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第二部(アレク編)
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お兄様とニコラスの訓練は、他の騎士達と一緒の走り込みから始まった。当然アレクも走っているのだけれど、やはり王国騎士は別格というべきか、一人だけ悠々と走っているのが見て取れた。
その後の対人格闘や模擬剣を使っての打ち合いについてはおそらくアレクとお兄様、ニコラスに三人は他の騎士達とは別になるのだろうけれど、もう夕食の準備に行かなければならない。
ものすごく、見たいので残念なのだけれど……!
前の人生を含めても、アレクが剣を持っている姿を一度も見たことがない。前の人生では出会った頃から右腕を上腕から失っていて、剣を持って戦う姿など想像もできなかった。
兵士だったということと、腕を失ったから兵士ではなくなり、平民の子を集めて文字や算術を教えるようになったということしか知らなかったのだ。
まさか、ノヴァック公爵であり現王国騎士団団長の嫡男で、自身も15歳で王国正騎士になるほどの天才だったなんて、想像もできなかった。
顔つきは赤い瞳の三白眼が特徴的で、恐いと感じる人もいるであろうとは思うのだが、その顔が笑うと途端に可愛くて、普段は見えない八重歯が見えるともう……! とにかく格好良くて、子供達にも好かれていて、チェルシーもお父さんが大好きだった。
……戻りたい。
何度も何度も何度も思うけれど、あの日々に戻りたい。
もし、アレクが右腕を失わなければ、いつかはノヴァック公爵になるのだろうか。それならば私は公爵夫人になれるよう、もっと頑張る必要がある。
だけど、無事にアレクと結婚できたとして、またチェルシーは私達のもとに来てくれるのだろうか……。
夕食は、アレクとお兄様はもちろん、お姉様とお父様も、そして、カーラお母様も同席した。
カーラお母様が本邸で食事を取るのは初めてのことだ。私の初めての手料理とあって、お父様が是非にと誘ったのだそうだ。
「これを本当にアニーが作ったのかい?」
「とっても美味しそう!」
お父様とカーラお母様がとても驚いている。もっと不出来な物が出てくるとでも思っていたのかしら。
「早く食べたいわ」
お姉様も微笑んでいる。お姉様とカーラお母様の関係は良好で、私と一緒に離れへ行ってお茶をすることもあるし、三人でドレスを仕立てたり、買い物へ行ったりということもある。
ジュディスお母様のことは、まだ最近の出来事で、思い出して辛くなる時もあると言っていたけれど、そのこととカーラお母様のことは関係ないと言ってくれた。
全ては、ジュディスお母様が招いたことなのだ。
「では、いただこうか」
「あのっ、ハンバーグですが、私が作ったとはいえ、焼いたのはちゃんとしたコックです。安心して召し上がってください」
そうなのだ。焼いたのはネイサンで、私がやったのはタマネギを刻んで、炒めて、肉の塊を刻んで、調味料と一緒に捏ねて、丸く成形するところまで。
全員が揃って食べるタイミングにちょうど熱々に焼いて準備することができないためにそういうことになった。
だって、料理をする格好で夕食の席には座れないもの。
お兄様やニコラスだって訓練後に入浴して清潔な服を着ている。突然夕食に誘われたアレクでさえ、乗ってきた馬車の御者に託けて持って来させた服に着替えている。
令嬢たるもの失礼な振る舞いはできないのだ。
「美味しいわね。こんなに美味しいハンバーグは初めて!」
「えぇ、とっても美味しいわ! アニー」
カーラお母様とお姉様が褒めてくれる。お父様とお兄様も『うんうん』と頷きながら食べてくれている。
私はちらっとアレクを見た。そうすると視線に気が付いたのか私を見たアレクが微笑んだ。
「美味しいよ。こんなに美味しいハンバーグが作れるなんて驚いた。食べることができて嬉しく思う」
「アレク様にそう言ってもらえて、私も嬉しいです!」
やはりアレクは最高に格好良く、優しい。大好きだ。
その後の対人格闘や模擬剣を使っての打ち合いについてはおそらくアレクとお兄様、ニコラスに三人は他の騎士達とは別になるのだろうけれど、もう夕食の準備に行かなければならない。
ものすごく、見たいので残念なのだけれど……!
前の人生を含めても、アレクが剣を持っている姿を一度も見たことがない。前の人生では出会った頃から右腕を上腕から失っていて、剣を持って戦う姿など想像もできなかった。
兵士だったということと、腕を失ったから兵士ではなくなり、平民の子を集めて文字や算術を教えるようになったということしか知らなかったのだ。
まさか、ノヴァック公爵であり現王国騎士団団長の嫡男で、自身も15歳で王国正騎士になるほどの天才だったなんて、想像もできなかった。
顔つきは赤い瞳の三白眼が特徴的で、恐いと感じる人もいるであろうとは思うのだが、その顔が笑うと途端に可愛くて、普段は見えない八重歯が見えるともう……! とにかく格好良くて、子供達にも好かれていて、チェルシーもお父さんが大好きだった。
……戻りたい。
何度も何度も何度も思うけれど、あの日々に戻りたい。
もし、アレクが右腕を失わなければ、いつかはノヴァック公爵になるのだろうか。それならば私は公爵夫人になれるよう、もっと頑張る必要がある。
だけど、無事にアレクと結婚できたとして、またチェルシーは私達のもとに来てくれるのだろうか……。
夕食は、アレクとお兄様はもちろん、お姉様とお父様も、そして、カーラお母様も同席した。
カーラお母様が本邸で食事を取るのは初めてのことだ。私の初めての手料理とあって、お父様が是非にと誘ったのだそうだ。
「これを本当にアニーが作ったのかい?」
「とっても美味しそう!」
お父様とカーラお母様がとても驚いている。もっと不出来な物が出てくるとでも思っていたのかしら。
「早く食べたいわ」
お姉様も微笑んでいる。お姉様とカーラお母様の関係は良好で、私と一緒に離れへ行ってお茶をすることもあるし、三人でドレスを仕立てたり、買い物へ行ったりということもある。
ジュディスお母様のことは、まだ最近の出来事で、思い出して辛くなる時もあると言っていたけれど、そのこととカーラお母様のことは関係ないと言ってくれた。
全ては、ジュディスお母様が招いたことなのだ。
「では、いただこうか」
「あのっ、ハンバーグですが、私が作ったとはいえ、焼いたのはちゃんとしたコックです。安心して召し上がってください」
そうなのだ。焼いたのはネイサンで、私がやったのはタマネギを刻んで、炒めて、肉の塊を刻んで、調味料と一緒に捏ねて、丸く成形するところまで。
全員が揃って食べるタイミングにちょうど熱々に焼いて準備することができないためにそういうことになった。
だって、料理をする格好で夕食の席には座れないもの。
お兄様やニコラスだって訓練後に入浴して清潔な服を着ている。突然夕食に誘われたアレクでさえ、乗ってきた馬車の御者に託けて持って来させた服に着替えている。
令嬢たるもの失礼な振る舞いはできないのだ。
「美味しいわね。こんなに美味しいハンバーグは初めて!」
「えぇ、とっても美味しいわ! アニー」
カーラお母様とお姉様が褒めてくれる。お父様とお兄様も『うんうん』と頷きながら食べてくれている。
私はちらっとアレクを見た。そうすると視線に気が付いたのか私を見たアレクが微笑んだ。
「美味しいよ。こんなに美味しいハンバーグが作れるなんて驚いた。食べることができて嬉しく思う」
「アレク様にそう言ってもらえて、私も嬉しいです!」
やはりアレクは最高に格好良く、優しい。大好きだ。
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