244 / 828
九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-
道雪、難攻不落の敵陣に挑む
しおりを挟む
九月六日 卯の一つ時(0500) ※道雪・鑑速軍幕舎
「一体何だあれは?なんなのだ?」
※道雪は頭を抱えた。
それは※臼杵鑑速も同じである。大砲はわかる。脅威ではあるがそこまで恐れる事はない。命中率は低いし、ほとんどが突撃する彼らに騎馬隊の後ろに落ちていた。問題は鉄砲の数である。想像を越える数なのだ。密集した槍もやっかいだ。馬が嫌がり接近できない。
一体どうすればいいのだ?
そう思いながら、道雪と鑑速は敵の密集した銃兵と槍兵の方陣と、左右に配置された騎馬を、どう突破するかを夜通し相談している。
「うーむ、頭を抱えるしかないな。あれが敵の方陣か」。
と鑑速。
「まさにその通りだ。どうすればよいのだ?銃兵と槍兵の密集した方陣に、左右に配された騎馬が自在に動いてわれわれを阻む」。
道雪も同意する。
馬が苦手とする密集した敵の方陣に突っ込むのは危険だ。
「そうでござるな。では、まずは敵の方陣の弱点を見つける事が肝要かと。どこか脆弱な箇所があれば、そこを突破すれば勝機は見えてきましょう」。
人の作った物に完全な物などない。臼杵鑑速はそれを見つけようというのだ。
「・・・。銃兵の密集度を利用し、側面や後方から攻撃を仕掛ける手立てがあれば、敵の方陣を崩せるかもしれぬ」。
「その通りにござる。敵の方陣の配置や動きを見極めながら、戦局に応じた柔軟な動きをする事が肝要」。
鑑速は宗像軍の陣形に対して機動力を重視して、意表をつく動きで翻弄しようという。さきほどはわが騎馬隊も損害を受けたが、何度も同じ手は通じぬ、と言いたいのであろう。
「兵数では我らが優位に立っているが、槍や鉄砲の数は敵に劣っているというのは事実であるな」。
「その通りです。しかし兵数だけではなく、兵法や経験も戦を左右する要素だという事を、われらは身をもって知っております」。
鑑速は自分たちが経験してきた数々の戦場は、伊達ではないという。
「敵の注意を引く一方で、兵を細かく分けて短い時間で連続して攻撃を仕掛ける事で、敵の防御を崩せるかもしれぬな」。
「さようです。それから敵の荷駄隊を襲って後方を切り崩す奇襲攻撃も考慮すべきでしょう」。
「・・・。待てよ。敵の陣、・・・動いておったか?」
道雪はつぶやいた。その瞬間、ひらめいたようだ。
「なるほど、その手があったか!」
道雪は立ち上がり、その顔には光明が見えているようだ。
「見ての通り、敵の陣形は明らかに守備のための配置だ。守備力は高いが、機動力に欠ける」。
「そうですな。それをどう崩すか、これを随分と考えて参りました」。
道雪の独り言から始まった提言に、鑑速も何かを感じたようだ。顔が次の言葉を催促している。
「その通りだ。では・・・・。例えば、我らの兵を五~八つに分けて、敵を鉄砲の届かぬ距離から遠巻きに包囲し、彼らに目標を定めさせず、隙をつく戦術はどうだろう?」
「それは良い手ですね。敵が焦って突出してくれば、その隙を突いて奴らの防衛網を崩せるかもしれません」。
鑑速の同意に道雪は意気があがる。
「しかも、やつらに目標を定めさせずに攻撃をかければ、防衛の連携も乱れるだろう。我らの機動力を生かし、彼らを混乱させよう」。
・・・・・・・・。
なにか、突破口が開けそうだが、しかし、今ひとつ、足りない。二人はそれでも、少しずつ道が見えて来ている様な気がしていた。
「いや、いやいや、待てよ。そうか!忘れておった!」
「なんでござるか?」
またも道雪の独り言だ。
「よいか?我らが忘れてはならぬ目的は城を落とす事だ。しかし、それは当初の計画どおり攻めていけば、時と共になされるものだ。我らは敵の方陣を包囲し、鉄砲の射程の外にいて、敵が前進すれば後退し、後退すれば前進する」。
「右に進めば右に退き、左に進めば左に退く。敵の動きに合わせて柔軟に行動すればよい」。
「なるほど!我らは敵に焦らされず、時間を味方につけるべきという事ですな。はじめは敵の援軍が来た事で、殲滅すべく動いてしまいました。しかしわれらの優勢は変わりませぬ。ただじっとしていれば我らは勝ちまする!」
鑑速はすべて合点がいったようで、激しく同意する。
「さよう。敵に惑わされず、我らの目的を忘れずに進めばよい。城攻めは時間と忍耐が要求されるものだ。我らは粘り強く戦い、敵の心を揺さぶる事が肝要じゃ」。
「焦らず、冷静に行動するとしましょう。攻めなくともよい。われらが、守れば良いのですね。城はわれらの手に必ず落ちまする!」
残りの騎馬は六百、決して多くはないが、この戦法であれば十分である。小城からの攻撃に備えていた歩兵の残りが六千四百。小城の兵は少数ゆえ、もともとの八千は多すぎたのだ。四百を残して六千を宗像の包囲軍に加える。
包囲軍は六千六百となり、宗像軍の兵とほぼ同数である。しかし、今回は大軍が小勢を殲滅するための包囲作戦ではない。遠巻きに包囲して、宗像軍の守備陣形に守備させず、包囲軍に気を取られている間に城を落とそうという策であった。
「一体何だあれは?なんなのだ?」
※道雪は頭を抱えた。
それは※臼杵鑑速も同じである。大砲はわかる。脅威ではあるがそこまで恐れる事はない。命中率は低いし、ほとんどが突撃する彼らに騎馬隊の後ろに落ちていた。問題は鉄砲の数である。想像を越える数なのだ。密集した槍もやっかいだ。馬が嫌がり接近できない。
一体どうすればいいのだ?
