職業:雑貨屋店主兼英雄

○山

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第1章雑貨屋編

第6話:準備

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 目覚ましのおかげで問題なく目を覚ました俺は朝食を摂った後、商人ギルドに来ていた。商人ギルドは商人たちが集まって盛り上がっているのかと思いきや、意外と閑散としていた。受付の前に行くと受付にいる女性が声をかけてきた。

「本日はどういったご用件でしょうか。」

 そう聞いてきた彼女は栗鼠の亜人のようだ。栗色のショートカットの髪に頭の上には三角の耳、背後にはモフモフの大きな尻尾が見えている。

「登録したいんですけど。」
「既存の商会に所属ですか?それとも新規で商会を作りますか?」

 商人になるなら商会に所属しないといけないのか。なら新規で商会を作るしかないな。

「新規でお願いします。」
「ではギルドカードを作成しますので必要事項を記入してください。」

 俺は渡された記入用紙に目を向けた。紙は高価って話だったんだが・・・ギルドってお金持ってるんだな。記入項目は名前に年齢、種族、商会名、主な取扱商品か。名前年齢種族は問題ないとして、商会名は・・・カツラギ商会でいいや。主な取扱商品は・・・雑貨じゃだめなのかな、特に決まってないんだけど。とりあえず記入をして提出した。

「ソウタ・カツラギ様、23歳・・・お若いですね。種族は・・・人族なんですか?」

 俺に人族以外の要素って見当たらないと思うんだけど、もしかして髪色のせいかな?

「はい、そうですけど。」
「すいません。髪が黒い人ってほとんどいない上に亜人の方でしか見かけたことが無いものですから。」
「いえいえ、お構いなく。」

やはりそうみたいだ。一応頭に入れておこう。

「内容を確認致しました。ギルドについての説明はお聞きになりますか?」
「お願いします。」
「それでは説明致します。」

 説明によると商人ギルドには冒険者ギルドと同じくランクがあり、商会全体での売り上げによってランクが決まる。ランクはE~Sまであり、高いほど受けられるサポートや開示される情報が増加する。ただし、ランクD以上はギルドに売り上げの一部を30日ごとに納めなければならず、ランクが上がると納入金額も増える。ちなみにランクDが売り上げの5分でランクCが7分、ランクBで1割、ランクAで1割2分、ランクSで1割5分だ。

「説明は以上になります。何か質問などはございますか?」
「質問は無いですけど、販売物について相談したいのですが。」
「相談ですね。では個室にご案内致しますのでついてきてください。」

 案内されるがままについていくと、いくつか扉がある広い通路に出た。その扉のうち一つに入る。中には広めの机が一つとその両側に椅子が4人分並べらていた。俺は進められるがままに椅子に座った。反対側に受付の女性も座る。

「遅くなりましたが自己紹介させていただきます。わたしはエリスと申します。栗鼠の亜人です。さっそくですが販売物についてどういったご相談ですか?」

彼女に促され、俺は持ってきた物を机の上に出した。

「これらなんですが、値段をつけあぐねていまして、どれくらいの値段で売るのが妥当なのか相談させていただきたいのです。」

 机の上の販売物を彼女が慎重に一つ一つ見ていく。まず薬品類を見終えたところで一息ついた。

「薬品に関してはどれも品質が高いものとお見受けします。なので平均価格の5割増しほどで問題ないと思います。」

 5割増しとは大きく出たな・・・高すぎないだろうか?まぁ俺には知識もノウハウもないから信じるしかないんだけど。これを仮にポーションに適用すると、俺が市場調査の際に見たポーションは大体平均で銅貨20枚くらいだったから銅貨30枚で売るということか。


 ちなみに、お金についてまとめておくと、この世界では銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4つの貨幣があり、平均的な宿の素泊まりが1泊大体銀貨5枚くらいらしい。なので日本円換算すると大体銀貨1枚=1000円くらいだろうか。なお貨幣100枚ごとに繰り上げなので銅貨100枚=銀貨1枚である。


 エリスさんが次に手に取ったのは錫製の食器類だ。

「これは・・・錫ですか?」
「そうです。錫で作りました。」
「なるほど・・・金属製の食器といえば貴族御用達の金や銀の物を想像しますが、まさか錫で食器を作るとは・・・今までに無かった発想ですね。品質も加味して、木製食器の平均価格の3倍でどうでしょうか。」
「3倍!?さすがに3倍はやりすぎじゃないでしょうか?」

