから、明日家に行きたいな』かな」
家に帰ってからも頭の中は兄さん一色だった為、早目に送ることにした。
送る文面は、バーで一応考えた。
『また勉強を教えて欲しいから、明日行っても良い?』
明日は急すぎじゃないかと言ったが、もし兄さんにその気があるのなら、別日を提案するだろうから、何時かは気にする必要がないとのこと。
スマホが気になって仕方がない。
気を紛らわせる為に、ご飯を食べ、お風呂に入り、勉強をしようと机に向かう。
無視されたらどうしよう。
本当に雅隆さんに慰めてもらおうか。
そう思った時に、メッセージが届く音がした。
伏せてあるスマホを持ち上げて、内容を確認する。
『良いよ』
本当にっ?
すごく嬉しくて顔がニヤニヤしてしまう!
この際、返信が短かった事はどうでも良い!
でも明日は日曜だ。
泊まりではない。
これは困ったことになるかもしれないが、この際エロい事は無くたっていい!
いやいや、欲求を解消する為に行くんだけど……。
でも兄さんに会えるだけで良い気がしてきた!
完全に俺は浮かれている。
俺は兄さんに午前中から行くと連絡して、シャーペンを手に取る。
勉強の続きをしようと思ったが、無理だった。
兄さんで妄想しながらオナニーするか?
いや、止めて明日の準備をして寝よう。
勉強セットをカバンに入れて、早目にベッドに転がった。
そう意気込みながら勉強を続けること2ヶ月。
既に俺は兄さん不足だった。
勉強を教えてもらいたかったが、兄さんも4月と5月は忙しかったみたいだ。
まぁ、俺から連絡もしてないんだけど……。
母さんが言うにはそうらしい。
夏休みに泊まり込みで兄さんの家に行きたいけれど、補講もあるし、塾もあるし、あまり時間は取れそうになかった。
そんな俺の、性の解消法とはオナニーしかないのだが……。
「母さんたちも居なくなったし……よし」
準備を終えて向かうは、兄さんの部屋だ!
何も無くなった兄さんの部屋に物資を持ち込む。
今日のメニューは既に決めていた。
そう、ディルドだ。
やっぱり、兄さんに挿れられる妄想が1番興奮する。
ベッドを置いて行ってくれたらなお良かったけれど、持って行ってしまったから仕方がない。
タオルを敷いて、横になり、自分で尻の穴を弄る。
「んんっふっ………」
前立腺を掠めてしまい、我慢ができずに自分で自分をいじめたくなってしまった。
「んぁっ、はぁ、だめっ、あぁっんんっ」
誰に駄目と言っているのか?
自分なんだけど、俺の中の妄想では兄さんに言っている設定だった。
「あぁっ、あっ、そこばっかりっ、んんっ!」
そこばかり触っているのも俺なんだけど、やっぱり兄さんにいじめられた時を思い出して、前立腺が嫌になる程弄る。
「あぁっ、あぁんっ、あぁ、はぁっ」
誰もいないからって声も抑えない。
どんどんエスカレートして行き、ムスコにも手を伸ばす。
「はぁっ、やぁぁっ、いきそっ、はぁっ、いっちゃう!」
声を出して妄想することで、より興奮しながら手の中に射精することが出来る。
最近はこんなオナニーが増えているので、慣れたものだった。
この時、ティッシュに出せば楽なのに、何故か手に出して精液を見つめてしまった。
前回した時、兄さんはこれを舐めたんだよな……。
そんな事を思い出してしまった。
兄さんのを舐めるのは良いけれど、自分のは到底出来そうにない。
手を拭き、いざ兄さんのサイズを意識して購入したディルもを手に取る。
これには何度もお世話になって来た。
それなら、いっそ……兄さんのペニスを型取りさせてもらって、兄さんディルドを作ってしまおうか。
そうすれば、俺のオナニーライフも少しは楽になる気がする。
しかし、型取りしている最中、完勃ちを維持できるのだろうか?
いや、そんな事を考えても無駄だろうから、このディルドで我慢しよう。
そう考えたのも何度目か分からない。
俺はディルドにもしっかりとローションを塗って、ゆっくりと挿入した。
「んんっ、あっ、はぁっ……あっ」
兄さんに挿れてもらう時とは、やはり圧迫感が違う。
それでも、ゆっくり動かし、だんだんと速くしていく。
「はぁっ、あぁっ、あっ、はげしっ、いよぉっ、あぁぅ、んんぅっ、おくっ、きもちぃっ……」
ディルドで届く、1番奥へと挿れ、穴の入り口まで一気に引き抜く。
ギリギリを攻める為、たまに抜け出てしまう。
「んぁぅっ、はぁっ……はぁっ……」
また挿入し、同じように強く激しく責め立てる。
「あああぁっ、またいくっ、あぁっ、あぁっ、いくっ、あぁっ!いっちゃう!」
また精を吐き出しながら、快感から逃げるように、身体を丸めて横に転がってしまう。
「はぁっ、きもちぃ……はぁっ……って、何やってんだろ……」
そして一瞬で我に返って、兄さんロスを体感してしまうのだ。
息を整えながら、広げた物を片付け、虚しく玩具達と一緒に風呂へ入った。
そんな寂しいオナニー生活を続けている俺は、とある土曜日、塾の帰りに有松のおじさんがやっているバーの前にいた。
何でも相談に乗るって、言ってくれたよな?
息抜きも必要だと言い聞かせながら、そのドアを開けた。
チリンチリンと来客を告げるベルが鳴る。
「あれ、えっと……咲耶くん?1人?」
有松のおじさんはやっぱりかっこいい。
周りを見渡すと、客は俺しか居らず、夜の仕込みをしているようだった。
「はい……あの……今、良いですか?」
「もちろん」
笑って快くカウンターに案内してくれる。
「どうしたの?」
カウンターに座ると、水が置かれる。
「その……有松には黙っててくれますか?」
「もちろん。お兄さんと何かあった?」
おじさんは、有松が話していた事を覚えているようだった。
だけど、話したいのはその逆で……。
「いえ……。兄さんが一人暮らしを始めて、一度だけ家に行ったんですけど、それから2ヶ月何の音沙汰もなくって……」
有松は、俺と兄さんが義兄弟でセフレだとか、一人暮らしを始めるから元気が無くなったとか、一通りおじさんに話していた。
その時俺は否定していたけど、まぁ反応からしてバレていただろう。
「家に行った時はどうだったの?」
「どうって……普通でした」
「セックスした?」
水を飲もうとしたその手が止まった。
性事情をオープンに話したことなんて、当然一度も無かった。
こんな普通に訊かれることも無かったけど。
「し、しました……けど、いや……」
俯いてその時のことを断片的に思い返す。
誘えと言われ、うまく出来ず、兄さんを怒らせて、それでも何回かした。
「俺がやっぱり下手だったのかな?」
あれか?本当は俺が下手で感じなかった癖に、不感症って言ったから怒ったの?
でも、感じているという話だったし……。
「咲耶くん何かしたの?」
「その、俺が誘って、その気になったらしてくれるって言ったから、フェラしたんですけど……」
本当に俺は何の話してんだ?
「あまり上手く出来なかったのかなって……」
僅かに目線を上げておじさんを盗み見る。
おじさんは真剣に考えているようで、腕を組んで天井を見つめていた。
「それなら、練習したら?」
「それでも練習して行ったんです……。そしたら、そんな事するなって言われて」
おじさんは俺を見て首を傾げた。
「いや、お兄さんにさせてもらえば良いんじゃない?お兄さんもそういう意味で言ったんじゃないかな」
え?兄さんで練習?考えもしなかった。
「俺は、あんまり下手な所を見せたく無いんです」
「最初はみんな上手く出来ないんだから、気にする必要ないよ」
おじさんは優しく話を聞いてくれるから、俺は少し甘えてしまった。
「そうですか?結局その日は、その気にさせる方法が分からなくって……俺って魅力無いですか?」
「えっと……」
おじさんは苦笑いをして鼻をかいている。
困らせてしまったようだ。
「でも最後までセックスしたんでしょ?」
「はい。一度諦めたんですけど、何で誘うの止めたの?って言われて、何だか腑に落ちなかったけど……」
うーん……とおじさんは考え込む。
「お兄さんは、好きな子をいじめたいだけじゃないの?」
好きな子?
「それは、ちょっと都合良く考え過ぎじゃないですか?」
「そんな事ないと思うけど……。よく考えてみて。快楽の為にアナルセックスをするなんて、一部の人達だけだよ。普通は好きでもなきゃしない」
そんなもんなのか……?
