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Episode ― I ― 【最初の夜】
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英国、倫敦――……
雲の切れ間から零れた月明かりで照らされた薄暗い湿った路地裏。
そんな路地裏を黒いロングコートを着た青年が一人歩いている。
さらに、そんな青年の後を音も無く這う黒い影。
よく見るとそれは影などではなく、黒衣に身を包んだ悪魔の群れ、
青年が路地裏に進んで行けば行くほど、黒衣の悪魔の群れは増えていく。
そして、青年が袋小路に突き当たると、悪魔の一体が大振りの鉈を振り上げて青年に飛び掛かる。
それを皮切りに他の悪魔も続いて青年に飛び掛かる。
すると、青年は懐から銃身60㎝はある銃剣付きの漆黒の双銃を取り出すと後ろを振り向き、何の躊躇いもなく引き金を引いた。
発射された銃弾は、見事に最初に飛び掛かった悪魔の眉間を易々と貫いた。
青年は2発、3発と間髪いれずに引き金を引き、銃声が路地裏に木霊する。
その射撃の腕は恐ろしく正確で、次々と悪魔の眉間や心臓を打ち抜いていき、悪魔を塵へと変えていく。
やがて、20~30体はいた悪魔の群れは一掃され、路地裏には青年一人となった。
青年は双銃を懐に仕舞いこみ、その場を立ち去ろうとした時だった。
「貴方がクロ様ですか?」
突然後ろから声を掛けられ、仕舞いこんだ双銃を素早く取り出し、振り向き、声の主に向けて構える。
どこから現れたのか、いつの間にか赤と黒の菱形格子模様の燕尾服を着た道化師姿の男が立っていた。
「あんたは?」
クロと呼ばれた青年は内心で警戒しながらも、しかし、素っ気なく道化師に訊ねる。
「これは失礼、申し遅れました。私はオーギュスト、クロ様へ招待状を持って参りました」
オーギュストと名乗った道化師は深々とお辞儀をしながら答える。
「招待状?」
クロは双銃を突きつけたまま訝しげにオーギュストに訊ねる。
「はい、貴方の兄上様……ヴァイス様からの招待状です。是非とも受け取っていただきたい」
そう言いながらも、依然として深々と頭を下げているオーギュストの手には、何も握られていない。
だが、次の瞬間、オーギュストはクロの顔を目掛けて足を蹴り上げる。
クロは後方へ跳躍して、オーギュストの蹴りを躱す。
そして、素早く体勢を立て直し、双銃を構え直す。
しかし、そこにオーギュストの姿はなく、代わりに一枚の紙が月明かりに照らされながらひらひらと宙を舞って地面に落ちた。
『【死すべき運命の者たちの島】のグラズヘイム宮殿にて貴方をお待ちしております――……P.S.指輪を忘れずに』
クロは双銃を懐に仕舞いこむと、静かになった路地裏を去っていた。
雲の切れ間から零れた月明かりで照らされた薄暗い湿った路地裏。
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青年が路地裏に進んで行けば行くほど、黒衣の悪魔の群れは増えていく。
そして、青年が袋小路に突き当たると、悪魔の一体が大振りの鉈を振り上げて青年に飛び掛かる。
それを皮切りに他の悪魔も続いて青年に飛び掛かる。
すると、青年は懐から銃身60㎝はある銃剣付きの漆黒の双銃を取り出すと後ろを振り向き、何の躊躇いもなく引き金を引いた。
発射された銃弾は、見事に最初に飛び掛かった悪魔の眉間を易々と貫いた。
青年は2発、3発と間髪いれずに引き金を引き、銃声が路地裏に木霊する。
その射撃の腕は恐ろしく正確で、次々と悪魔の眉間や心臓を打ち抜いていき、悪魔を塵へと変えていく。
やがて、20~30体はいた悪魔の群れは一掃され、路地裏には青年一人となった。
青年は双銃を懐に仕舞いこみ、その場を立ち去ろうとした時だった。
「貴方がクロ様ですか?」
突然後ろから声を掛けられ、仕舞いこんだ双銃を素早く取り出し、振り向き、声の主に向けて構える。
どこから現れたのか、いつの間にか赤と黒の菱形格子模様の燕尾服を着た道化師姿の男が立っていた。
「あんたは?」
クロと呼ばれた青年は内心で警戒しながらも、しかし、素っ気なく道化師に訊ねる。
「これは失礼、申し遅れました。私はオーギュスト、クロ様へ招待状を持って参りました」
オーギュストと名乗った道化師は深々とお辞儀をしながら答える。
「招待状?」
クロは双銃を突きつけたまま訝しげにオーギュストに訊ねる。
「はい、貴方の兄上様……ヴァイス様からの招待状です。是非とも受け取っていただきたい」
そう言いながらも、依然として深々と頭を下げているオーギュストの手には、何も握られていない。
だが、次の瞬間、オーギュストはクロの顔を目掛けて足を蹴り上げる。
クロは後方へ跳躍して、オーギュストの蹴りを躱す。
そして、素早く体勢を立て直し、双銃を構え直す。
しかし、そこにオーギュストの姿はなく、代わりに一枚の紙が月明かりに照らされながらひらひらと宙を舞って地面に落ちた。
『【死すべき運命の者たちの島】のグラズヘイム宮殿にて貴方をお待ちしております――……P.S.指輪を忘れずに』
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