 思わず声を上げてしまった。

「何を言ってるんですか、材料費と加工費、それに品質を加えたら妥当でしょう。錫はそれなりに産出する割に需用は少ないですから材料費はそこまで変わりませんが、加工費は木材と違ってそれなりに掛かる筈です。工房に頼んだ時に費用の違いには気付きましたよね?そういえばどこの工房で頼んだんですか?」

 少し興奮したように矢継ぎ早に言われた。言われてみれば確かにそうだ。俺はスキルでパパッと作っちゃったからそこまで意識が回らなかった。

「えーっと・・・すいません、そこまでは気が回ってませんでした。どこに頼んだかは秘密・・・ではだめですかね?個人的な知り合いに無理言って頼んでるので。」

 我ながらいい設定を思いついた。なんだか最近嘘をつき続けてる気がするがもう気にしない。

「これだけの腕前・・・かなり惜しいですがそういうことならまぁ仕方ないでしょう。」

 とりあえずは納得してもらえたようだ。

 次は小物類だ。やはり見ただけでは何に使うものか分からないらしく、一つ一つ説明することになった。ステラと同じく女性だからというのもあるだろう。エリスさんにも櫛や髪留めは好評だった。
 値段は1つ銀貨1枚~5枚に収まった。ちなみに櫛が1枚、髪留め(ヘアピンタイプ)が2枚、髪留め(クリップタイプ)が3枚、ヘアゴムが5枚である。ヘアゴムにはステラも驚いていたがエリスさんもかなり驚いており、この値段になった。

 最後にトランプだが・・・銀貨30枚と危惧していた通りの値段になってしまった。確かに枚数も多いし1枚1枚手が込んでいるので仕方ないのだが・・・売れる気がしないな。もちろん遊び方も実演して一緒に遊んだ。

 すべての販売物に値段をつけ終え、お礼を言って立ち上がろうとしたときエリスさんが聞いてきた。

「ソウタさん、もう店舗は確保してるんですか?」

 そういえば全然考えてなかったな。どうしよう。

「まだです。これからどうするか考えるところでした。」
「でしたらギルドの方で探しましょうか?以前店舗として使われていた建物をそのままお渡しすることができるので結果的にかなり安く用意できますよ。」

 なんと、それはありがたい。ぜひ探してもらおう。

「では探していただいてよろしいですか?」
「かしこまりました。条件などはどういたしますか?」

 そうだな・・・あまり大きくなくていいから最低限生活できるスペースがある建物がいいな。

「最低限でいいので寝泊まりしたり生活したりできる建物がいいですね。」
「店兼自宅ということですね、かしこまりました。すぐに探せると思いますのでまた午後においでいただいてもいいですか?」
「わかりました。午後にまた来ます。」

 そう約束を交わし俺は一旦ステラの別荘に戻った。

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 そして午後

 俺はエリスさんに連れられて建物を見に来ていた。場所はステラの別荘から約10分くらいの場所で周りにいろいろな店がある。商店街みたいなものだろう。
 建物の中だが、店舗部分はそれなりの広さで、商品棚が置いてあり、精算用のカウンターもある。前の持ち主が置いて行ったものだろうか。
 自宅部分はダイニングキッチンに寝室が二つ。もう一部屋あるが窓が無いので恐らく物置だろう。それともう一つ驚くべきことに鍛冶場があった。前の持ち主は自分で作って自分で販売していたのだろうか。いや、寝室が二つあることから役割分担していたんだろう。

 まぁそれに関しては今はどうでもいい。これはいくら何でも豪華すぎるだろう。店舗と自宅だけじゃ飽き足らず、鍛冶場まである。しかもそれぞれがそれなりに広いときた。

「エリスさん。さすがにこれは無理ですよ。予算が足りません。」

 実はステラが俺に必要だろうと貸してくれたお金があるのだが足りる気がしない。

「問題ないですよ。稼いだ分から返してくだされば大丈夫です。」
「いいんですか?」

 ちょっとお世話になりすぎな気がする。

「ええ、大丈夫です。その代りしっかり稼いでくださいね?」

 すごい良い笑顔だ。若干怖い。これは期待されていると捉えていいのか?

「ソウタさんは今ギルドですごい期待されているんですよ?何せ持ってきた物がすべて高品質な上に今までにない発想で素晴らしい物を作ったんですから。大商人になること間違いなしです。」

 そんな話聞いてないぞと俺が焦っていると。

「そんなに焦らなくても大丈夫です。期待する分しっかりサポートするので大船に乗ったつもりでいてください。ではまた後程。」

 エリスさんはそう言って立ち去って行った。

 なんでこんな大事になってるんだ・・・俺は頭を抱えながら引越しの準備を始めた。


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まさかの二日連続更新です。
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