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甘い雰囲気は突然に※
しおりを挟む皇会長が僕を横抱きにしたまま、黒光りした見るからに高級車の後部座席に乗り込んだ。車内はゆったりとしていてシックで落ち着いた雰囲気だった。
そのまま座席に下ろしくれるんだろうな~なんてのほほんと思っていたら、さも当然のようにお膝の上に乗せられた。
皇会長の両腕は僕の腰にガッチリと回されている。
えっ、なんで!?
って抗議の目線を送ったら皇会長の顔がさらに近づいてきて…ちゅって啄むようなちゅーをお見舞いされた。
「いいだろ?俺が雷から離れたくないんだ」
皇会長があまりにもニコって嬉しそうに笑うものだから、僕は顔を赤くしてコクコク頷くことしか出来なかった。
家まで送ってもらっている最中、ふと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「そういえば、皇会長は店長さんに何か用事でもあったんですか?」
皇会長はたぶん甘いものは好きじゃないと思う。今日の昼食の時、僕がケーキを食べてる間皇会長はお菓子類には一切手をつけずにコーヒーを飲んでいたから。普段から食べないんだろうなぁ、と何となく予想がつく。
知り合いだという店長さんに用事でもあったのかな?と僕は思った。
「ん?あぁ、偶々近くを通りかかったから顔を出そうと思っただけだ」
「そうだったんですね。あれ?でもそれじゃあ僕がいたから挨拶とか出来てないんじゃ……」
「いや、俺が顔を出そうと思ったのは雷に、だ。あそこの店主は俺の叔父だから顔は出さなくても問題ない。ちなみに、ケーキを作っているのも叔父だ。店主兼店長だな」
皇会長の叔父さんっ!?
ほえ~、知らなかった…。あんなにも美味しいケーキを作ってた店長さんが叔父だったなんて。何というか、世間は意外と狭いなぁ。
………このまま皇会長やご家族のこととか聞いてみたいけど、あまり話したくないみたいだし…。それに、今知ってしまったら皇会長が遠い世界の人みたいに感じてしまう気がする。
恋をしたばかりなんだ。まだ、身近にいる皇会長を近くで感じていたい。
そう考えて僕は当たり障りのない返事をした……つもりだった。
「皇会長の叔父さんだったんですね。そういえば、僕が挨拶したらいつも必ず返してくれるんですけど、お顔見たことないです。皇会長の叔父さんだからきっと、かっこいいんだろうなぁ~」
皇会長が大人になった姿を想像する。
年齢を重ねた皇会長は落ち着いた雰囲気を纏っていて、渋くてかっこいい。
そんなことを考えて思考を飛ばしていたら不意に背中がぞくりとして身体がブルっと震えた。肌に冷ややかな冷気を感じて、原因であろうそちらに顔を向ければ……
「雷、そんな顔をして…いったい誰のことを考えていたんだ?ん?」
目が笑ってない皇会長がいた。
恋をした僕はバカになってしまったようで。作り物のように繊細に笑う皇会長でさえも綺麗でかっこいいなぁ~だなんて思ってしまって。ぼんやりとしてしまった。
「へぇ、言えないのか。なら、そんな事も考えられなくなるほど俺で満たしてやる」
そして僕は気がつけば唇を奪われていた。
驚いたのも束の間、怒った皇会長は僕の唇をやわやわと揉んだ後、歯で甘噛みをしてきた。
唇とはまた違った感覚に背筋がぞくりとする。特に内側の唇を噛まれると食べられているみたいで小さく抵抗したくなる。
「…ん、ぁ……はぁ………ふぁっ!?」
呼吸が上手く出来なくて酸素を求めて口を開く。するとそこにぬめりとした皇会長の分厚い舌が唇の合間を割って入ってきた。
驚いて逃げようとした頭の後頭部を支えられてより一層唇が密着する。
頭がまともに働かず、思考に霧がかかったようにぼんやりとしてきた。
「ぁ…ふ……んっ、…んぁっ……!」
皇会長の舌が歯列をなぞり上顎を舌の表面で擦る。未知のぞわりとする感覚に怖くなって皇会長の胸元に縋り付く。
余す所なく僕の口内を堪能した舌が今度は縮こまった僕の舌をノックして、そっと絡みついてきた。
くちゅくちゅと唾液を混ぜながら舌を絡まれ、きつく吸われる度に快感が身体を駆け抜ける。
車内に自分のものとは思えないほどの鼻から抜ける甘い声と卑猥な水音が響き渡る。
ぼんやりとした頭で皇会長を見れば胸がキュッと苦しくなった。
そこにはいつもの優しい皇会長の姿はなくて、ドロリとした甘さを孕んだ瞳で僕を見る皇会長の姿があった。まさしく雄の顔をしたその姿に僕の心臓は鷲掴みにされてドキドキと高鳴った。
舌が動き回る度に腰が甘く痺れ、身体の力がふにゃりと抜けて頭が甘く蕩ける。
口の中が熱くて蕩ける…きもちぃ…でも、もうむり……。
飲み込めなかった唾液が口の端から溢れた。
息が苦しくて、力が入らない手で皇会長の胸をトントン叩くと、ようやく離してくれた。ぼやけた視界に離れていく舌から銀糸が引いてる様子が見える。そしてぷつりと切れた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「すまない、やりすぎた…」
力の入らない身体を何とか持ち上げて皇会長を見れば、申し訳なさそうな顔が見えた。
「ん…だいじょうぶ。すごく、きもちよかったから……」
僕は蕩けた思考のままそう言って皇会長を安心させようと笑った。
すると皇会長が僕の肩におでこを乗せて「ハァ…」と息を吐き出した。
「……出来る限り、我慢する」
皇会長は僕を抱きしめながらそう言ったけど、何を我慢するんだろう?
僕の頭は疑問でいっぱいだった。
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