兄さんが俺のことを好きかもしれないなんて、俺は考えたことがなかった。
何てったって、家に彼女を連れ込んでいると思っていたからだ。
「でも、兄さん冷たいし」
そう俺が言った時、チリンチリンと鳴り、ドアの開く音がした。
「雅隆さん、いらっしゃい」
「おや、珍しく可愛いお客さんだね」
入ってきたのは、これまたイケメンのお兄さんだった。
「こんにちは」
まさたかさんと呼ばれたお兄さんは、スーツを着ており、髪は軽くワックスで整えられ、優しく微笑んでいた。
系統は兄さんと同じかもしれないが、笑っているだけでこんなに印象は違うのか……。
雅隆さんは俺の隣に座って、こっちに微笑みかけてくる。
「マスター、彼を紹介してくれる?」
俺はなんだか無駄に緊張してしまい、俯いて顔が見えないようにした。
「可愛い甥っ子の友達だから、絶対に手を出さないって約束できるならいいよ」
「大丈夫だよ。いくらフリーでも無理矢理しないよ」
そう言って、雅隆さんは俺の顔を覗き込んでくる。
おじさんは雅隆さんの前にも水を置き、雅隆さんと俺との間に手を差し込む。
「近いよ」
「俺に近づいたからって妊娠するわけじゃないだろ」
雅隆さんは笑って水を一口飲んだ。
もしかして、こんなに優しそうに見える雅隆さんは、結構な遊び人なのかもしれない。
「彼は咲耶くんって言って、恋愛相談中なんだから雅隆さんの入る隙はないよ」
「何その面白い話。俺も聞いて良い?」
いきなり知らない人に恋愛相談なんて出来ないけれど、恋愛経験豊富そうな人に話を聞くのはアリかもしれない。
「あの、ずっと片思いしている人がいるんですけど、その人が少し遠くに行っちゃって、どうしたら気を引けると思いますか?」
「咲耶くん、義理のお兄さんが好きで、セフレだったみたいでね。少し前にお兄さんが一人暮らし始めちゃって、欲求不満なんだよ」
おじさんが俺の話に付け足し、俺はおじさんの方を見てしまった。
欲求不満なんて言った覚えはないんだけど!
まぁ……合っていますけど。
「え、セフレなら普通にエッチしてって言えば良いんじゃないの?」
雅隆さんの意見は確かにその通りだった。
「セフレっていうか、なんか都合が合う時に適当にエッチしてただけっていうか……」
俺としてはセフレになりたかったわけでは無いのに、ここから恋人になんてなれたもんじゃない。
「でも今までしてくれてたなら、お願いしてみたら?」
雅隆さんは簡単そうに言うが、俺にとってはその一歩が踏み出せない。
「フェラが上手く出来なかった事を気にしているんだってさ」
「えっ。こんな可愛い子に咥えてもらえるなんて、お兄さん羨ましい」
あんまり俺が調子に乗るような事ばかり言わないでほしい。
「マスター、本当にこの子貰ったらダメなの?俺が可愛い子に弱いの知ってるよね?」
「知ってるから最初に釘刺したんでしょ?」
「寂しい思いも、欲求不満にもさせないし、フェラなら俺が教えてあげるよ」
そう笑顔で言う雅隆さんの顔はかっこよくて、これはころっと騙されてしまいそうだ。
だが俺には長年片思い中の兄さんがいる。
「フェラって教えたくなりますか?」
「そりゃあまぁ……。自分の為に頑張っている姿って、最高にエロいと思うよ」
やっぱり、俺のフェラが下手だったのか……。
落ち込む俺に、おじさんがフォローしてくれる。
「雅隆さんも言ってるでしょ?自分の為にしてくれる姿が良いんだから、上手さじゃないって」
「じゃあ俺だと興奮しないって事ですか?」
自分で言っておきながら、それは否定したかった。
「フェラの後は何回もしたんです……」
「咲耶くんが何を心配しているのか、俺には分からないよ」
雅隆さんは優しい手付きで、俺の首の後ろに手を回してきた。
「もしお兄さんに断られたら、俺が責任持ってあげるから、自信持って連絡してごらん」
「雅隆さん、断られたら良いとか思ってない?」
おじさんは雅隆さんを軽く睨んでいる。
「まさか。咲耶くんが次に笑顔で報告してくれるのを心待ちにしているよ」
これだけ後押しされて、やっと俺は重い腰を上げて兄さんに連絡してみる事にした。
「何て送ったら良いと思いますか?」
「そうだね……。『欲求不満でエッチしたいから、明日家に行きたいな』かな」
家に帰ってからも頭の中は兄さん一色だった為、早目に送ることにした。
送る文面は、バーで一応考えた。
『また勉強を教えて欲しいから、明日行っても良い?』
明日は急すぎじゃないかと言ったが、もし兄さんにその気があるのなら、別日を提案するだろうから、何時かは気にする必要がないとのこと。
スマホが気になって仕方がない。
気を紛らわせる為に、ご飯を食べ、お風呂に入り、勉強をしようと机に向かう。
無視されたらどうしよう。
本当に雅隆さんに慰めてもらおうか。
そう思った時に、メッセージが届く音がした。
伏せてあるスマホを持ち上げて、内容を確認する。
『良いよ』
本当にっ?
すごく嬉しくて顔がニヤニヤしてしまう!
この際、返信が短かった事はどうでも良い!
でも明日は日曜だ。
泊まりではない。
これは困ったことになるかもしれないが、この際エロい事は無くたっていい!
いやいや、欲求を解消する為に行くんだけど……。
でも兄さんに会えるだけで良い気がしてきた!
完全に俺は浮かれている。
俺は兄さんに午前中から行くと連絡して、シャーペンを手に取る。
勉強の続きをしようと思ったが、無理だった。
兄さんで妄想しながらオナニーするか?
いや、止めて明日の準備をして寝よう。
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