そう思いながら、道雪と鑑速は敵の密集した銃兵と槍兵の方陣と、左右に配置された騎馬を、どう突破するかを夜通し相談している。
「うーむ、頭を抱えるしかないな。あれが敵の方陣か」。
と鑑速。
「まさにその通りだ。どうすればよいのだ?銃兵と槍兵の密集した方陣に、左右に配された騎馬が自在に動いてわれわれを阻む」。
道雪も同意する。
馬が苦手とする密集した敵の方陣に突っ込むのは危険だ。
「そうでござるな。では、まずは敵の方陣の弱点を見つける事が肝要かと。どこか脆弱な箇所があれば、そこを突破すれば勝機は見えてきましょう」。
人の作った物に完全な物などない。臼杵鑑速はそれを見つけようというのだ。
「・・・。銃兵の密集度を利用し、側面や後方から攻撃を仕掛ける手立てがあれば、敵の方陣を崩せるかもしれぬ」。
「その通りにござる。敵の方陣の配置や動きを見極めながら、戦局に応じた柔軟な動きをする事が肝要」。
鑑速は宗像軍の陣形に対して機動力を重視して、意表をつく動きで翻弄しようという。さきほどはわが騎馬隊も損害を受けたが、何度も同じ手は通じぬ、と言いたいのであろう。
「兵数では我らが優位に立っているが、槍や鉄砲の数は敵に劣っているというのは事実であるな」。
「その通りです。しかし兵数だけではなく、兵法や経験も戦を左右する要素だという事を、われらは身をもって知っております」。
鑑速は自分たちが経験してきた数々の戦場は、伊達ではないという。
「敵の注意を引く一方で、兵を細かく分けて短い時間で連続して攻撃を仕掛ける事で、敵の防御を崩せるかもしれぬな」。
「さようです。それから敵の荷駄隊を襲って後方を切り崩す奇襲攻撃も考慮すべきでしょう」。
「・・・。待てよ。敵の陣、・・・動いておったか?」
道雪はつぶやいた。その瞬間、ひらめいたようだ。
「なるほど、その手があったか!」
道雪は立ち上がり、その顔には光明が見えているようだ。
「見ての通り、敵の陣形は明らかに守備のための配置だ。守備力は高いが、機動力に欠ける」。
「そうですな。それをどう崩すか、これを随分と考えて参りました」。
道雪の独り言から始まった提言に、鑑速も何かを感じたようだ。顔が次の言葉を催促している。
「その通りだ。では・・・・。例えば、我らの兵を五~八つに分けて、敵を鉄砲の届かぬ距離から遠巻きに包囲し、彼らに目標を定めさせず、隙をつく戦術はどうだろう?」
「それは良い手ですね。敵が焦って突出してくれば、その隙を突いて奴らの防衛網を崩せるかもしれません」。
鑑速の同意に道雪は意気があがる。
「しかも、やつらに目標を定めさせずに攻撃をかければ、防衛の連携も乱れるだろう。我らの機動力を生かし、彼らを混乱させよう」。
・・・・・・・・。
なにか、突破口が開けそうだが、しかし、今ひとつ、足りない。二人はそれでも、少しずつ道が見えて来ている様な気がしていた。
「いや、いやいや、待てよ。そうか!忘れておった!」
「なんでござるか?」
またも道雪の独り言だ。
「よいか?我らが忘れてはならぬ目的は城を落とす事だ。しかし、それは当初の計画どおり攻めていけば、時と共になされるものだ。我らは敵の方陣を包囲し、鉄砲の射程の外にいて、敵が前進すれば後退し、後退すれば前進する」。
「右に進めば右に退き、左に進めば左に退く。敵の動きに合わせて柔軟に行動すればよい」。
「なるほど!我らは敵に焦らされず、時間を味方につけるべきという事ですな。はじめは敵の援軍が来た事で、殲滅すべく動いてしまいました。しかしわれらの優勢は変わりませぬ。ただじっとしていれば我らは勝ちまする!」
鑑速はすべて合点がいったようで、激しく同意する。
「さよう。敵に惑わされず、我らの目的を忘れずに進めばよい。城攻めは時間と忍耐が要求されるものだ。我らは粘り強く戦い、敵の心を揺さぶる事が肝要じゃ」。
「焦らず、冷静に行動するとしましょう。攻めなくともよい。われらが、守れば良いのですね。城はわれらの手に必ず落ちまする!」
残りの騎馬は六百、決して多くはないが、この戦法であれば十分である。小城からの攻撃に備えていた歩兵の残りが六千四百。小城の兵は少数ゆえ、もともとの八千は多すぎたのだ。四百を残して六千を宗像の包囲軍に加える。
包囲軍は六千六百となり、宗像軍の兵とほぼ同数である。しかし、今回は大軍が小勢を殲滅するための包囲作戦ではない。遠巻きに包囲して、宗像軍の守備陣形に守備させず、包囲軍に気を取られている間に城を落とそうという策であった。
12
あなたにおすすめの小説
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる